コミュニカティブ・アプローチとは?

コミュニカティブ・アプローチ(Communicative Approach)

 第二次世界大戦後、ヨーロッパの加盟国が様々な分野で協調を拡大することを目的とした欧州評議会(Council of Europe)が設置されました。この機関は欧州全域で働く成人を対象とした外国語教育プログラムの開発をイギリスのウィルキンス(D.A.Wilkins)に依頼し、ウィルキンスはそれに応える形で1972年に概念・機能シラバス(Notional-Functional Syllabus)を提唱しました。このシラバスは言語の構造ではなく、概念(動作の開始、継続、頻度、順序、空間等)と伝達機能(依頼、受諾、要求、拒否、感謝等)の側面から言語を分類したシラバスで、コミュニケーション能力の獲得を目的としています。そして、このシラバスを用いてコミュニケーション能力を獲得させようとする教授法コミュニカティブ・アプローチ(Communicative Approach)と呼ばれ、1970年代以降の外国語教育の主流となっています。

 コミュニカティブ・アプローチは具体的な指導方法や教室活動が示されているわけではありませんが、学習者のニーズによって学習項目を決定し、その学習者は目標言語を使って何をするか、言語を使う目的は何かという点に重きを置いた指導を行います。例えば、就職活動で使える日本語を学びたいと思っている学習者には、履歴書やエントリーシートの記入方法、敬語や適切な受け答えなどを教師から一方的に教えるのではなく、実際の履歴書を用いて「書く」作業をしたり、教室で面接場面を再現したロールプレイなどを行うなど現実場面に近いタスク活動を行い、学習者を能動的に学習に参加させてコミュニケーション能力を身につけさせようとします。コミュニカティブ・アプローチで行われる主な教室活動はタスク練習、ロールプレイ、シミュレーション、ゲームなどがあります。

 コミュニケーションはお互いに必要な情報を与え合うことを目的とします。一方が知っている情報を他方が知っていないようなインフォメーション・ギャップがある状況は実際のコミュニケーション場面に見られる特徴であり、コミュニカティブ・アプローチではこれを教室に実現することを重視します。双方のインフォメーション・ギャップを埋めるために質疑応答を交わすことで、実際のコミュニケーション場面で言語を使用できるようになることが目標です。

参考文献

 石田敏子(1988)『日本語教授法 改訂新版』38-41頁.大修館書店
 高見澤孟(2016)『増補改訂版 新・はじめての日本語教育2 日本語教授法入門』168-171頁.アスク




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