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補足節とは?

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補足節

 補足節とは、主節の述語の補語、主題と同じ機能を果たしている従属節のことです。ここでは日本語記述文法研究会(2008)の分類に従います。

主題(補語) 補語 述語
(1) 私は 神を 信じる
(2) 鉄分は 貧血に 効く
(3) 私は 彼を 見かけた
(4) 書類の処理を 頼む
(5) 成功の可能性を 考える

 (1)~(5)は全て述語が1つ含まれている単文です。述語に対する補語について言えば、(1)(2)(3)には2つ、(4)(5)には1つ含まれています。(1)の「私は」、(2)の「鉄分は」、(3)の「私は」は述語の主体を表す補語ですが、主題を表す標識「は」で主題化されているので補語でもあり主題でもあります。この補語の位置に節を入れ込んでみましょう。

主題(補語) 補語 述語
(1’) 私は 神が存在すること 信じる
(2’) 鉄分を摂取する 貧血に 効く
(3) 私は 彼が歩いているところ 見かけた
(4’) 書類を処理するように 頼む
(5’) 成功するかどうか 考える

 (1)の「神」を「神が存在すること」に置き換えたのが(1’)、(2)の「鉄分」を「鉄分を摂取する」に置き換えたのが(2’)、(3)の「彼」を「彼が歩いているところ」に置き換えたのが(3’)です。「神」「鉄分」「彼」はただの名詞なのでとは呼べませんが、「神が存在する」「鉄分を摂取する」「彼が歩いている」とすると述語を中心としたまとまり、つまりになります。しかしこのままの形で置き換えただけでは「私は神が存在するを信じる」「鉄分を摂取するは健康に良い」「私は彼が歩いているを見かけた」というように非文になってしまいます。補語は「名詞+格助詞」で構成されるため、このを補語の位置に入れ込むためにはを名詞化する必要があります。そこで「こと」「の」「ところ」「ように」「かどうか」などをつけての名詞化を実現しています。このようにこのように補語(補足語)の位置に入り込む従属節を補足節と言います。よって(1’)~(5’)は全て複文になります。

 補足節は以下の3つに分けられます。

名詞節

 名詞節形式名詞「こと」「の」「ところ」で名詞句化されているのことです。

 (1) マンガを見ることが好きだ。
 (2) ちゃんと確認するが重要だ。
 (3) 一緒にいるところを見られた。

引用節

 発言や思考、命令・依頼・祈願等を「と」「よう(に)」で引用する引用節と言います。「と」は発言や思考、「よう(に)」は命令、依頼、祈願、思考に関わる述語とともに用いられます。このような引用表現は述語の補語として機能するんですが、名詞として扱うことはできません。その点で名詞節と異なります。

 (1) 彼は、私は結婚しないと言った。
 (2) それは間違いだと思う。
 (3) 今年は特に暑いように思う。

疑問節

 疑問節は「か」「かどうか」「やら」等で名詞句化され、疑問の意味を持ったです。別名、間接疑問とも呼ばれます。これも名詞節と同じく名詞句化されるので、述語に対する補語にも主題にもなれます。名詞節との違いは形式内に疑問の意味が含まれる点だけ。

 (1) どこに置いたか(が)分からない。
 (2) 今やるかどうかで結果が変わる。
 (3) 誰がやるかは関係ない。誰がやってもできる。

参考文献

 日本語記述文法研究会(2008)『現代日本語文法6 第11部 複文』13-42頁.くろしお出版
 益岡隆志(1997)『複文 (新日本語文法選書 2)』1-7頁.くろしお出版

 日本語記述文法研究会(2008: 13)は主節の述語の補語、主題と同じ機能を果たしている従属節を「補足節」と呼び、その下位分類に名詞節、引用節、疑問節があるとまとめています。一方、益岡(1997: 3)は日本語記述文法研究会の「補足節」を「名詞節」と呼んでいます。
 益岡の言う「名詞節」は下位分類についての言及はありませんが、日本語記述文法研究会が言う「名詞節」と「引用節」が含まれているものと思われます。「疑問節」にあたる例については言及されていません。




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