6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題12解説

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平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題12解説

問1 シンボル

 1 シンプトム
 何らかの現象が起き始めている兆候のこと。

 2 サインランゲージ
 音声言語の代わりに指・腕などの身ぶりを用いることで、特に手話を指す。

 3 シンボル
 チャールズ・サンダース・パースの記号論では、記号表現と指示物とがコード(言語)で関連付けられたものをシンボル(象徴)と呼びます。シンボルは具体的なものを指すのではなく、抽象的なものを指し示します。
 例えば朝の挨拶は、日本語のコードで表すと「おはようございます」、英語のコードで表すと「good morning」です。抽象的なものとコードがお互いに関連付けられて使用されています。

 4 シニフィエ(所記)
 フェルディナン・ド・ソシュール(Ferdinand de Saussure)によって提唱された概念。言語記号をなす2つの側面のうち、あるものの概念や意味内容のこと。

 「会話では、~~~としての言語による伝達だけでなく、非言語による伝達も行われる。」
 非言語情報とは対になるもの、つまり言語情報を指す言葉を選べばいいということが分かります。最も適当なのはシンボルです。
 したがって答えは3です。

問2 パラ言語

 文章中では非言語コミュニケーションについて述べています。
 やり取りの反応時間や沈黙、声の質、テンポなど、文字で表すことができず、言語情報に付属してその命題を補足するような役割を持つものをパラ言語と読んでいます。

 したがって答えは1です。

問3 身体動作の機能

 非言語コミュニケーションの身体動作学は身振り手振り(ジェスチャー)、表情、アイコンタクトなどの身体動作を研究するものです。うちジェスチャーについては、エクマンとフリーセンがその性質から5種類に分類しました。

エンブレム
言語の代行
言葉の代わりになる動作のこと。試合中のハンドサインや、ボディーランゲージなど。
イラストレーター
意味の強調
発話内容の更なる理解を促すために、その物事の具体的な大きさや長さ、形、状態などを示すための動作のこと。「こんなに大きかったよ」と言いながら、両手で大きさを表現するのがこれにあたる。
アフェクトディスプレイ
感情の表現
喜怒哀楽などの感情を表情や身体的動作を通して伝えること。眉をひそめたり、困った顔をしたりするのがこれにあたる。
レギュレーター
会話の調整
相槌やアイコンタクトなど、会話の中断や続行を促す動作のこと。
アダプター
生理的欲求への対応
メッセージとしての意味はなく、生理的欲求を満たすために行われる動作のこと。例えば背中が痒いから掻いたり、落ち着かないから貧乏ゆすりをしたりなどがこれにあたる。

 「こんなに大きな魚」と言いながら両手を左右に広げる動作は、魚の大きさを腕で表現しており、メッセージ内容を補足したり強調したりする機能があります。上記の表ですと、イラストレーターです。
 したがって答えは2です。

問4 ある文化圏の人々にのみ理解される身体動作

 これも問3に書いたジェスチャーの5分類が参考になります。
 言葉で翻訳できるような明確な意味を持つ、言葉を伴わなくても理解される身体動作、これはつまりエンブレムです!

選択肢1

 無意識に手足を動かす。これは無意識ですからこれはアダプターです。アダプターは生理的欲求を満たすために普通無意識に行われます。例えば痒い所を掻くとかです。

選択肢2

 タイでは、頭は精霊の宿る大切な場所と信じられているので、子供の頭を撫でるのはよくないとされています。ただし、大人は良くないけど、子供は可愛がるために頭をなでることが普通にあるらしいです。
 ちなみにこれはエンブレムではありません。

選択肢3

 エンブレムはその動作が言葉と同じ意味を持ち、その動作を行うことで相手に明確に意図が伝わるものを指します。
 「相手に笑いかける」ことが「あなたと親しくなりたい」と100人中100人思いますか? そんなわけありません。これはエンブレムじゃないです。
 身体動作を伴って喜怒哀楽などの感情を表現しているのでアフェクトディスプレイです。

選択肢4

 このサインは間違いなくお金を表します。少なくとも日本では、このサインを見たらほとんどの人がお金だと理解するでしょう。
 エンブレムはその動作が明確な意味を持っています。

 したがって答えは4です。

問5 高コンテクスト文化と低コンテクスト文化

 文化を分類する際、高コンテクスト文化と低コンテクスト文化という考え方があります。

高コンテクスト文化 実際の言葉によりもその裏にある意味を察する文化のこと。重要な情報でも言葉に表わさず裏に隠して、相手に汲み取らせたり曖昧な言葉を使って表現する。世間一般の共通認識に基づいて判断したり、感情的に意思決定がなされる文化であり、いわゆる「空気を読む」ことが求められる。実際に発話された言葉は、会話の参与者の関係性、表情、状況、それまでの文脈などから判断して意味内容が変わり、特に日本はこの傾向がとても強い。
低コンテクスト文化 高コンテクスト文化とは逆に伝えたいことは全て言葉で説明する文化のこと。言葉以外や雰囲気で気持ちや情報を伝えることはせず、全て自らが発した言葉で表現する。この傾向が強いのはドイツ語圏とされており、またアメリカやカナダなどの歴史的に移民で成り立っている国にも多いとされてる。移民が多い国ではさまざまな考え方を持つ人々が集まっているため、文化ごとに異なる気持ちを汲み取るのではなく、分かりやすい言葉で伝えることが重視される。

 「考えをはっきりと言葉に出して表現することがよいとされている」のは低コンテクスト文化です。低コンテクスト文化は言葉で表す意味が重視されやすいので、沈黙は不快となります。
 高コンテクスト文化は言葉にはっきり言わなくても相手が察することを要求するので、沈黙自体が意味を持つこともあり、不快と感じることも少ないです。
 したがって答えは4です。

 




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