和語
和語とは、他言語から取り入れた語ではなく、日本語の中で自然発生したと意識され、またそのように考えられている語のことです。大和ことばとも言います。日本語の系統が不明であることから、日本語の語はそれが日本語固有の語か他言語から借用した語であるかを判別することが難しい場合が多いため、現代ではおおむね漢字の訓に相当するものを和語と呼んでいます。例えば、「うま(馬)」や「うめ(梅)」は古代中国語が起源とされていて(西尾 2018:93)、語の出自によればこれらは字音であり本来的に漢語に分類されますが、「馬」には「バ」、「梅」には「バイ」という字音が存在することから、「うま」や「うめ」は訓に相当するものと考えられ、現代では漢語だと認識されにくく和語として扱われることが多いです。和語の判別は厳密にその語の出自をもってなされているわけではありません。
文法的機能を担う語は主に和語
和語は日本語の全品詞に分布し、文法的機能を担う助詞や助動詞などのほとんどは和語から成り立っています。
(1) 和語について教えてください。 (複合格助詞)
(2) 悪天候により中止します。 (複合格助詞)
(3) 雪降ったけど行かないと。 (接続助詞)
(4) 山が白い冠をかぶっているようだ。 (助動詞)
和語の意味範囲は広い
和語が指し示す意味範囲は漢語や外来語に比べて広い傾向にあります。例えば「休業」「欠勤」「欠席」「欠場」「休館」などはそれぞれ意味範囲が限定的であり、異なる目的語をとって表し分けられます。「休業」の場合は「お店」などが目的語になりますが、「欠勤する」は「お店」を目的語としてとることができず、もっぱら「仕事」「会社」などの目的語を要求します。しかし、和語の「休む」はこれ一語でこれら漢語動詞の意味領域をカバーします。
(5) 休業する (営業しないで休む)
(6) 欠勤する (会社を休む)
(7) 欠席する (授業、会議などを休む)
(8) 欠場する (試合に出ないで休む)
(9) 休館する (美術館などが休む)
参考文献
沖森卓也・肥爪周二(2017)『漢語』1-2頁.朝倉書店
西尾寅弥(2018)「語種」『朝倉日本語講座4 語彙・意味』79-109頁,朝倉書店
森山卓郎・渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』166頁.三省堂
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