項の数による動詞分類
動詞は、状況から切り離された場面において、それが無ければ述語が表す事態の描写が充足しないと感じられるような補語の数(項)によって1項動詞、2項動詞、3項動詞といった分類が可能です。それぞれ項の数が異なるため、文型が異なります。
1項動詞(one-place verb)
日本語における1項動詞(one-place verb)は、主体をガ格で表せば動詞が表す事態を不足なく表すことができる動詞を指します。起こる、明ける、壊れる、曲がる、光る、(風が)吹く、降る、暴れる、腐る、泣く…
(1) 雪が溶けた。 (1項動詞)
(2) 冷蔵庫が壊れた。 (1項動詞)
(3) 性格が歪んでいる。 (1項動詞)
英語における1項動詞はSとVから成り立つ文型をとり、主語が一つで文が成立します。この文型をとる1項動詞は自動詞とも呼ばれます。
(4) The sun rises. (太陽が昇る)
(5) The flowers bloom (in spring). (花は春に咲く)
(6) The cat is sleeping. (猫が寝ている)
2項動詞(two-place verb)
日本語における2項動詞(two-place verb)は、主体を表すガ格の他にもう一つの格をとるタイプの動詞を指します。食べる、壊す、選ぶ、表す、叩く、読む、話しかける、(試験に)落ちる、絡む、結婚する、喧嘩する、付き合う、別れる、出る、取れる、できる、なる、ある、いる、できる、見える…
(7) 父親が私を叩いた。 〔-が-を〕型
(8) 男が野良猫に話しかけている。 〔-が-に〕型
(9) 彼女が先輩と結婚した。 〔-が-と〕型
(10) 時計が壁から落ちた。 〔-が-から〕型
(11) 空に虹がかかっている。 〔-に-が〕型
英語における2項動詞はSVOの文型をとり、動詞が表す事態を表すために主語と目的語の2つを必要とします。この文型をとる動詞は他動詞とも呼ばれます。
(12) She eats an apple. (彼女はりんごを食べる)
(13) I clean my room. (私は部屋を掃除する)
(14) He builds a sandcastle. (彼は砂の城を建てる)
3項動詞(three-place verb)
日本語における3項動詞(three-place verb)は、主体を表すガ格のほかに2つの格をとるタイプの動詞を指します。あげる、くれる、もらう、教わる、送る、変える、改める、直す、出す、遠ざける…
(15) 私が彼女にチョコをあげた。 〔-が-に-を〕型
(16) その一言が私を悪魔に変えた。 〔-が-を-に〕型
(17) 私が箱からアルバムを出した。 〔-が-から-と〕型
英語における3項動詞は、SVOA型、もしくは二重目的語構文のSVOO型をとります。(18)(19)はSVOA型で、(20)(21)はSVOO型です。
(18) He put the groceries in the refrigerator. (彼女は食料品を冷蔵庫に入れた。)
(19) She hung the painting on the wall. (彼女は壁に絵を掛けた。)
(20) The teacher gave the students a challenging assignment. (先生は学生に難しい課題を与えた。)
(21) My father bought me a new dress. (父は私に新しいドレスを買ってくれた。)
参考文献
安藤貞雄(2005)『現代英文法講義』pp16-26.開拓社
日本語記述文法研究会(2009)『現代日本語文法2 第3部格と構文 第4部ヴォイス』12-20頁.くろしお出版
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