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オノマトペとは?(擬音語・擬態語)

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オノマトペ(onomatopoeia)

 オノマトペ(英:onomatopoeia)とは、物が出す音や人間や動物が出す声、事物のありさまを言語音で模倣した語のことです。フランス語 onomatopée を語源とします。オノマトペの分類や定義は統一されていませんので、ここでは小野(2007)と金田一(1978)の意味的分類についてまとめます。

小野(2007)の分類

 小野(2007: 9-12)はオノマトペの認定基準として次の3つを挙げました。

① 人間の発声器官以外から出た音を表した言葉
② 人間の発声器官から出した音声で、ひとつひとつの音に分解できない音を表した言葉
③ 音のないもの、または聞こえないものに対して、その状況をある音そのものが持つ感覚で表現した言葉

 ①の基準に当てはまるものはドアを叩く音を表す「ドンドン」や雷がとどろく音を表す「ゴロゴロ」など、②の基準に当てはまるものは犬の鳴き声を表す「ワンワン」や笑い声を表す「クスクス」など、③の基準に当てはまるものは輝きを表す「キラキラ」やときめきを表す「キュンキュン」などです。いずれかの基準に当てはまれば、それはオノマトペと認定されます。そして、①に該当するオノマトペは擬音語、②に該当するオノマトペは擬声語、③に該当するオノマトペは擬態語と呼びます。

金田一(1978)の分類

 金田一(1978)は擬音語と擬態語(いわゆるオノマトペ)を音があるかないかにしたがって広義の分類をし、音のあるものを言語音で模倣した語を擬音語、音のないものを言語音で表現した語を擬態語としました。

広義の分類 狭義の分類 定義
擬音語
(音のあるもの)
擬音語 自然界の物音を表す語
擬声語 人間や動物などの声を表す語
擬態語
(音のないもの)
擬態語 無生物の状態を表すもの
擬容語 生物の状態を表すもの
擬情語 人間の心の状態を表すようなもの

 狭義ではさらに5つに分類されています。自然界で生じた物音、例えば雨が降る音の「ざーざー」や電車の走る音の「がたんごとん」などは擬音語と言い、泣き声の「ぎゃーぎゃー」や蛙の「ゲロゲロ」など人間や動物が出す声を表す語は擬声語です。広義の擬態語は、狭義では擬態語、擬容語、擬情語に分けられます。狭義の擬態語は光の点滅を表す「ピカピカ」や重苦しい雰囲気を表す「どんより」などの無生物の状態を表す語を指します。擬容語は落ち着きのない様子を表す「せかせか」や挙動不審を表す「きょどきょど」などの生物の外的な状態を表す語を指します。擬情語は「いらいら」「どきどき」など人間の心理状態を表す語のことです。

オノマトペと音象徴

 一般に言語は、シニフィエ(意味)とシニフィアン(言語形式、音形)との間に自然な結び付きがないという恣意性を有しますが、オノマトペ、特に擬音語や擬声語に関しては自然と思われる結び付きが認められるのではないかという議論があります。その例として犬の鳴き声は諸言語で次のような音で表され、それぞれがお互いに若干似ていると考えられているからです。

 日本語: ワンワン
 中国語: 汪汪(wāng wāng)
 韓国語: 멍멍(meong meong)
 タイ語: โฮ่ง ๆ(hông hông)
 ベトナム語: gâu gâu

 日本語の /inu/ で示される概念を /inu/ と呼ばなければならない必然的な理由はありません。諸言語ではその概念を dog と呼んだり「狗(gǒu)」と呼んだりするのがその証拠で、それぞれ音形が違います。すなわち恣意性が認められるわけです。しかし、犬の鳴き声を「ワンワン」や「汪汪(wāng wāng)」と表す理由は、その犬の鳴き声に由来すると考えられます。このように音形と意味の間にある直接的な関係を、恣意性に対して音象徴(sound symbolism)といいます。擬音語や擬声語は恣意性が低く、音象徴的な側面があるとする立場もある一方、それぞれ言語形式が似ているだけで厳密には異なっていることから、擬音語・擬態語は恣意性も兼ね備えているとする立場もあります。

参考文献

 小野正弘(2007)『擬音語・擬態語4500 日本語オノマトペ辞典』小学館
 金田一春彦(1978)『擬音語・擬態語辞典(角川小辞典 12)』角川書店
 斎藤純男・田口善久・西村義樹編(2015)『明解言語学辞典』23頁.三省堂

 (音象徴については川原先生(2017)の『「あ」は「い」より大きい!?—音象徴で学ぶ音声学入門』が面白いです)




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