令和6年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題12解説

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令和6年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題12解説

問1 中間言語

 中間言語とは、第二言語を学ぶ際に学習者が独自に作り上げた発達途上の言語体系のことです。第二言語のそれとは異なりますが似ていて、学習が進むと徐々に第二言語の言語体系に近づいていくと考えられています。

 1 「異なる母語を話す人々の共通語」はリンガ・フランカで、後ろの文はピジンの特徴だと思います。
 2 ピジンの記述だと思います。
 3 中間言語の記述
 4 自然言語に対する人工言語

 答えは3です。

問2 フォリナー・トーク

 フォリナー・トークとは、その言語の母語話者が非母語話者に対して話す話し方のことです。一般的な特徴としては、相手に伝えようとするために簡単な表現を使ったり、単文になったり、ゆっくりになったりします。

選択肢1

 フォリナー・トークでは「趣味はなんですか?」みたいにキーワードになる言葉を強調したりします。そこを聞き取ってもらえないとコミュニケーションに支障をきたす可能性が高いので強調します。この選択肢が答え。

選択肢2

 質問は質問者がその答えを知っているかどうかで提示質問と指示質問に分けられます。提示質問質問者が答えを知りながら尋ねる質問形式指示質問答えを知らない状態で尋ねる質問形式です。
 ティーチャー・トーク(言語教師の学習者に対する話し方)だったら、教師は授業で答えを知りながら「Aさん、これは何ですか?」みたいに聞くことが多いので提示質問が多くなる傾向があります。でもフォリナー・トークにおける母語話者は教師でもなんでもないので、質問は答えを知らずに「趣味は何ですか?」とか「どこに住んでますか?」とかの指示質問が多くなります。
 この選択肢は間違い。

選択肢3

 フォリナー・トークは相手に伝わるようにゆっくり話される傾向があります。この選択肢は間違い。

選択肢4

 母語話者がことばで伝わらないと思えばジェスチャーを使ったりして伝えようとします。この選択肢は間違いです。

 答えは1です。

問3 意味交渉

 意味交渉は「問題12 問3」でも出ましたがあらためて。

ロングが提唱したインターアクション仮説では、学習者が目標言語を使って母語話者とやり取り(インターアクション)する場面で生じる意味交渉が言語習得をより促進させると考えます。ここでいう意味交渉はインターアクションの中で生じる意思疎通の問題を取り除くために使われるストラテジーのことで、次の3つに分けられます。

 【意味交渉】
 明確化要求   相手の発話が不明確で理解できないときに、明確にするよう求めること。
 確認チェック  相手の発話を自分が正しく理解しているかどうか確認すること。
 理解チェック  自分の発話を相手が正しく理解しているかどうか確認すること。

 1 意思疎通の問題がないので意味交渉は生じてません
 2 意思疎通の問題がないので意味交渉は生じてません
 3 意思疎通の問題がないので意味交渉は生じてません
 4 相手に自分の理解を確認していて、上述の確認チェックが行われています。

 答えは4です。

問4 修復

 修復とは、次の言葉が出てこない、言い間違えた、聞き取れなかった、誤解したなどの会話上の問題が生じたとき、その問題に対処して取り除こうとする発話行為のことです。

 A:頭が痛いです。
  B:どこが痛いって? (修復開始)
  A:頭です。     (修復終了)
 B:大丈夫ですか。

 例えば↑の会話例では、Aさんが「頭が痛いです」と言いましたが、どこが痛いか「頭」の部分だけ聞き取れなかったようです。ここで会話上の問題が生じたので、Bさんは「どこが痛いって?」と問題に対処する修復を開始します。Aさんは「頭です」と答えて修復は終了し、そのあとBさんは修復が開始される前の発話に戻って「大丈夫ですか」と言いました。
 この例だとAさんの発話に問題源がありました。もしこれに対してAさん自身が修復を行えば自己修復なんですが、ここではBさんが行っているので他者修復と言います(細田 2016: 187)。

 選択肢の中から、問題源がある発話を行った人自身が修復を行っている「自己修復」を探しましょう。

選択肢1

 非母語話者は他動詞「治しました」と言い、会話に問題源が現れました。これに対して母語話者は「そう、治りましたか」と修復してます。これは他者修復。

選択肢2

 非母語話者の発話は「来週」と「帰国しました」の時制が一致しませんが、母語話者は発話の意図を理解したのか修復を開始しませんでした。しかしその後非母語話者は自分で「先週」と言い直しています。自己修復の例です。

選択肢3

 母語話者は「旅行」の部分が聞き取れなかったのか、「旅行に?」と聞き返しました。この会話の問題源はその前の非母語話者の発話にあります。問題源に対して母語話者は「うん?旅行に?」と修復を開始してます。これは他者修復の例です。

選択肢4

 非母語話者が「いちにん」と言ったことで問題源が現れました。これに対して母語話者は「ひとりね」と修復を開始してます。これは他者修復の例です。

 自己修復は2だけ。答えは2です。

 《参考文献》
 細田由利(2016)「修復の組織」『会話分析の基礎』183-227頁.ひつじ書房

問5 教育的意義

 母語話者が大学のキャンパス探検を行うそうです。それに学習者が一緒に参加するフィールドトリップの教育的意義とは…

選択肢1

 キャンパスを見学しにいくだけだから、解決しなければならない課題の場はありません。不適当。

選択肢2

 母語話者と一緒にキャンパスにいく中で交流できそうなので、確かに異文化間でのネットワーク構築のしかたは学べそう。これは適当です。

選択肢3

 フィールドトリップは教室の外に出る活動なので、教室では得られない刺激が得られます。ここに書いているように、教室では得られない視覚や嗅覚などの刺激から新しい学びが経験できそう。この選択肢は適当です。

選択肢4

 フィールドトリップで日本語しか使われていない環境に行きますから、媒介語が使われることがある教室に比べて、日本語を集中的に学ぶ機会が得られます。この選択肢は適当です。

 答えは1です。




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