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平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題7解説

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平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題7解説

問1 ニーズ調査・分析(needs analysis)

 コースデザインはニーズ調査とレディネス調査をして、目標言語調査をして、シラバスデザイン、カリキュラムデザインをして… という流れをとります。ニーズ調査・分析の段階では、学習者がどんな日本語を学びたいのかや到達目標を調査します。その調査分析結果はシラバスデザインで学習項目をまとめるのに活用します。

選択肢1

 必ずしもアンケート用紙を用いる必要はなく、口頭でのインタビュー形式でも構いません。この選択肢は間違い。

選択肢2

 学習者がどのような日本語を学びたいのかを学習者自身に聞くのも重要ですが、学習者が年少者であればその家族がどの程度の日本語能力を求めているのかも聞いておくといいです。現実的には難しい場合もありますので必要かと言われたらなかなか… なんですが、やったほうがより学習者のニーズを反映したコースを作成できます。この選択肢が答えです。

選択肢3

 どんなレベルであっても外国語を学ぼうとしている人は必ず何らかの目的があります。それをニーズ調査で調べるべきです。この選択肢は間違い。

選択肢4

 ニーズ調査はコース開始前に行いますが、教育実施中に学習者のニーズが変わる可能性があるため、進捗状況によってそれ以降も行うといいです。(現実的にできるかどうかは別として)

 したがって答えは2です。

問2 レディネス調査・分析(readiness analysis)

 レディネス調査では学習者の学習条件を調べます。今の日本語のレベルとか、どのくらい外国語学習の適性があるか、勉強に割ける時間、費用などなど…

 1 経済的要因はレディネス調査で調べます
 2 外国語学習経験の有無はレディネス調査で調べます
 3 学習経験はレディネス調査で調べます
 4 どのような場面で日本語を使うかはニーズ調査の段階で行います

 答えは4です。

問3 シラバス

 シラバスデザインでは、ニーズ調査、レディネス調査などの分析結果に基づき、そのコースで学習者に何を教えるのか(シラバス)を検討します。
 この問題で出てきている機能シラバスは言語の機能(賛成する、拒否する、依頼する…)に焦点を当てて作られたシラバスのことです。構造シラバスは言語の構造(文型など)に焦点を当てて作られたシラバスです。「~は~です」「~に~があります」のような一連の文型を中心として扱います。

選択肢1

 正しいです。機能シラバスを使えば言葉が持つ「依頼する」などの機能とそれを使う場面、目的を結び付けられます。

選択肢2

 四技能(話す、聞く、書く、読む)のうち特定の技能に焦点を当てて学ぶには技能シラバスが向いてます。この選択肢は間違い。

選択肢3

 構造シラバスは易しいものから難しいものへの配列が比較的簡単なので、通常は易しいものから難しいものへと順番に学ぶような教育に向いています。日本語学校ではこのシラバスを用いるケースが非常に多いです。いきなり難しい文型から導入しても理解できないので0から積み上げていく感じ。この選択肢は間違いです。

選択肢4

 観光で短期間日本に滞在する人は「買い物する」「注文する」「タクシーに乗る」等の特定の場面で使う日本語を中心に学ぶと良いです。こういう授業は構造シラバスではなく、場面シラバスです。

 したがって答えは1です。

問4 カリキュラムデザイン

 カリキュラムデザインでは、シラバスデザインで決めたシラバスを配列しなおしたり、教授法、教室活動、教材の選定・作成、授業の流れ、学習項目の順序や時間配分などの具体的な教案、テストや評価などコースのあらゆることについて決めます

 1 カリキュラムデザインで決定すること
 2 カリキュラムデザインで決定すること
 3 シラバスデザインで決定すること
 4 カリキュラムデザインで決定すること

 選択肢の学習項目のリストはシラバスデザインで決めます。それ以外はカリキュラムデザインで。
 答えは3です。

問5 適切な教材

 カリキュラムデザインでは、シラバスデザインで決めたシラバスを配列した後、そのシラバスをどう教えるかも検討します。具体的には教授法を決めたり、それを実現する教材・教具を決めたりします。適切な教材というのは本当に難しくて、だいたいは学習者のニーズをおおむね満たせるようなものを選んで妥協点とすることが多いです。

