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平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3D解説

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平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3D解説

(16)古代語と近代語

 キ・ケリ・ツ・ヌなどを使用するのは古代語
 テイル・タなどを使用するのは近代語です。

 答えは4

(17)終止形と連体形の合流や二段動詞の一段化

 問題文で「二段動詞を一段動詞化する」と言っています。選択肢3と4の「折る」は一段動詞ではなく五段動詞ですから、この時点で選択肢3と4は除外されます。

未然形 連用形 終止形 連体形 已然形 命令形 活用形
古語
食べず

食べつ

食ぶ
ぶる
食ぶるとき
ぶれ
食ぶれば
べよ
食べよ
バ行下二段活用
現代語
食べない

食べます
べる
食べる
べる
食べるとき
べれ
食べれば
べろ/べよ
食べろ/食べよ
バ行下一段活用

 下二段活用はウ段とエ段で活用する動詞です。バ行下二段活用は、上の表のように「ぶ」と「べ」だけを用いています。これが現代語では「べ」だけになり、つまりエ段だけで活用する動詞となりました。これが二段動詞の一段化(二段動詞の一段動詞化)と呼ばれる現象です。これによって古語の上二段活用は現代語の上一段活用に、下二段活用は下一段活用に変化しました。この一段化は江戸時代前期頃までに起こったとされています。

 さらに、「終止形と連体形の合流」についてです。
 古語のバ行下二段活用では、終止形が「ぶ」、連体形が「ぶる」でしたが、現代語の下一段活用では、いずれも「べる」となっています。つまり終止形と連体形が合流して同じ活用形をとることになりました。これが終止形と連体形の合流です。この合流の過程では、まず古語の終止形が消えて、その代わりに連体形を用いるようになり、その後の一段化の結果として同じ活用形を取ることになっています。

 よって「食ぶ」→「食ぶる」→「食べる」の順になります。
 答えは1です。

(18)現在でも使用されている係助詞と呼ばれていた助詞

 かつて係助詞や副助詞と呼ばれていたものは、現代では取り立て助詞と呼ばれています。
 これだけで答えは2と分かります。

選択肢1

 「AかB」の「か」などの並列助詞は昔も今も並列助詞です。

選択肢2

 これが答え。取り立て助詞は文面にはない情報を暗示して意味を加える助詞のことです。
 古文の「ぞ」「なぬ」「や」「か」「こそ」が係助詞として有名ですが、実は「は」「も」も係助詞に含まれます。これが下線部Bの説明と一致します。かつて「も」は係助詞でしたが、今は取り立て助詞になっています。

選択肢3

 そもそも「は」は格助詞じゃないです。「は」は取り立て助詞。
 この選択肢は間違い。

選択肢4

 並列助詞は「か」「また」「および」「かつ」「ならびに」などのこと。
 「ぞ」は現代では並列助詞ではありません。古文では係助詞でした。

 したがって答えは2です。

(19)「くれる」と「やる」の対立

 AさんとBさんがいて、BさんがAさんに物を与える事態を考えます。
 この事態をAさん側から捉えると「Bさんは私にくれた」で、Bさん側から捉えると「私はAさんにやった」となります。同じ事態を描写するのに2通りの言い方があるのは、事態に関わる人物が2人いて、それぞれの人物の視点によって異なる描かれ方をしているからです。

 したがって答えは2です。

(20)日本語内部における変化

選択肢1

 正しいです。日本語はかつて上下関係のみが敬語を使い分ける基準で絶対敬語の使い方をしていましたが、現代では上下関係だけでなく親疎関係も影響してきて相対敬語の使い方になっています。これが答え。

選択肢2

 日本語に元々存在していた和語にはラ行で始まる単語がありませんが、外来語が入ってきたことで「羅針盤」とか「ラムネ」とか、ラ行から始まる単語が増えました。この選択肢の記述は日本語内部の変化ではなく、外部からの影響による変化なので不適当です。

選択肢3

 参考文献は示せないのですがなんとなくの記憶で…
 古来の日本語は開音節ばかりでしたが、漢語が入ってきて促音撥音を取り入れる変化があったとどこかで見たような。促音や撥音が含まれる音節は閉音節を形成するので、それで閉音節の単語が使用されるようになりました。
 これは日本語内部の変化ではなく、外部の影響を受けた変化なので不適当です。
 (参考文献を見つけたら更新します)

選択肢4

 漢語が使用されるようになったのは漢字が伝来したため。これは日本語内部ではなく、外部による変化です。

 したがって答えは1です。




コメント

コメント一覧 (5件)

  • 30年度試験1のD(17)
    古代語から近代語への変遷の特徴として、係り結びの衰退・消滅と、動詞の活用形の形態的な変化がある。活用では、連体形が終止形を兼ねることになり、2段活用が江戸前期頃までに一段化した。したがって、食ぶ→食ぶる(とき)→食べるの順に変遷したと推測される。

    とのことです。

    • >奥村さん
      ありがとうございます!
      できるだけ分かりやすい解説を心掛けていましたので、そういったコメントに私も嬉しいです!
      30年度試験1のD(17)について説明していただいてとても助かりました。私のほうでもう一度調べてみてからまとめ直したいと思います。

  • お世話になっております。
    (18)の解説ですが、
    1、4番にある「そして」「しかし」、「および」「かつ」などは接続詞だと思います。
    接続助詞は「と」「なら」「が」など
    並列助詞は「や」「とか」「だの」などではないでしょうか。

  • >匿名さん
    ご指摘ありがとうございます。解説に誤りがありました。接続助詞と接続詞の部分修正しておきます。

  • 五段活用の「折る」は除外とありますが、
    ラ行下一段活用の動詞「折れる」と勘違いして除外できませんでした。

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