令和6年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題13解説
問1 依頼
様々な意味・機能を持つ文型で<依頼>を表せるみたいです。
選択肢1
「~てほしい」という文型は言葉的には<願望>ですが、このようにいうと間接的に<依頼>を表すことができます。これが答え。
選択肢2
「~ください」は直接的に<依頼>の表現です。<意向>を伝える文型ではありません。これは間違い。
選択肢3
「~でもいいですか」は<許可>の表現であり、恩恵的行為を求める文型ではありません。
選択肢4
「~していただくことはできますか」は可能・不可能を聞く文で<許可>を求める文型ではありません。
答えは1です。
問2 謝罪
日本語の謝罪の特徴を、他の文化と比較した問題です。
選択肢1
日本語の謝罪は、「朝起きるのが遅れてしまって、遅刻してしまいました。すみませんでした」のように釈明や弁解をすることが多いです。この選択肢は間違い。
選択肢2
日本語では、その時も「すみませんでした」と謝罪しますが、次回会った時も「この間はすみませんでした」みたいに別の機会にも謝罪します。これは謝罪に限らず感謝でも。この選択肢は間違い。
選択肢3
日本語の謝罪は自分に非がある場合に謝罪します。自分に非があるかどうか分からない場合は原因を突き止めてから。この選択肢が答え。
選択肢4
日本語の謝罪は、飲み物をこぼしてしまって相手の服を汚してしまったら「すみません、汚してしまって」などと自分が与えた被害に言及します。相手の寛容さなどの肯定的な側面を表現するってのがよく分からないんですけど、例えば「怒らないんですね、心が広いですね」みたいな言葉をかけるってことでしょうか。こういう言い方は日本語ではされません。この選択肢は間違い。
答えは3です。
問3 褒めやねぎらいの日本語
選択肢1
「ご苦労様です」は通常目上から目下に使う表現です。普通選手よりコーチのほうが目上だから、選手が「ご苦労様です」というのは語用論的に不適切。
選択肢2
日本語では目上の人の能力や出来栄えなどを褒めるのは失礼になる可能性があります。このように褒めるのは「何様のつもりだ」と怒る先生もいるかも。これは不適当です。
選択肢3
「お疲れ様でした」は目上にも目下にも幅広く使えます。同僚に対して言うは問題ありません。これが答えです。
選択肢4
日本語では目上の人を直接褒めるのは失礼になる可能性があります。選択肢2と似てます。
人によるとは思いますが、新入社員に対して嫌な気持ちを抱く場合もあります。この選択肢は間違い。
答えは3です。
問4 スピーチレベル
下線部Dはスピーチレベルシフトのことです。ざっくりいうと、同一話者が同一会話内において丁寧な表現と丁寧でない表現を切り替える現象のことです。
A:佐藤
B:はい、なんですか? (丁寧体)
A:あそこの荷物片づけといて。
B:荷物? (普通体)
A:机の上の。
例えば↑の会話例では、Bさんは「なんですか?」と最初は丁寧体を使ってましたが、次の発話では「荷物?」と普通体を使っています。もし丁寧体を使うなら「荷物ですか?」です。私たちは丁寧体を使っている会話ではずっと丁寧体を使っているわけではなく、また普通体の場合もそうで、気づかないだけで意外とスピーチレベルは切り替わってます。
選択肢1
A:帰ろうか。 (普通体)
B:おう
A:あっ、雨だ。 (普通体)
B:傘ある?
出来事を描写する発話、ここでは「あっ、雨だ」という発話にしました。このような発話は通常相手に向けられた発話ではないので、普通体で発話されます。この選択肢は間違い。
選択肢2
A:何の映画が好き? (普通体)
B:恋愛もの
A:えっ、私も! (普通体)
「えっ、私も!」みたいな発話を心理的距離を近づける発話として↑の会話例を考えました。こういう発話は通常普通体で発話されます。この選択肢は間違いです。
選択肢3
A:佐藤さん、ちょっと来てくれませんか。 (丁寧体)
B:はい? どうしました?
A:あそこの掃除機を持ってきてほしいんですけど。 (丁寧体)
A:いいですよ。ちょっと待ってください。
↑の会話は丁寧体を基調とした会話で、依頼の発話として「あそこの想起を持ってきてほしいんですけど」を想定してます。Aさんは先に「来てくれませんか」と丁寧体を使っているので、その後の発話も丁寧体であることが多いと思います。普通体の依頼「あそこの掃除機を持ってきてほしいんだけど」も関係によっては許されると思いますが、それでも丁寧体を基調としているなら丁寧体で一貫したほうがいい。この選択肢は間違いです。
選択肢4
A:どうしたんですか?
B:階段から落ちたんです。 (丁寧体)
A:大丈夫ですか?
B:痛ったあ… (普通体)
「痛ったあ…」を話し手の心情を表明する発話としました。こういう発話は丁寧体を基調とした会話でも相手に向けられたものではないので普通体になることが多いです。この選択肢が答え。
答えは4です。
問5 談話標識
談話標識とは、談話において、その後どう続くかを知る手がかりとなる言葉のことです。例えば、「でも」は反論、「ところで」は話題転換、「すみません」は会話の切り出しの合図となります。
選択肢の中からこういう機能を持った慣用的な表現を探します。
1 ただの挨拶
2 「別の話ですが」でその後の談話で違う話がされることを聞き手に示してます。談話標識の一種。
3 ただの礼儀としての挨拶
4 これも礼儀としての挨拶
答えは2です。
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