令和7年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題12解説
問1 5種類の敬語
「敬語の指針」で分類された5種類の敬語とは、尊敬語、謙譲語Ⅰ、謙譲語Ⅱ、丁寧語、美化語です。
1 「申す」は謙譲語Ⅱだから間違い。
2 「参る」は謙譲語Ⅱなので正しい! これが答え。
3 相手の行為「休み」に「お」を付けているからこれは尊敬語。
4 この「お」は誰を立てているわけでもないので美化語。
答えは2です。
問2 授受動詞の補助動詞用法について
「あげる」「くれる」「もらう」みたいに動詞をそのまま使うのを本動詞用法というのに対し、「~てあげる」「~てくれる」「~てもらう」と使うのを補助動詞用法と言います。
選択肢1
例えば目下の身内である弟に対して「僕が代わりにやってあげる」というのは別に何も問題ないので、この選択肢は間違い。
選択肢2
例えば目上の上司などに対して、「それは教えて差し上げます」などというのはかなりキツいですね。「~て差し上げる」は自分から相手に向かう行為をへりくだる謙譲表現です。謙譲表現なんですけども、自分が相手に対して何かをしてあげる、つまり恩恵を与えているという事実は変わらないので、謙譲語なのにおしつけがましさが感じられます。このように「~て差し上げる」は謙譲語ですが、目上に使うと不適切になることがあるので注意が必要です。この選択肢が答え。
選択肢3
目下の身内、例えば弟に対して「~ていただく」を用いるのはおかしい。敬語は身内ではなくソトの人、もしくは親しくない人に使う表現だから普通身内には使わない。この選択肢は間違いです。
選択肢4
目上の身内、例えば母親に対して「~てくださる」は普通使わないですね。よっぽど家庭環境が狂っていればありえるかもしれませんが。この選択肢は間違いです。
答えは2です。
問3 二重敬語
二重敬語とは、一つの語に同じ種類の敬語を複数使った表現のことです。
(1) 言う
(2) おっしゃる (「言う」の尊敬語)
(3) おっしゃられる (+尊敬表現「~られる」)
例えば「言う」の尊敬語「おっしゃる」に対して、さらに尊敬語の形式「~られる」を用いた「おっしゃられる」は尊敬語を二重に使用している二重敬語です。選択肢からこのような例を探しましょう。
選択肢1
「帰る」に対して尊敬語の形式「お~になる」をつけて「お帰りになる」とし、さらに尊敬語の形式「~られる」をつけて「お帰りになられる」としています。これは二重敬語。この選択肢が答えです。
選択肢2
「見る」の尊敬語が「ご覧になる」です。これは二重敬語ではありません。
選択肢3
「ご利用していらっしゃいます」はそもそも規範的には正しくないと思うんですけど…
「利用して+います」のうち、「利用して」に謙譲語Ⅰ「ご~する」を付けて「ご利用して」にし、「います」を尊敬語の「いらっしゃいます」にしています。利用するのは相手なので、相手の行為に謙譲語Ⅰ「ご~する」をつけている時点で間違いです。「います」を「いらっしゃいます」にするのは大丈夫なんですが。
ちなみにこれは二重敬語ではなく、「利用する」を謙譲語Ⅰ「ご利用する」にし、「いる」を尊敬語「いらっしゃる」にし、それらをテ形でつないだ敬語連結です。
選択肢4
たぶんこの話者は、「先生、そのおかばん、お持ちしましょうか」と言いたいんだと思います。持つのは自分の行為なので、「持つ」に謙譲語Ⅰ「お~する」を付けた「お持ちする」を用いるのが正しいです。しかし自分の行為である「持つ」に尊敬語「お~になる」をつけて「お持ちになる」となっていますからダメ。ちなみにこれは二重敬語ではないです。
答えは1です。
問4 マニュアル敬語の「から」
(1) 1000円からお預かりします。
マニュアル敬語として扱われる「から」はこういうのです。格助詞「から」の代表的な用法は<起点>なんですが、この「から」を<起点>として解釈することは難しいのでは? という考えから、これは接客場面で現れる特殊な「から」だ!となり、マニュアル敬語の「から」と呼ばれるようになりました。
選択肢1
「明日の営業は11時からになります」の「から」は、「家から駅まで10分」のような「から」と同じで<起点>を表しています。これは普通の使い方。むしろ「~になります」がマニュアル敬語では? 「~になる」は「雨から雪になる」のように変化を表す文型で用いますが、ここでは変化を表さない使い方がされています。
いずれにしてもこの選択肢は不適当。
選択肢2
「ご要望からしますと」の「から」は<判断の根拠>の用法ではないかと思います。「から」の用法として従来から存在するものだから、これはマニュアル敬語じゃない。
選択肢3
「飲み物」というのが注文のはじまりで、次に食べ物へ… みたいな感じですね。これも<起点>の用法で普通です。マニュアル敬語ではありません。
選択肢4
これがマニュアル敬語の「から」。「1万円」を預かる<起点>と解釈するのが(やや)難しいということですね。ただし、メタファー的な意味の広がりでとらえると<起点>として捉えられないこともないので… そこが難しいところ。
答えは4です。
問5 尊大語
普通は相手には尊敬語を、自分には謙譲語を使いますが、相手に謙譲語を使ったり自分に尊敬語を使ったりすることがあります。例えば「名を申せ」。「申す」は謙譲語Ⅱだけど、相手に使って相手を低めることで自分を高めています。自分を「俺様」と呼ぶのもそうで、尊敬表現「様」で自分を高めているわけです。こういう敬語は自分を尊大な存在に表すことになるため、尊大語と呼ばれています。
選択肢1
「~やがる」は相手の動作を表す動詞について軽蔑の意を表します。尊敬語でも謙譲語でもなく、ただ相手を下げているだけだから尊大語ではありません。
選択肢2
「食らう」の命令形「食らえ」を使ってるだけ。ただの命令表現。
選択肢3
「すっこんでろ」もただの命令。
選択肢4
「遣わす(つかわす)」は「遣る(やる)」の尊敬語にあたります。「褒めてやる」とぞんざいに言うのではなく、「褒めてつかわす」と自分の行為に尊敬語を用いています。これは尊大語。
答えは4です。

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