令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3D解説
(16)述語になれる品詞
用言(動詞、イ形容詞、ナ形容詞)と体言(名詞)は述語になれるっていう知識があればこの問題は一瞬です。もしその知識がなければ、無くても大丈夫! 例文を作って検証しましょう。選択肢にはイ形容詞、ナ形容詞、「名詞+だ」、連体詞、「イ形容詞+だ」、感動詞、接続詞とありますので、それぞれ述語におけるかどうか見ていきます。
(1) 彼女は美しい。 (イ形容詞)
(2) 部屋が静かだ。 (ナ形容詞)
(3) 彼は学生だ。 (名詞+だ)
(1)~(3)のようにイ形容詞、ナ形容詞、「名詞+だ」は述語になれます。(ナ形容詞の後ろについている「だ」はナ形容詞の活用の一部です)
でもその他は述語になれない。
(4) あらゆるものがネットでつながる。 (連体詞は述語になれない)
(5) 彼女は美しいだ。 (非文です)
(6) はい、そうです。 (感動詞は述語になれない)
(7) しかし、私はそう思わない。 (接続詞は述語になれない)
連体詞は必ず名詞が後続する品詞なんですけど、「あらゆる」などを例にとってみましょう。これで例を作ると「あらゆるもの」「あらゆる方法」などの言い方ができますが、名詞が必ず後続する性質上述語にくることはできません。それから(5)のように「イ形容詞+だ」は非文です。こんな言い方は(いまのところ)ありません。そして感動詞も接続詞も述語になれないです。
だから答えは1です。
(17)単文
単文とは、1つの述語を持つ文です。従属節がない文と言ってもいい。だから各選択肢に従属節があるかどうかを見てみましょう。
選択肢1
【主節】(私は)思う
【引用節】今年の夏は例年より台風が多かったように
→これは複文でした。
選択肢2
これは単文です。構造はこう。
祖父の米寿のお祝いが 3日後に 迫ってきています。
→【主体】が 【時間】に 述語
述語「迫ってきています」の主体をガ格で、時間をニ格で表してます。つまりガ格とニ格は述語の補語。述語は一つしかないので単文です。
選択肢3
【名詞節】毎朝公園で体操をするの
【主節】が私の10年来の習慣です。
名詞化する「~の」は補足節(名詞節)の特徴です。この文には「体操をする」「私の10年来の習慣です」の2つの述語が含まれてまして複文です。
選択肢4
【等位・並列節】この意見に賛成の人もいれば
【主節】(この意見に)反対の人もいる
「いる」と「いる」の2つの述語があるので複文です。この文の従属節と主節は意味的に並列。二つの並列した事態を述べてるだけですから等位・並列節という従属節に分類されます。
したがって答えは2です。
(18)様々な言語形式
選択肢1
「~するそうだ」は証拠や観察に基づく判断じゃなくて、誰かから伝え聞いたこと、伝聞のときに使う形式です! この選択肢は間違い。
(1) 彼はもうすぐ留学するそうだ (伝聞)
選択肢2
この選択肢は正しいです。「~するだろう」は推量、推測のときに使います。
(2) 曇ってきた。もうすぐ雨が降るだろう。
選択肢3
「~するはずだ」は結構強めの根拠を持ってるときに使います。だからこれは間違い。
(3) 隣人は毎日8時にゴミ出しするから、もうすぐ家から出てくるはずだ。
毎日8時にゴミ出しするってことを知ってて、それを根拠にして言ってます。根拠に自信があるときしか使えないです。
選択肢4
「~するようだ」は想像じゃなくて、証拠や観察に基づく判断のときに使います。
(4) 隣人は引っ越すようだ。
隣人の家を見てなんだか引っ越し業者が来てるなーとか、家具が外に並べられてるなーとか実際に目で見た情報に基づくときに「ようだ」が使えます。実際に見もしないただの想像では使えません。
答えは2です。
(19)出来事に対する話し手の認識を予告する機能を持つモダリティの副詞
「出来事に対する話し手の認識を予告する機能を持つモダリティの副詞」とは、陳述副詞のことです。
副詞はその意味から様態副詞、程度副詞、陳述副詞に分けられます。簡単にいうと様態副詞は動きを表す動詞の「どのように」を表す副詞、程度副詞は状態を表す語の「どのくらい」を表す副詞、陳述副詞は主観(気持ち)を表す副詞です。
(1) がつがつ食べる (様態副詞)
(2) たくさん食べる (程度副詞)
(3) おそらく食べる (陳述副詞)
1 「ちょっと食べる」などに見られるように程度副詞(どのくらい)
2 「甚だおかしい」などに見られるように程度副詞(どのくらい)
3 「きっと終わる」などに見られるように陳述副詞(気持ちが含まれる)
4 「かなり食べる」などに見られるように程度副詞(どのくらい)
だから答えは3です。
(20)許可を求める文や依頼する文
例文検証のお時間です。
選択肢1
(1) ここにお書きください。 (尊敬語)
(2) ここでお待ちください。 (尊敬語)
「お/ご+動詞の連用形+ください」は相手の行為に対して使う尊敬語です。話し手が聞き手に許可を求める文にはならないです。話し手が聞き手に行為を要求する文になります。この選択肢は間違い。
選択肢2
(3) ここで靴を脱がれてください。 (変な尊敬語に見える)
(4) 休まれてください。 (変な尊敬語に見える)
「お脱ぎください」「脱いでください」「お休みください」「休んでください」のような言い方をするのが一般的だと思いますが、(3)(4)もそれらと同じような文脈で使えるので同じ尊敬語なんですね。でもちょっと私には不自然に感じる… これらは話し手が聞き手に行為を要求する文で選択肢1と同じ。許可を求める文ではありません。この選択肢は間違い。
選択肢3
(5) お前本当にどうしてくれようか。
(6) ずたずたにして殺してくれようぞ。
この言い方は何だか役割語っていうか、実際現代でいう人はいないですよね。私のイメージはファンタジーの世界の悪魔とか大魔王とかそういう悪役が言うセリフに感じます。意味は「~てやる」ですかね。相手に(負の)恩恵を与えることを表す表現です。聞き手にある行為を依頼する文にはなりませんこの選択肢は間違い。
選択肢4
(7) 窓を開けてもらえる?
(8) 早くやってもらえる?
「~てもらう」の可能形は「~てもらえる」で、それを疑問文にすると文末が上昇調のイントネーションになります。この表現は相手に何かお願いするときに使います。この選択肢は正しいです。
答えは4です。
コメント
コメント一覧 (3件)
19)についてです。難しい言い方をしていますが、要するにこれは陳述副詞のことを指しているのではないさと思うのですが、いかがでしょうか?そう考えると、「きっと」は陳述副詞で、推量のモダリティが接続するので、「きっと」と出てきたら話し手が、何かを推量して言おうとしていることが予想できるということになり、正解は3番。…と試験中に考えたわけではないのですが、試験終わってゆっくり考えてみるとそんな気がします。
こんばんは。私も「きっと」が正解かなと思っています。呼びかけるための「ちょっと」は感動詞であり、副詞としての「ちょっと」は数量などの程度を表す「少し」の意味なのではと考えました。
>Naocornさん
あっ、これは呼びかけの「ちょっと」で感動詞ですね…
ということは「ちょっと」じゃないんだ!?
他の方のコメントも含めて考えてみます。「きっと」ですか…