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令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題2解説

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令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題2解説

問1 数字じゃないのに数量を表すもの

 数字じゃないけど数量を表すものはどれか。数量詞の位置に入れられるかどうかで確かめられます。

   1台  の 車

 上述の数量詞「1台」は「車」の数量を表しています。この「1台」の位置に各選択肢が入るかどうか見てみましょう。

 1 〇大部分の車
 2 ✕どちらもの車
 3 〇たくさんの車
 4 〇いくらかの車

 選択肢2だけ数量とは関係ないものなので、数量詞の統語的位置には入れられませんでした。
 答えは2

問2 変わった数詞

 副詞用法とか名詞用法とか出てきていますね。これをまず確認。

 (1) 猫を1匹飼っている。 (数量詞の副詞用法)
 (2) 1匹の猫を飼っている。(数量詞の名詞用法)

 (1)の「一匹」は品詞としては数詞なんですけど、動詞「飼っている」の前に置いてあるので副詞的な使い方をしています。副詞って「のんびり歩く」「がんがん食べる」みたいに動詞の前に置けるからです。
 一方、(2)の「一匹」は「の」を伴って名詞「猫」に接続しています。「の」は名詞と名詞を繋ぐときに使うので、この時の「1匹」は名詞として使われています。

 こういった言い換えがきくかどうか検証してみましょう。

選択肢1

 【副詞用法】〇本を3冊読んだ。
 【名詞用法】〇3冊の本を読んだ。

選択肢2

 【副詞用法】〇子どもを5人産んだ。
 【名詞用法】〇5人の子どもを産んだ。

選択肢3

 【副詞用法】〇運動を2時間行った。
 【名詞用法】〇2時間の運動を行った。

選択肢4

 【副詞用法】〇点数が10点上がった。
 【名詞用法】✕10点の点数が上がった。

 選択肢4の名詞用法はちょっとおかしいですね。
 副詞用法でしか成立しない数量詞ということで、答えは4です。

問3 助数詞

 この問題はきっとどこかにソースがあると思うんですけど見つからないんです。
 ありましたらコメントください。

選択肢1

 市場に出回っている食材としてのイカは「杯」、生き物としてのイカは「匹」を使うのが一般的だそうです。
 ちゃんと棲み分けしているので、変化しつつあるかというと違います。

選択肢2

 ウサギは本来「羽」でしょうけど、「匹」でもいいですね。「羽」から「匹」に変わっている気がします。
 実際そうみたい。これが答え。

選択肢3

 タイヤを「輪」で数えるのは私は知らないんですけど、そういう言い方もあるんですか?
 私は普通「本」を使っています。

選択肢4

 豆はさすがに粒でしょう。グラム計算で売るのは何だか中国らしいですね。

 答えは2です。

問4 外来語の助数詞

選択肢1

 試験中に思いついたのは「ポイント」。
 1、2、3などを和語で読むと、ひとつ、ふたつ、みっつ… 漢語で読むと、いち、に、さん…
 漢語の本数詞と外来語の助数詞は組み合わせられます。(いちポイント、にポイント…)
 でも和語の本数詞と外来語の助数詞は組み合わせられません。(ひとポイント、ふたポイント、みポイント…)
 …と思ったんですが、たまたま思いついた「ポイント」が悪かったみたい。「ひとケース」「ふたケース」と「ケース」だったら和語の本数詞につけます! 組み合わせられる例がありますので「組み合わせられない」という記述が間違いでした。

選択肢2

 「スリーポイント」は外来語の本数詞+外来語の助数詞からできているのですけど、この選択肢にある「英語の本数詞+外来語の助数詞」とは「three ポイント」みたいなことです。「three」は英語の発音で、「ポイント」は日本語で発音します。こんな言い方でも一応伝わりますね。一部組み合わせることができるものがあります。

選択肢3

 「ポイント」はそのまま、「ポイントカードありますか?」みたいに名詞として使えます。

選択肢4

 連濁は主に和語におきる音韻現象です。漢語や外来語にも起きますが、それらは十分に日本語として定着していることが条件です。
 チーム、セット、ケース、カット、キロ、トン、センチメートルなどの外来語の助数詞に適当に数字をつけてみてください。「3チーム」は「3ヂーム」とは言わないし、「3トン」は「3ドン」って言いません。「連濁するものはない」という言い切りは気になりますが、どうやらそのようですね。

 したがって答えは4です。

問5 一定の法則性

選択肢1

 「一(いち)」と「回(かい)」は、「いっかい」になります。
 本数詞の読み方は変化し、助数詞は変化していません。

選択肢2

 「3(さん)」と「冊(さつ)」は、「さんさつ」になります。
 本数詞も助数詞も変化してません。連濁して「さんざつ」という人もいません。

選択肢3

 「6(ろく)」と「本(ほん)」は、「ろっぽん」になります。
 本数詞は促音化して「ろっ」、助数詞は半濁音化して「ぽん」になっています。

選択肢4

 「8(はち)」と「体(たい)」は、「はったい」になります。
 本数詞は撥音化ではなく促音化して「はっ」になっています。撥音化した「はんたい」はありえない。

 したがって答えは3です。

 




コメント

コメント一覧 (7件)

  • タイで日本語教師をしているものです。いつも勉強させていただいています。
    問題5で「さ行」で始まる助数詞は連濁しないとありますが、「寸(すん)」
    とか「足(そく)」とかではどうでしょうか。連濁する例もあると思うのですが。

    • >山下 好孝さん
      ご指摘ありがとうございます!
      連濁する例がございましたら、改めてコメントでお教えいただけませんでしょうか。

  • いつも拝見させていただいております。令和3年試験Ⅲ問題2の問2の4ですが、「10点の差で負けた」ですと、名詞用法は使えるのではないでしょうか。よろしくお願いいたします。

  • いつも拝見させていただいております。令和3年試験Ⅲ問題2の問4の1ですが、「さん」は漢語の数詞ではないでしょうか。「みっつ」が和語だと思うのですが。よろしくお願いいたします。

    • >あじさいさん
      お盆休みにつき返信大変遅れました!

      問4の選択肢1について、解説が間違っておりました!
      和語の本数詞と外来語の助数詞は組み合わせられませんね… (みっつポイント…)
      既に解説は修正いたしました。ご指摘ありがとうございました!

      それから、問2の選択肢4についてですが、「10点の差で負けた」ですと名詞用法は使えるようですね。しかし問題では「点数」「10」「点」「上がった」なので、言い換えるとしてもこれらの語を使った方がいいのだろうと思います。

      • 問4の選択肢1ですが、「和語の本数詞と外来語の助数詞は組み合わせられない」とすると、こちらの選択肢も正解ということになってしまうと思うのですが…。

        • >匿名さん
          ご指摘ありがとうございました! 私も書いていて混乱してしまいました。
          今確認したのですが、外来語の助数詞として「ポイント」を挙げたのが悪かったみたいです…
          例えば「ケース」だったら「ひとケース」「ふたケース」と言えるので、これが和語の数詞と外来語の助数詞が組み合わせられる例でした。
          ひとつだけ例あげてもダメですね… 解説更新しておきます!

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