6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説

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令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説

(1)日本語の音声

 選択肢には調音法がずらっと並んでいます。日本語には破裂音(plosive)、鼻音(nasal)、弾き音(tap or flap)、摩擦音(fricative)、接近音(approximant)、破擦音(affricate)の6つの調音法があります。

 選択肢4の吸着音は日本語にありません!!!
 これはアフリカ諸言語で多く現れるそうですが、日本語母語話者はこれを聞いても日本語の音声として認識しません。ちなみに、非言語コミュニケーションで用いられる舌打ちは吸着音です。
 確か舌打ちが意味を持ち、会話で使われる言語があるってテレビで見た記憶が… あれすごいです。

 したがって答えは4です。

(2)声門

選択肢1

 有声音は声帯振動を伴う音のことです。左右の声帯が両側から狭まり、その声帯の間(声門)を肺からの強い呼気が無理やり通過しようとすることで声帯が振動します。この選択肢は正しいです。

選択肢2

 ささやき声は声帯、声門が閉じており、軟骨声門だけが開いている状態で息が漏れるときに出される音のことで、声帯は振動しません。また、呼吸時は声帯が大きく開いている状態なうえに、こちらも声帯は振動しません。この選択肢は誤りです。

選択肢3

 息を吸う時(呼吸時)は声帯が大きく開いていて声帯は振動していません。この選択肢は誤りです。

選択肢4

 息もれ音は声門を少し開いた状態で肺からの呼気が通過し、声帯がゆるく振動して発される音のことです。この選択肢は誤りです。

 したがって答えは1です。

(3)日本語の共通語にない調音

 1 両唇破裂音は、パ行やバ行の子音に見られる音。例えば[p][b]。日本語にあります。
 2 歯茎震え音は、江戸っ子口調のラ行の調音です。日本語の方言には一部存在しますけど共通語にはありません。
 3 硬口蓋接近音は、ヤ行子音[j]の音。日本語にあります。
 4 声門摩擦音はハヘホの子音[h]の音。日本語にあります。

 答えは2でした。

(4)子音と母音の気流に関する違い

 母音と子音の違いについての問題です。
 まず子音とは… 舌や歯、唇、声門などで気流の流れを妨げることで発される音を指します。声帯振動の有無、調音点、調音法の三要素で音が決まります。
 逆に母音気流を一切妨げることなく、口腔内での舌の高さ、前後位置、唇の丸めの三要素によって音が決まります。

 子音は気流を妨げる、母音は妨げない。これが大きな違い。

選択肢1

 いつ妨げるか?
 調音して音が発される過程は一瞬なので、妨げる時間を前後させることは困難では?

選択肢2

 「どこで妨げるか」は、子音の調音点の違いです。

選択肢3

 「どう妨げるか」は、子音の調音法の違いです。

選択肢4

 母音は気流を妨げませんが、子音は妨げます。これは母音と子音の違いです!

 したがって答えは4です。

(5)帯気性

 帯気性という言葉が出てきました。これは口腔内の閉鎖の解放後に息が流れる音があるかどうかのことで、息が流れる音があるのは有気音、ないのは無気音です。日本語は声帯が振動しているかどうか(有声音と無声音の対立)によって意味が弁別されますが、中国語や韓国語は気音があるかどうか(有気音と無気音の対立)で意味が弁別されます。

 この有声・無声と有気・無気については過去にも数回出題されていますので、有気音といえば中国語と韓国語! 絶対覚えてください。

 1 韓国語は有気音と無気音の対立、スペイン語は有声音と無声音の対立
 2 韓国語は有気音と無気音の対立、日本語は有声音と無声音の対立
 3 中国語は有気音と無気音の対立、ベトナム語は有気音と無気音の対立
 4 中国語は有気音と無気音の対立、英語は有声音と無声音の対立

 よって答えは3です。




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