6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

レディネス調査・分析とは?

目次

レディネス調査・分析

 レディネス調査とは、コースデザインで行われる調査・分析の一つで、学習者の目標言語やその他外国語の習得状況や学習経験、外国語適性、学習条件などの学習者の状況(レディネス)を把握するために行われる調査のことです。レディネス調査の結果は、カリキュラムデザインで教授法、教材、授業時間などを考えるときに必要な情報になります。
 (参考文献によっては特に学習者の目標言語の習得状況や学習経験をレディネスと呼ぶようですが、ここでは外国語の習得状況や学習経験、学習条件もレディネスに含むことにします。)

 田中(1988: 13)はレディネスを目標言語のレディネス、外国語習得のレディネス、学習条件のレディネスに分けて論じています。ここでもそれにしたがいます。

目標言語のレディネス

 学習者がその時点で目標言語をどのくらい習得しているか、どのくらい学習経験があるかは目標言語に関するレディネスです。例えば日本語学校に入学する生徒には、母国ですでに日本語を学んできている人もいれば、ほとんど勉強していない人もいたり、あるいはすでに日本で長い時間生活していてある程度日本語を話せる人もいます。レベルが違う学習者を同じクラスに配属するわけにはいかないので、こうした目標言語のレディネスは調査によってしっかり把握し、クラス分けやカリキュラムデザインに活かします。

外国語習得のレディネス

 学習者の外国語適性もレディネスの一つです。
 同じレベルの学習者を集めたとしても、数か月後、なぜかレベルにばらつきが出ているということもあります。これは音声を聞き分ける能力、漢字などの字形を読み取る能力、母語と目標言語の単語を結び付け記憶する能力などの学習者の外国語学習適性(言語適性)が影響している可能性があります。外国語学習を進めていくにあたって適性があるかどうかは重要なレディネスで、一般に適性が高い学習者と低い学習者が一緒の教室で学ぶと先生は難しい授業運営を強いられます。適性は学習者が日本語を学習していったときにその能力がどこまで伸びる可能性があるのかを予測する資料になるので、外国語学習適性テストで測定していてレディネスを分析しておくことが必要になってきます。

学習条件のレディネス

 目標言語のレベルも適性もほぼ同じだとしても、外国語学習に関わる様々な条件が違うと差が出てきます。

 外国語学習にどのくらいの費用を出せるかという経済的条件は高額の参考書や学習を助ける機材などが買えるかどうかにもかかわります。

 生活の中でどのくらい学習に時間を費やせるかは留学生か社会人かなどの社会的身分によって異なり、毎日数時間勉強する学習者と全く時間を避けない学習者では当然伸び具合も変わります。また社会人に多くの宿題を出すと迷惑になる可能性があるので、教師はその点に配慮するため、時間的条件は知っておくべきです。

 現代の学習方法は多岐にわたり、本とにらめっこすることを好む人もいれば、パソコンやタブレット、スマホで学ぶ人もいます。学習者がどういった学習機器を所有しているか、wifiなどのインターネット環境があるかなどによって学習方法も変わります。

 それから、外国語の学習経験も重要なレディネス。学習経験があるとすればそれはどんな方法だったのか、どんな教科書を使っていたのか、既に持っている参考書は何か、どうすれば外国語が上手になるかなどのビリーフ、好みの学習法なども役立つ情報です。

 学習者自身の興味や関心がある分野も知っておくとその後のシラバスデザインやカリキュラムデザインでも役に立ちます。興味や関心のある分野が全く異なる学習者が集まっているクラスは、教材選定、教案作成の段階で難しくなることがあります。そんなことは無視して教材を用意することもできることはできますけど、実際はその内容に興味を持てれば持てるほど習得に有利なので。

参考文献

 佐々木泰子(2007)『ベーシック日本語教育』119頁.ひつじ書房
 日本語教育学会(1991)『日本語教育機関におけるコース・デザイン』8-10頁.凡人社
 田中望(1988)『日本語教育の方法―コース・デザインの実際』13-14,69-81頁.大修館書店




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