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令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題2解説

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令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題2解説

問1 五段動詞の可能形の作り方

 まず「活用語尾」という用語が出てきているのでこれを説明します。
 動詞は活用するときに、変わらない部分と変わる部分に分けられます。例えば「知る」を色々活用してみて縦に並べてみましょう。

 「知る」「知らない」「知ります」などいろいろ活用してローマ字にして縦に並べました。すると /sir/ という部分が全部に共通しています。sir は活用しても変わらない部分なので動詞語幹と呼ばれています。一方、右側のほうは -u とか -anai とかいろんな形に変わってます。こちらは変化するほうで活用語尾と言います。「知る」という動詞のナイ形を作る場合は語幹 sir に -anai を、マス形を作る場合は sir に -imasu をつける、という具合で日本語はできています。

 活用語尾が分かったところで問題に戻ります。この問題は五段動詞の可能形の作り方を聞いてますから、とりあえず例を作って検証するために五段動詞をたくさん挙げてみましょう。そしてそれらの動詞語幹と活用語尾を確認してください。

五段動詞 動詞語幹 活用語尾
買う kaw -u
書く kak -u
貸す kas -u
勝つ kat -u
噛む kam -u
狩る kar -u
嗅ぐ kag -u

 ここの表から理解したいことは2つ。五段動詞は語末が「う」「く」「す」「つ」「む」「る」「ぐ」などウ段の色んな音で終わってます。それから、五段動詞辞書形の活用語尾は必ず -u なんだってことが分かります。そしてこの事実から   ア   に入るのは「-u」であることが分かります。これで選択肢3と4に絞れました。
 (余談ですが、一段動詞辞書形の末尾音は必ず「る」で終わり、活用語尾は必ず -ru です)

 次に   イ   。↑で挙げた五段動詞たちを可能形にしてみて活用語尾がどうなってるかを考えてみましょう!

五段動詞可能形 動詞語幹 活用語尾
買える kaw -eru
書ける kak -eru
貸せる kas -eru
勝てる kat -eru
噛める kam -eru
狩れる kar -eru
嗅げる kag -eru

 五段動詞の可能形は「買える」「書ける」のような形です。活用語尾はいずれも -eru をつけてることが分かります。ということで   イ   に入るのは -eru(-eる) です。
 まとめると次のようになります。

 五段動詞の可能形は、活用語尾の  -u  -eru(-eる)  に変えて作る。

 したがって答えは3です!

問2 可能形の形態や使い方

選択肢1

 「可能形の目的語」っていう言い方がなんかちょっと気持ち悪いんだけど…
 まあそれはともかく! 可能形の目的語はガ格もヲ格も使えます。例えば次のような例文を見てください。

 (1) 彼が ギターが できることに 驚いた。 (ガ格)
 (2) 彼が ギターを できることに 驚いた。 (ヲ格)

 この選択肢は間違ってます。

選択肢2

 可能形「書ける」は「書けている」みたいにテイル形にできるのでこの選択肢は間違い。

選択肢3

 可能の動作主体はガ格とニ格で表します。次の例文を見てください。

 (3) 彼が ギターが できることに 驚いた。 (ガ格)
 (4) 私に できることが ない。       (ニ格)

 だからこの選択肢は間違ってます。可能の動作主体はヲ格で表せません。

選択肢4

 これが正しい記述です。「可能」というのは、主体が意志的に動作を行おうとするときのその動作の実現可能性を表します。だから可能形になれる動詞は意志性が高い動詞(意志動詞)に限られます

 (5) 筆記体が書ける。 (「書く」は意志動詞)
 (6) 空を飛べる。   (「飛ぶ」は意志動詞)
 (7)✕雨が降れる。   (「降る」は無意志動詞)

 意志動詞かどうかは「~つもりだ」などをつけられるかどうかで判断できます。「降る」は「降るつもりだ」とは言えないので無意志動詞。無意志動詞は(7)のように可能形にはできません。
 
 したがって答えは4です。

問3 能力可能と状況可能

 その動作を実現することが可能か不可能かである条件が能動主体の能力に理由があるもの能力可能と言います。
 その動作を実現することが可能か不可能かである条件が能動主体の能力以外に理由があるもの状況可能と言います。

 例えば「練習したから10メートル泳げる」と言うとこの人は泳ぐ能力を持ってるので能力可能です。でも「流れるプールだから10メートル泳げた」と言うと、その人が泳ぐ能力を持っているというよりは “流れるプールだから” という状況がそれを可能にさせたと解釈できるので状況可能です。

 とりあえずこの知識をもってして各選択肢を見てみましょう。

 1 この電車に乗ればという状況によって空港に行けるので状況可能
   券を持ってたという状況によって中に入れたので状況可能

 2 能力があってギターが弾けるようだから能力可能
   20歳にならないと飲めない条件付きなので状況可能

 3 能力的に英語が分からないようなので能力可能
   鍵をなくすという状況によって開けられないので状況可能

 4 能力的に犬は木に登れないので能力可能
   能力的に難しい曲が弾けなさそうなので能力可能

 これを表にまとめるとこうなります。

能力可能の例文 状況可能の例文
状況可能 状況可能
能力可能 状況可能
能力可能 状況可能
能力可能 能力可能

 選択肢2と3がそれぞれ能力可能の例文、状況可能の例文として正しいものでした。これで選択肢2と3に絞れました。
 次に問題文の「能力可能と状況可能との形態的な区別がないこと」について検討します。選択肢2と3の例文に含まれる可能形がどのように作られているのか、辞書形と可能形、動詞語幹と活用語尾の観点から見てみましょう。

