6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説

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令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説

問1 目標言語調査

 ニーズ調査で学習者の勉強したいことが分かったら、勉強したいことに関係する領域で母語話者がどんな日本語を使っているかを調べるのが目標言語調査です。例えば将来看護師になりたいって人がいたら、看護師の職場でどんな日本語を使ってるのか調べます。やったほうがいいとはいえ、日本語教師がここまで対応するのは現実的には難しい(と私は感じてる)。

 1 学習目標を調べるのはニーズ調査、外国語の適性を調べるのはレディネス調査でやること
 2 これが目標言語調査
 3 すでに持ってる知識や学習経験を調べるのはレディネス調査でやります
 4 学んだ教科書やその内容を調べるのはレディネス調査でやります

 簡単にまとめると…
 ニーズ調査は学習者の学習目標を調べる。
 レディネス調査は学習者の学習条件(今のレベル、適性、経済的余裕、学習に割ける時間、学習機器、学習経験、興味がある分野などなど…)を調べる。

 答えは2です。

問2 優れた教材を開発するプロセス

選択肢1

 ぱっと見これが答え。計画して(plan)実行して(do)管理して(see)、それを分析した結果また計画して(plan)…とサイクルを繰り返すってこと。それで優れた教材を効率的に開発しようと言ってます。

選択肢2

 これは知りませんでした! あとで本探して勉強してから更新したいと思います。
 文化をPractices(生活習慣・慣習)、Products(文化的産物)、Perspectives(その背景)の3つのPで捉えるみたいな。文化の話をしてるみたいだから教材とは関係ないです。

選択肢3

 これなんですか? 良く分からない。コンサート? 教材作るときにコンサートするって絶対これ答えじゃないね。

選択肢4

 前作業、本作業、後作業は1つの授業で行われる一般的な流れのことです。
 まずは前作業で導入して、本作業では前作業で導入した内容について基本練習、応用練習をする。後作業ではその授業のまとめを、という感じ。これは授業の流れの話であって教材とは関係ないので間違い。

 答えは1です。

問3 機能シラバス

 機能シラバスはその名の通り、言語の機能に注目したシラバスです。(シラバスは授業計画みたいなものだと思ってください)
 ここでいう機能とは「依頼する」「拒否する」「提案する」「同意する」などなどそういうことです。例えば「依頼する」という機能を学ぶ授業だったら、「窓を開けてくれませんか」「そこの荷物を取ってほしいです」「この問題を教えてください」など依頼の機能を持った表現を扱って、それでコミュニケーションさせたりします。

 1 トピックシラバス(話題シラバス)
 2 場面シラバス
 3 「読む」に焦点を当てたスキルシラバス(技能シラバス)
 4 これが機能シラバス

 答えは4です。

問4 インフォメーション・ギャップ

 インフォメーション・ギャップは訳すと「情報格差」くらいの意味です。授業で学習者間に、あるいは教師と学習者の間にインフォメーション・ギャップがあるととっても質が高いコミュニケーションが生まれます。例えば、新しい先生が教室に来て自己紹介するとき、学生たちはたぶん興味津々で先生の話を聞くと思います。先生は先生自身のことを知ってますが、学生は知りません。そこにはインフォメーション・ギャップがあります。お互いにインタビューしましょうみたいな授業でもインフォメーション・ギャップはあります。お互い知らないことを相手に聞いて聞かれて、教えて教えられて。インフォメーション・ギャップがあると生きたコミュニケーションができるんです。もし無ければ機械的なコミュニケーション、なんか作業感が出てきてつまらなくなってしまいます。

 1 お互いの家族のことは知らないのでインフォメーション・ギャップあり(面白い授業になる可能性高)
 2 2つの絵を共有して見るのでインフォメーション・ギャップなし
 3 地図を一緒に見てるのでインフォメーション・ギャップなし
 4 イラストを一緒に見てるのでインフォメーション・ギャップなし

 答えは1です。

問5 生教材の留意点

 生教材とレアリアは厳密には区別する考え方もあるようですが、ここでは一緒にして扱います。生教材(レアリア)とは教育用に下降されていない実物教材のこと。日本のお金を授業で紹介するときに実際の1000円札を持って行ったりしたらそれは生教材になります。生教材は写真で見せたり口で説明するよりも興味を引けます。だって実際に目の前にあるから。真正性(authentic)が高いなんて言い方をします。

選択肢1

 実際のテレビ番組を授業で見せたら生教材と言えます。でも「スキーマを活性化しやすい内容は避ける」というのが間違い。初級だったらスキーマを活性化させてテレビ番組を見せないと理解できないかも。これは間違い。

選択肢2

 これは正しいです。
 公共交通機関のアナウンスは日本に来たばかりの初級の人でも毎日聞く可能性があるんで緊急性も必要性も高い日本語です。これを実際に授業で聞かせたら生教材になります。ただ、初級だとあまり日本語の知識がないのでアナウンスは正確に理解できないでしょう。だから前作業でちゃんとアナウンスで使われる語彙とか文法を丁寧に提示して聞き取れるように授業してあげないといけないです。

選択肢3

 日本の映画を授業で見せたらそれは生教材と言えます。しかし… 上級レベルだったら字幕を無くしてもいいかなーと思う。割けないほうがいい。あと、字幕を表示しないと耳だけに頼ることになるので言語処理の負担がかかります。「言語処理の負担がかからないように字幕の表示を避ける」ってのが矛盾してる。この選択肢は間違いです。

選択肢4

 ラジオ番組は生教材になります。ラジオは教材としてとっても難しいので上級レベルってのは合ってる。
 でもポーズや言い換えが多く含まれてるものって何だろう? ポーズはまああるだろうけど、言い換えはラジオであんまりないんじゃない? 「観察する」を「見る」に言い換えるようなことでしょ。こういうのは学習者がいる環境で起きやすいです。ラジオ番組は日本語母語話者のやり取りだから言い換えはあんまりない。難易度が上がるように調整したいなら、めっちゃまくしたてて話すパーソナリティのラジオ番組選んだりすればいいと思う。でもそれ上級レベルでもできるか?って疑問は残る。

 答えは2です。




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