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逆成(back formation)とは?

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逆成(back formation)

 既存の派生語ではない語を派生語と見なし、その語末部分を派生語尾と捉え、さらにその派生語尾を取り除く形で新しい語を作り出す方法逆成(back formation)と言います。言い換えれば、派生語と見なされた語から接辞として分析可能な部分を取り除いて語基を造ることです。
 例えば、まず日本語の「もくろみ」という語における語尾の「み」を動詞連用形に現れる派生語尾と見なし、逆算して動詞辞書形「もくろむ」を造り出すような過程を指します。他にも「たそがれ」から「たそがれる」などがあります。

意気込 → 転成 → 意気込
もくろ ← 逆成 ← もくろ

 噛み砕いて説明すると… 先に存在していた「もくろみ」という語の語尾の「み」を、動詞辞書形「意気込む」「歪む」「噛む」のような「む」で終わる動詞のマス形「意気込み」「歪み」「噛み」に現れる語尾の「み」に見立て、動詞辞書形である「もくろむ」という動詞を作るわけです。

 (1) もくろみ → もくろむ
 (2) たそがれ → たそがれる
 (3) 金縛り → 金縛る
 (4) つまらない → つまる
 (5) トラブル → トラブる(トラブった等)

 「つまらない」の「ない」を否定形に見立てて、その辞書形「つまる」という動詞を作るのも逆成の例です。語基の名詞が「る」で終わる「トラブル」のような名詞は、語末の「る」が動詞辞書形に現れる -ru として見なされ「トラブる」「トラブった」「トラブっている」のような五段動詞(→ル動詞)になる例が見られます。これも逆成です。

英語の逆成の例

 逆成(back formation)は逆形成、逆派生とも呼ばれ、接辞とみなされうるものを語基から取り除く操作を指します。英語において逆成の結果生じる語の大部分は動詞で、特に -ing や -er で終わる複合名詞からの逆成が多いです。

 (6) laser → lase

 例えば laser(レーザー光線)は “Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation” の頭字語(アクロニム)で語末の -er は本来接尾辞ではないんですが、これが接尾辞とみなされて取り除かれ、lase(レーザー光線を当てる)という動詞が逆成されました。英語の逆成の例は日本語よりもはるかに多いです。

 (7) 〔動詞〕  sightseeing(観光) → sightsee(見物する)
           orientation(オリエンテーション) → orientate(方向付ける)
           editor(編集者) → edit(編集する)
 (8) 〔名詞〕  greedy(貪欲な) → greed(貪欲)
 (9) 〔形容詞〕 difficulty(難しさ) → difficult(難しい)

参考文献

 上野義雄(2016)『現代日本語の文法構造 形態論編』42,122-128頁.早稲田大学出版部
 大石強(1988)『現代の英語学シリーズ<第4巻> 形態論』218-225頁.開拓社
 国立国語研究所(1985)『語彙の研究と教育(下)』75頁.大蔵省印刷局
 西原哲雄(2012)「語の構造について-形態論-」『言語学入門(朝倉日英対照言語学シリーズ1)』39-63頁.朝倉書店
 L.J. ブリントン,E.C. トラウゴット(著)・日野資成(訳)(2009)『語彙化と言語変化』52頁.九州大学出版会




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