選択肢1

 コースデザインの調査・分析段階はニーズ調査、レディネス調査などのことを指しています。この段階で主教材は決めません。主教材を決めるのはカリキュラムデザインです。

選択肢2

 学習者のニーズをもとにシラバスを作るため、使いたい教科書にシラバスを合わせるのは順序が逆です。こうすると学習者のニーズが満たせません。

選択肢3

 正しいです。教授法などとの兼ね合いで教材を決めます。

選択肢4

 生教材はどのレベルでも有効です。この選択肢は間違い。

 したがって答えは3です。

 




コメント

コメント一覧 (8件)

  • お世話になっております。
    教材分析はいつするんですか。カリキュラムデザイン決定後や日頃から教材分析をするのですか。

    • >ひなばーさん
      コメントありがとうございます。
      カリキュラムデザインでは教材の選定も行います。この選定の段階では、その教材と教えようとしているシラバスが合うかどうかを見極めます。これが教材分析となります。

      • 日本語先生 ご返信ありがとうございました😊
        問題5は「適切な教材、、」を見分ける方法の問題なのですね。
        選択肢1をどの段階でするのか わからなくなりました💦

    • いつも貴サイトを参考にさせていただいております。質問させていただきたい事がありますので、よろしければご回答のほどお願いいたします。

      平成29年度日本語教育能力検定試験の試験Ⅲ問題3の問2ですが、市販の問題集では正解4となっていますが、「音韻的に異なる要素」の例として、2の「歯」と「葉」も不適当と思うのです。従って正解は2と4両方になるのではと考えられるのですが、どうでしょうか?

      • >薩摩さん
        コメントありがとうございます。
        詳しいコメントについては「https://nihongonosensei.net/?p=11238」のコメント欄に書きますので、そちらでやり取りをお願いできますでしょうか。

  • いつも参考にさせていただいています。ありがとうございます。
    カリキュラムデザインとシラバスデザインについて教えていただければと思います。
    問4の選択肢3の学習項目のリストはシラバスデザインで理解できたのですが、リストを挙げた次の段階で学習項目の順序を決めなければならないと思います。順番の決定はカリキュラムデザインの方に入るのでしょうか?
    よろしくお願いいたします。

    • >noliさん
      またまたコメントありがとうございます! 返信遅れまして失礼いたしました。

      コースデザインでは、まず①学習者のニーズやレディネスを調査します。
      ②そのニーズやレディネスに基づいてシラバスを決定します。ここでのシラバスとは、例えば学習者がレストランや病院などでの日本語を勉強してもっと日本に馴染みたいと思っていたとしたら、レストランや病院などで用いる日本語を「場面シラバス」で教えようなどという計画が立てられます。大学の講義はじめに配られるような、今学期の授業計画などがこれです。
      それが決まったら、③そのシラバスに使えそうな教材を揃えて教案を作ります。

      選択肢3の「学習項目のリスト」とは挙げただけで順序は考えられていないとお考えでしょうか。
      1回目の授業はこの内容… 最後の授業はこの内容とだいたいざっくり決めるのがシラバスデザインですので、やはり選択肢3はカリキュラムデザインの段階ではありません。

      • ご返信ありがとうございます。

        「学習項目のリスト」は、私はリストを挙げるだけで順番決めは入らないと思って問題を解きました。

        今、過去問とヒューマンアカデミーから出ている攻略ガイドで勉強しているのですが、攻略ガイドにはカリキュラムデザインのなかにシラバス配列が載っています(第4版だとp201です)。そこを読んで、学習項目の順番決めはカリキュラムデザインに入るということなのかな?と思いました。配列=順番決め+割り振り で読むのが間違いでしょうか?

        実際学校で配られるシラバスには、先生がお書きになっているように1学期、1年間の学習内容が全て学習する順番で載っていて…

        ガイドに書いてあるシラバスデザインと実際の学校で配られるシラバスで違うような気がしてしまい、どちらなのだろう?と思ってしまいました。
        シラバスデザインとシラバスは違うものなのでしょうか?

        問4についてから少しはなれてしまい、話があちこちに行ってしまい、申し訳ありません。また私の攻略ガイドの読み取り方がまちがえていましたら、申し訳ありません。

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