選択肢2

 (五)弾く(hik-u) → 弾けます(hik-emasu) ※例文では能力可能だった
 (五)飲む(nom-u) → 飲めます(nom-emasu) ※例文では状況可能だった

 「弾けます」の辞書形は「弾く」、「飲めます」の辞書形は「飲む」です。これらに共通してるのは、いずれも五段動詞かつ動詞語幹に -emasu をつけて可能形を作ってるってことです。しかし、動詞語幹に -emasu をつけた「弾けます」は選択肢2の例文において能力可能で、同じく動詞語幹に -emasu をつけた「飲めます」は例文において状況可能でした。同じ方法で可能形を作ってるのに能力可能の意味も状況可能の意味も表せるようです。つまり…問題文にある「能力可能と状況可能との形態的な区別がない」ということが言えます。分かりやすくいうと、能力可能だろうが状況可能だろうがどっちも同じく動詞語幹に -emasu をつければいいですよって意味で、動詞の形で能力可能と状況可能を区別しないってことです。(例えば中国語では能力可能のとき「会」を、状況可能のとき「能」を使って区別しますが、日本語標準語では区別しません)

選択肢3

 (五)分かる(wakar-u) → 分かりません(wakar-imasen)  ※例文では能力可能だった
 (一)開ける(ake-ru) → 開けられません(ake-raremasen) ※例文では状況可能だった

 「分かりません」の辞書形は「分かる」、「開けられません」の辞書形は「開ける」なのでこの2つで分析してみます。五段動詞「分かる」の語幹は wakar で、その後ろに -imasen をつけると可能否定形「分かりません」になります。一方、一段動詞「開ける」は語幹 ake に -raremasen をつけると可能否定形「開けられません」になります。この2つの可能否定形の作り方は全く異なるものです。それもそうで、そもそも五段動詞と一段動詞でグループが違います。グループが違うと活用方法が違うので活用形の作り方も違うわけです。
 それに、「分かる」は辞書形ですでに可能の意味を持っている特殊な動詞だから「分かれます」みたいな可能形は存在しません。その点から見ても「分かる」と「開ける」は並列させて比較できないんです

 などなど色々解説しましたが、なんとなく分かっていただけたでしょうか。
 したがって答えは2です。

問4 自動詞文が可能の意味合いを持つ場合

 自動詞は可能形にしなくても可能の意味を表すことができるものがあります。例えば問3でありましたけど「分かる」とかがそうです。辞書形なのに可能の意味を持ってますよね。こんな感じのものを選択肢から探せばいいです。
 (可能形は意志的な動詞にしかつかないので(問2の答え)、移動動詞(歩く、走る…)などを除いた自動詞は普通可能形にできません)

 まず大前提なんですが、各選択肢の動詞は全て自動詞かどうか確認します。

 1 自動詞「降る」のナイ形「降らない」
 2 自動詞「開く(あく)」のナイ形「開かない」
 3 自動詞「落ちる」のナイ形「落ちない」
 4 自動詞「直る」のナイ形「直らない」

 確かに自動詞でした。
 自動詞はその動きが起きること、自動詞の否定形はその動きが起きないことを表します。自動で起きる、自動で起きないってことは事態が実現するしないってことだから、動詞によって(?)は意味的に可能・不可能を表すことができます。自動詞自体が可能の意味を持ってるかどうか確認するためには、対応する他動詞に直して「~ことができる」「~ことができない」に言い換えてみましょう

 1 「降る」に対応する他動詞は「降らせる」 → 降らせることができない?
 2 「開く」に対応する他動詞は「開ける」  → 開けることができない
 3 「落ちる」に対応する他動詞は「落とす」 → 落とすことができない
 4 「直る」に対応する他動詞は「直す」   → 直すことができない

 こうしてみると選択肢1だけがおかしいですね。選択肢1の「降らない」は自動詞だけど可能の意味を持ってないことが分かりました。
 答えは1です。

問5 可能の意味を含む隣接表現

選択肢1

 「~がたい」は頑張ってもできない、本当はしたいけどできないという、実現不可能の意味を表します。能力的にできないことを表すんじゃなくて、状況的にできないことを表します。それから無意志動詞にはつかないようです。この選択肢は間違い。

 (1) 彼には近寄りがたい雰囲気がある。 (「近寄る」は意志動詞)
 (2)✕この地域は雪が降りがたい。    (「降る」は無意志動詞)

選択肢2

 「~得ない」は状況的に不可能であることを表します。能力可能は表せません。それから意志動詞、無意志動詞どちらにも接続できます。この選択肢は正しいです。

 (3) 到底理解しえない。 (「理解する」は意志動詞)
 (4) それはありえない。 (「ある」は無意志動詞)

選択肢3

 「~かねる」は「~したくてもできない」「~したくても難しい」など心理的な困難による不可能を表します。許可が得られないことは表さないです。心理的にしたくてもできないってことを表すから無意志動詞には接続できません。この選択肢は間違い。

 (5) 決めかねています。 (「決める」は意志動詞)
 (6)✕決まりかねます。  (「決まる」は無意志動詞)

選択肢4

 「~にくい」は意志動詞につくと「するのが困難であること」を表しますが、それだけではなく、無意志動詞につくと「その状態が発生する可能性が低いこと」を表します。つまり意志動詞にも無意志動詞にもつきます。この選択肢は間違い。

 (7) これは使いにくい。 (「使う」は意志動詞)
 (8) これは燃えにくい。 (「燃える」は無意志動詞)

 したがって答えは2です。




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