次の毎日のんびり勉強会は5月9日(木)20時から。テーマは「名詞のアクセント型」

子音のIPA表記(国際音声記号)について

目次

子音(consonants)

 気流を声道のどこかで妨げて作る音である子音は、伝統的な調音音声学では次の3つの観点から記述します。

 声帯振動の有無 … 調音時に声帯がどんな状態になっているか(有声性)
 調音点     … 声道のどこで気流を妨げるか
 調音法     … 気流をどうやって妨げるか

 この3つについて簡単に説明します。
 まず調音点とは、子音の調音に際して声道内で空気の流れを妨げる場所のことです。その場所に舌を当てたり、舌を近づけたりして空気の流れを妨げます。日本語標準語は両唇、歯茎、硬口蓋、軟口蓋、口蓋垂、声門の6つの調音点を使って発音します。なお、歯茎硬口蓋音は調音の際に歯茎と硬口蓋にまたがって調音する同時調音です。

両唇 上唇と下唇
歯茎 歯のすぐ裏側
歯茎硬口蓋 歯茎と硬口蓋にまたがって
硬口蓋 上顎のツルツルした硬いところ
軟口蓋 口の奥の柔らかくヒダがあるところ
口蓋垂 のどちんこ
声門 日本語だと「は」「へ」「ほ」だけ

 調音法調音点における呼気の妨害方法のことです。日本語標準語にある子音はその調音法によって破裂音摩擦音破擦音鼻音弾き音接近音の6つあります。

破裂音 [k][g][t][d][p][b]
摩擦音 [s][ɕ][z][ʑ][h][ç][ɸ]
破擦音 [dz][dʑ][ts][tɕ]
鼻音 [n][ɲ][ŋ][m][ɴ]
弾き音 [ɾ]
接近音
半母音
[j][ɰ]

 日本語は子音を調音する際に調音点調音法が同じでも、声帯が振動するかしないかで意味が変わります。つまり声帯振動の有無は意味を弁別する機能があります。例えば、「蚊」と「蛾」では指すものが違うように、[k] と [g] は声帯振動の有無の面で対立しています。調音時に声帯が振動する音を有声音、振動しない音を無声音と言います。子音について言えば、カサタハパ行の子音は無声音で、それ以外の子音は有声音です。ちなみに母音はささやかない限り有声音です。

子音の分類

日本語の例 IPA表記 声帯振動の有無 調音点 調音法 備考
かきくけこ [k] 無声 軟口蓋 破裂音
がぎぐげご [g] 有声 軟口蓋 破裂音
か゚き゚く゚け゚こ゚ [ŋ] 有声 軟口蓋 鼻音 いわゆる鼻音化したガ行音
さすせそ [s] 無声 歯茎 摩擦音
[ɕ] 無声 歯茎硬口蓋 摩擦音
ざずづぜぞ [dz] 有声 歯茎 破擦音 語頭、または撥音、促音の後
ざずづぜぞ [z] 有声 歯茎 摩擦音 語頭以外(撥音、促音の後以外)
じぢ [dʑ] 有声 歯茎硬口蓋 破擦音 語頭、または撥音、促音の後
じぢ [ʑ] 有声 歯茎硬口蓋 摩擦音 語頭以外(撥音、促音の後以外)
たてと [t] 無声 歯茎 破裂音
[ts] 無声 歯茎 破擦音
[tɕ] 無声 歯茎硬口蓋 破擦音
だでど [d] 有声 歯茎 破裂音
なぬねの [n] 有声 歯茎 鼻音
[ɲ] 有声 硬口蓋 鼻音 試験ではこの表記で出題
はへほ [h] 無声 声門 摩擦音
[ç] 無声 硬口蓋 摩擦音 下にひょろひょろがついてる
[ɸ] 無声 両唇 摩擦音
ばびぶべぼ [b] 有声 両唇 破裂音
ぱぴぷぺぽ [p] 無声 両唇 破裂音
まみむめも [m] 有声 両唇 鼻音
やゆよ [j] 有声 硬口蓋 接近音
らりるれろ [ɾ] 有声 歯茎 弾き音
[ɰ] 有声 軟口蓋 接近音
[ɴ] 有声 口蓋垂 鼻音 語末の「ん」に限り
英語の r [ɹ] 有声 後部歯茎 接近音 本来は[ɹ]の下に丸を書く
英語のf [f] 無声 唇歯 摩擦音 日本語にはない
英語のv [v] 有声 唇歯 摩擦音 日本語にはない
[th]ink [θ] 無声 摩擦音 日本語にはない
[th]is [ð] 有声 摩擦音 日本語にはない
[l]ook [l] 有声 歯茎 側面接近音 単に「側面音」とも
江戸っ子口調 [r] 有声 歯茎 震え音 巻き舌の r
[w]ant [w] 有声 両唇軟口蓋 接近音 両唇と軟口蓋の二重調音

 ※上表は次の考え方に基づいてまとめています。
 ●ニの子音は歯茎音[n] か 硬口蓋音[ɲ] 、あるいは 硬口蓋化した歯茎音[nʲ] が使われますが、試験でよくでる [ɲ] でまとめました。
 ●ワの子音は [w] か [ɰ] が使われますが、試験でよくみる [ɰ] でまとめました。

参考文献

 小泉保(1996)『音声学入門』17-83頁.大学書林
 城生佰太郎(2008)『一般音声学講義』95-124頁.勉誠出版
 服部義弘(2012)『朝倉日英対照言語学シリーズ 2 音声学』46-61頁.朝倉書店
 THE INTERNATIONAL PHONETIC ALPHABET (revised to 2020)




コメント

コメント一覧 (2件)

  • アクセント型のドリルについてですが、大変恐縮なのですが、下記の点をご確認頂けませんでしょうか?
    2)財布 解答:起伏式尾高型   
    ・・・これは平板式平板型という可能性はないでしょうか?1)時計(解答:平板式平板型)と比較したとき、「とけいが」と「さいふが」が同じアクセントになってしまうので・・・。
    126)紙 解答:平板式平板型
    ・・・これは起伏式尾高型という可能性はないでしょうか?124)舌(解答:起伏式尾高型)と比較したとき、「したが」と「かみが」が同じになってしまうので・・・。
    手元にアクセント字典がなく、また、「OJAD」で調べても違いがわからないので、自信があるわけではないのですが、お時間があるときにご確認頂ければありがたく存じます。

    • >石川さん
      返信が遅れまして大変申し訳ありませんでした。アクセントの問題について全てひと通り確認しました。
      (2)「財布」について、確かに平板型でしたので修正しました。
      (126)「紙」について、これもアクセントを調べたところ尾高型でしたので修正しました。
      また、他にも(39)「蜘蛛」も誤りで、正しくは頭高型です。
      ご指摘いただきありがとうございました。不備がありご迷惑をおかけしていますが、これからもよろしくお願いいたします。

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