複文(complex sentence)
複文(complex sentence)とは、2つ以上の述語を持つ文(述語を中心にして作られた節が2つ以上集まって構成された文)のことです。文中にいくつの節(述語を中心とした格成分や修飾成分を含むまとまり)が含まれているかに注目した文の分類の一つで、一つしかない文は単文と言います。
(1) 雪が降った。 (単文)
(2) 雪かきしないといけない。 (単文)
(3) 雪が降ったから、雪かきしないといけない。 (複文)
(1)(2)は述語が一つだけ含まれる単文ですが、(3)は(1)(2)を接続助詞で繋げることで述語が2つ含まれる一つの文になった複文です。
主節と従属節
文において、述語を中心とした格成分や修飾成分を含むまとまりを節(clause)と呼びます。複文は複数の節からできています。節のうち、文末の述語を含む節を主節(main clause)、それ以外の主節に意味的に従属した節を従属節(subordinate clause)と言います。日本語では主節は基本的に文末に置かれ、従属節は主節に先行します。
従属節 | 主節 | |
(4) | 歌を聞きながら | 道を歩く |
(5) | 階段で転んでできた | 傷が痛い |
(6) | 本を読むこと | がとても好きだ |
(4)の文には「聞く」と「歩く」の2つの述語が含まれます。「聞く」を中心としたまとまりは「歌を聞きながら」、「歩く」を中心としたまとまりは「道を歩く」で、文末に位置する「道を歩く」が主節、「歌を聞きながら」が従属節にあたります。
主節と従属節の間には主従関係があります。例えば(4)の従属節は主節の事態の様態を表すものです。つまり、「どのように道を歩くのか」の「どのように」に対応するものが「歌を聞きながら」という従属節です。この場合の従属節「歌を聞きながら」は主節に対して副詞のように働き、意味的に主節に従属しています。(5)の従属節「階段で転んでできた」は主節に含まれる名詞「傷」を修飾する修飾成分として働き、(6)の従属節「本を読むこと」も主節に対する補語として働いています。このように従属節は主節に対して何らかの役割を果たしています。
従属節の分類
従属節は主節に対して果たす役割から次の4つに分類されます。ここでの分類は日本語記述文法研究会(2008: 5)の分類に従います。
補足節 | 主節の述語の補語、主題と同じ機能を果たしている従属節。(述語の補語と主題に対応する節) (7) 私は誰かを喜ばせることが好きです。 (8) 人を恨むことは自分を傷つける。 |
名詞修飾節(連体修飾節) | 名詞を修飾する役割を果たしている従属節。(名詞修飾語、連体修飾語に対応する節) (9) 今朝授業に遅れた彼は先生に叱られた。 (10) 道端に落ちていた財布を警察に届けた。 |
副詞節(連用修飾節) | 主節を副詞的に修飾する従属節。(連用修飾語に対応する節) (11) ご飯を食べながら運転する。 (12) 12時になったら休憩しよう。 |
等位・並列節(重文) | 主節と従属節の間に主従関係がなく、意味的に対等な従属節。 (13) 兄は東大で、弟は兄弟だ。 (14) 映画を見たり、買い物したりした。 |
※(13)(14)のような等位・並列節は主節と従属節の間に主従関係がなく並列関係にあるため、これを従属節に含まないとする立場もあります。その場合、上表の補足節、名詞修飾節、副詞節を合わせて複文と呼び、等位・並列節を重文(compound sentence)と呼び分けます。2つの違いは一方の節がもう一方の節に従属しているかどうか。従属関係にあるのが複文、並列関係にあるのが重文です。
参考文献
斎藤純男・田口善久・西村義樹編(2015)『明解言語学辞典』198頁.三省堂
日本語記述文法研究会(2008)『現代日本語文法6 第11部 複文』3-12頁.くろしお出版
益岡隆志(1997)『複文 (新日本語文法選書 2)』1-7頁.くろしお出版
森山卓郎,渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』112頁.三省堂
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