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空間直示とは?

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空間直示とは?

 事物や場所、方角を指す現場指示用法の指示代名詞(指示詞)と移動動詞などはいずれも発話現場にある事物を指し示す空間直示(place deixis)で、日本語の指示代名詞は近称(proximal)、中称(medial)、遠称(distal)の三系列からなります。

近称(コ系) 中称(ソ系) 遠称(ア系)
名詞(事物) これ それ あれ
名詞(場所) ここ そこ あそこ
名詞(方向) こちら、こっち そちら、そっち あちら、あっち
連体詞 この その あの
こんな そんな あんな
副詞 こう そう ああ

 「これ」「それ」「あれ」などは話し手の位置を基準にして現場の事物を指示し、「ここ」「そこ」「あそこ」などは話し手の位置を基準にそこを含む一定の空間を指します。「こちら」「そちら」「あちら」などは話し手、聞き手、あるいは話し手と聞き手のどちらでもない人物のいる方向を指します。いずれも発話現場にある指示対象の空間に言及するとき、話し手や聞き手などの位置を基準としてその空間を表すダイクシス表現です。

 (1) これは何ですか?       (これ=話し手の位置にある事物)
 (2) 荷物はあそこに置いてください。(あそこ=話し手と聞き手のいる空間じゃない空間)
 (3) そこは涼しいですか?     (そこ=聞き手のいる空間)
 (4) あっちに行きましょう。    (あっち=話し手と聞き手のどちらでもない方向)

 空間直示は指示代名詞のほかにも、垂直次元の「上」「下」、水平次元の「前」「後」「左」「右」も含まれます。日本で「下」と言えばブラジル方向を、ブラジルで「下」と言えば日本方向を指し、話し手の位置によって指す方向が違います。前後左右も話し手の見ている方向を基準にしているので、向かい合った2人にとっての前後左右はお互いに真逆になります。
 ※「こんなに要らない」「そんなに欲しいか」などは加藤(2020)が関与者もしくは非関与者に関する状態や程度・数量の度合いを示す様態の直示と呼んでいます。これらも発話場所にいる関与者もしくは非関与者の状態などなどを指すので空間直示です。

 (5) 彼は帰ってきた。  (話し手の位置への移動)
 (6) 彼は帰っていった。 (話し手の位置から遠ざかる移動)

 「来る」「行く」も空間直示です。「来る」は話し手の位置へ移動する求心的移動、「行く」は話し手から遠ざかる遠心的移動を表します。こうした直示性を持つ移動動詞直示的動詞と呼ばれることがあります。

直示用法と非直示用法

 言語表現で空間を示す場合、その空間を建物名や経緯度の座標などの固定された参照点との関係で直接指示する方法と、特定の空間との関係で指示する方法があります。後者の用法は直示用法で、そうして指し示された場所は発話時における話し手の発話場所を基準として指示された空間です。前者は話し手の発話場所とは関係なく場所を指定するものなので直示表現ではありません。

 (7) 東京スカイツリーに登ってきました。 (非直示用法)
 (8) 津軽半島の最北端には竜飛岬がある。 (非直示用法)
 (9) 上杉神社までお願いします。     (非直示用法)
 (10) その本どこで買ったか教えて。    (直示用法)
 (11) 出口はあっちです。         (直示用法)
 (12) 前方に障害物がある。        (直示用法)

 それから、前後左右上下を表す空間表現は、話し手の発話場所に基づいて指示対象の位置を表す場合と、話し手の発話場所とは関係なく、特定の参照物を基準にして指示対象の位置を表す場合があります。前者は直示用法で、後者は非直示用法です。

 (13) から誰かが歩いてくる。   (直示用法:話し手の位置が基準)
 (14) から何かが来てる。     (直示用法:話し手の位置が基準)
 (15) 本はテーブルのにあります。 (非直示用法:参照物「テーブル」の位置が基準)
 (16) 木の後ろに立ってください。  (非直示用法:参照物「木」の位置が基準)

参考文献

 加藤重広(2020)『はじめての語用論 ―基礎から応用まで』77-92頁.研究社
 小泉保(2001)『入門 語用論研究―理論と応用―』5-32頁.研究社
 斎藤純男,田口善久,西村義樹編(2015)『明解言語学辞典』143頁.三省堂
 森山卓郎,渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』110頁.三省堂




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