令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題10解説
問1 エラーとミステイク
学習者の誤用は、つい間違えてしまったミステイクと、言語能力が不足していることによって起きるエラーに分けられます。ミステイクはうっかりなので問題にならない一方、エラーは一貫して生じる誤りだから指導の必要があります。
1 | ミステイク | エラー |
---|---|---|
2 | エラー | ミステイク |
3 | ローカルエラー | グローバルエラー |
4 | グローバルエラー | ローカルエラー |
その場限りの誤りはミステイクを、複数回にわたって生じる誤りはエラーを指します。
理解可能な誤りはローカルエラー、理解不可能な誤りはグローバルエラーです。
よって答えは2。
問2 中間言語
1 定着化
ある時点で成長が止まり、それ以上習得が進まないこと。
転じて誤用が訂正されないまま残ってしまうこと。化石化とも言います。
2 習得順序
複数の文法項目が習得される順序のことです。
3 中間言語
第二言語学習過程における発展途上にある言語体系のこと。外国語を勉強していくと自分の中にある中間言語がどんどん成長していって目標言語に近づいていくと考えます。この変化する性質を可変性と言います。これが答え。
4 素朴概念
学習以前の日常の経験に基づいた知識や概念のことです。例えば、物理を学習する前に人は経験に基づいた運動の概念を獲得しており、これが素朴概念にあたります。
文章中に「学習者の言語が変化していく現象」とあります。まさに中間言語の可変性の話。
したがって答えは3です。
問3 精緻化リハーサル
インプットされた情報を忘れないようにとどめておいたり、長期記憶へ送ったりする方法をリハーサルと呼びます。そのリハーサルは次の2つに分けられます。
維持型リハーサル | 忘却を防ぐため、情報を短期記憶にとどめておくためリハーサル。忘れないように復唱したり、口ずさんだりする行為など。 |
---|---|
精緻化リハーサル | 情報を長期記憶に転送するためのリハーサル。長期記憶に貯蔵されている情報と関連付けたり、関連する場面や状況をイメージしたりする行為など。維持型リハーサルよりも長期記憶へ転送される確率が高いです。 |
1 声に出して繰り返しているので維持型リハーサル
2 情報を関連付けているので精緻化リハーサル
3 言葉を作って印象に深く刻もうとしているので精緻化リハーサル
4 情報を関連付けているので精緻化リハーサル
答えは1です。
問4 ビリーフ
言語学習におけるビリーフとは、どのように勉強を進めていけば効率よく第二言語を習得できるかに関する自分なりの答え、及びそうした信念のことです。問題文によるとビリーフは言語学習にも関わると言ってます。例えば「母語話者と直接コミュニケーションをとることが一番の近道だ」というビリーフを持っている学習者は、母語話者とコミュニケーションをとれるような学習過程を選択することがあります。この選択は結果的に「単語や文法を暗記したほうがいい」と考える学習者よりもコミュニケーション能力が上達させる可能性があります。ビリーフは言語学習に影響を及ぼすとはこのようなことです。
選択肢1
ステレオタイプの記述。多くの人に浸透している、特定の集団に対する先入観や思い込み、固定観念のことです。「眼鏡をかけてる人は勉強できる」や血液型占いなどもそう。ここに否定的な評価や感情が加わることで「◯◯人は✕✕だ」のような偏見になり、行為が伴うことで差別が生じます。
選択肢2
これはラポールの記述。二人の間にある相互信頼の関係のことで、「信頼関係」ときたらラポール。
試験では定番。
選択肢3
ビリーフ、学習ビリーフの記述。
どのようにすれば言語を習得できるかという考え方のことです。
選択肢4
認知スタイルのこと。
認知スタイルとは情報処理において個人が一貫して示す方法のことです。教師は学習者の認知スタイルによって教え方を変えることで学習効率を高めることができます。暗記が好きな学生、暗記が嫌いな学生などタイプは様々ですが、これはそれぞれの認知スタイルが違うからこういう違いが生まれてます。
したがって答えは3です。
問5 情意フィルター仮説
情意フィルター仮説はクラッシェン(S.D.Krashen)によって提唱された、こうすれば第二言語習得は促進されるよっていうモニターモデルという仮説を構成する5つの仮説の一つです。
習得・学習仮説 | 言語を身につける過程には、幼児が母語を無意識に身につけるような「習得」と、学校等で意識的に学んだ結果の「学習」があるとし、学習によって得られた知識は習得に繋がらないとする仮説。 |
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自然習得順序仮説 | 目標言語の文法規則はある一定の決まった順序で習得されるとする仮説。その自然な順序は教える順序とは関係ないとされています。 |
モニター仮説 | 「学習」した知識は、発話をする際にチェック・修正するモニターとして働くとされる仮説。学習者が言語の規則に焦点を当てているときにモニターは起きるとされています。 |
インプット仮説 | 言語習得は理解可能なインプット「i+1」を通して進むとする仮説。ここでいう「i」とは学習者の現時点での言語能力のことで、「+1」がその現在のレベルから少し高いレベルのことを指しています。未習のものであっても、文脈から推測できたりする範囲のインプットを与えると、言語構造が自然に習得されると考えます。 |
情意フィルター仮説 | 学習者の言語に対する自信、不安、態度などの情意面での要因がフィルターを作り、接触するインプットの量と吸収するインプットの量を左右するという仮説。 |
1 ???
2 ???
3 ???
4 情意フィルター仮説の記述
選択肢4が情意フィルター仮説の考え方です。不安や恐れがなければ習得しやすくなり、不安があればそうじゃなくなります。その他の選択肢に内容にあてられた術語は分かりません…
答えは4です。
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