6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

漢語とは?

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漢語

 中国から借用した語や漢字音で構成されている語漢語、もしくは字音語と言います。語の出自は外国であることから外来語であるとも言えますが、中国から借用した語は非常に古い歴史を持ち、日本語に大きな影響を及ぼしている点を考慮して、他の外来語と同等に扱うことなく漢語と呼ぶ習慣となっています。

 (1) 愛(アイ)
 (2) 曲(キョク)
 (3) 開(カイ)

 中国語の音節構造は日本語よりも複雑ですが、日本語に中国語が借用される段階でその音が日本語の音韻構造に沿った形に改められ、音のバリエーションが減少します。その結果「〇イ」「〇キ」「〇ク」「〇ン」などの決まった語形になり、現代の2拍の字音の二拍目に来る音は「イ・キ・ク・チ・ツ・ン・ウ」の七つに限られています。漢語の音韻体系の単純さ故、「私立」と「市立」、「後悔」と「公開」のような同音語が生まれやすくなっています。

和製漢語

 漢語と字音語は広義では同義ですが、中国から借用した語を「漢語」と呼び、出自を問わず音読みされる漢字を「字音語」と呼んで区別することがあります(沖森ら 2017: 31)。この字音語の中には中国から借用した語もあれば、日本人が独自に作り出した語が含まれ、うち後者を和製漢語と呼びます。和製漢語には次のようなものがあり、日本語から現代中国語にも輸入されています。

 (4) 民主(ミンシュ)
 (5) 経済(ケイザイ)
 (6) 哲学(テツガク)
 (7) 命題(メイダイ)
 (8) 手続(テツヅキ)

漢語の意味範囲は狭い

 漢語が指し示す意味は和語に比べて狭い傾向にあります。例えば、和語動詞「乗る」はその目的語に「車」「船」「馬」「飛行機」などを取ることができますが、漢語動詞では「車」の場合「乗車する」を用い、「船」の場合「乗船する」を用いるなど、特定の目的語に対応した漢語動詞が存在します。以下の漢語動詞「乗車する」「乗船する」「乗馬する」「搭乗する」などは特定の目的語が動詞が持つ意味の内部に既に含まれているため、「*車に乗船する」「*馬に乗船する」などとは言えません。

 (9) 車に乗る   (乗車する)
 (10) 船に乗る   (乗船する)
 (11) 馬に乗る   (乗馬する)
 (12) 飛行機に乗る (搭乗する)

 

参考文献

 沖森卓也・肥爪周二(2017)『漢語』朝倉書店
 西尾寅弥(2018)「語種」『朝倉日本語講座4 語彙・意味』79-109頁,朝倉書店
 森山卓郎・渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』37頁.三省堂




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