令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題1解説
問1 アメリカ構造主義言語学
オーディオリンガル・メソッドの論理的基盤にもなったアメリカ構造主義言語学は、文は節から、節は句から、句は語から、語は形態素から、形態素は音素から構成されると考え、言語の体系をそのような線状の組織構造と見立てて研究対象としました。
選択肢1
この選択肢は間違い。
オーディオリンガル・メソッドのもう一つの論理的基盤に習慣形成理論というのがあります。簡単に言うと、刺激に対する反応を繰り返して習慣を形成することで学習されるとする理論です。オーディオリンガル・メソッドではこれを言語教育の場面に応用して、機械的な練習(パターンプラクティス)をたくさん行います。それによって習慣を形成させ、習得を目指す行動主義的なアプローチをとります。
ところが生成文法は、人間は言語を獲得する能力(UG)が備わっているとし、自然にやれば言語は習得できるよって立場をとります。こちらは習慣形成を真っ向から否定しているので機械的な練習などはせず、自然に自然に… という生得主義的なアプローチをとっています。
要するにこの選択肢は構造主義とは別物。
選択肢2
これは生成文法の対するアンチテーゼである認知言語学に関する記述です。
認知言語学では、言語と人間の他の認知能力は切り離すことができないと考え、言語と心の作用から探求する分野です。
選択肢3
これは構造主義言語学の記述です。
「最小単位まで分析し」とあり、上述の内容と一致します。
選択肢4
類型論の話。
したがって答えは3です。
問2 ミニマルペア
「サメ」と「カメ」(/same/ と /kame/)のように、ある一つの音素の違いで意味が変わるペアをミニマルペアと言います。
適当にローマ字なんかに直してみて、1文字だけ違うものを探せばいいです。(本来はIPAで書いたほうがいいけど、簡易的にローマ字でも大丈夫)
選択肢1
/kotai/ と /koudai/
/u/があったりなかったり、/t/ と /d/が対立していたり、違う箇所が2つあります。
選択肢2
/warui/ と /wari-/
ミニマルペアではないです。文語形と口語形の対立。
選択肢3
これどういうペア?
質問に対する回答ですかね。
選択肢4
/siranai/ と /sinanai/
/r/ と /n/ の1つの音素だけ対立しているミニマルペアです。
よって答えは4。
問3 VT法
ヴェルボ・トナル法/VT法(Verbo-Tonal Method)はリズムやイントネーションなどのプロソディを身体リズム運動を活用しながら身につけようとする教授法です。youtubeにこんなのがありましたのでご覧ください。
選択肢1
これがVT法。上の動画のように、ジェスチャーを使いながら歌を歌い、リズムを意識させるような教え方をします。
選択肢2
???
選択肢3
「イントネーション」と書かれているので一見するとこれがVT法に見えますが、VT法はイントネーションを音声分析ソフトなんかで視覚的に見せるってことはしない。間違い。
選択肢3
カラーチャートと来たらサイレント・ウェイ。
答えは1です。
問4 日本語の音韻の特徴
選択肢1
「おかあさん」「いいえ」みたいなのを思いつきました。
母音が連続している部分は長音化し、「おかーさん」「いーえ」となる傾向があります。
これが答え。
選択肢2
末尾音が母音で終わる音節を開音節、子音で終わる音節を閉音節と言います。。日本語は開音節が多くを占める言語です。例えば「教室」を音節区切りすると「きょう」「し」「つ」になり、それぞれ母音/u/、/i/、/u/で終わってます。
この選択肢は間違い。
選択肢3
「しゃ」「しゅ」「しょ」みたいな拗音がある音は2文字で1拍です。この選択肢は間違い。
選択肢4
広母音は口を開いて発音する母音です。日本語だと [ɑ] だけ。
[e][o]は半狭母音、[i][[ɯ]は狭母音。
なので答えは1です。
問5 自己モニター
モニターは自分で自分の行動を観察すること。
1 学習者に学習者自身の問題を認識させる (モニターさせる)
2 学習者に発音を教えてる
3 学習者に学習者自身の発音を自己修正させる (モニターさせる)
4 学習者に発音基準を模索させる (モニターさせる)
2は一方的な指導で自己モニターを促してません。答えは2です。
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