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母音交替とは?

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母音交替(ablaut)

 現代日本語には「あめ」と「雨音あまおと」の対立に見られるように、「雨」を表す部分が単純語では「あめ」、複合語では「あま」とその語形が異なる現象が見られます。このようにある自由形態素が単純語として独立して用いられる独立形式の場合と、複合語の前部要素として用いられる拘束形式とで母音が交替する現象を母音交替(ablaut)と言います。(転音とも呼ばれるそうですが…)

 (1) あめ : 雨音あまおと
 (2)  : の葉
 (3) かみ : 神無月かむなづき
 (4) しろ : 白雪しらゆき

 母音交替が見られる組み合わせは「稲妻いなづま」に対する「いね」、「月夜つくよ」に対する「つき」など現代でもたくさんあります。この組み合わせのうち、常に他の語と複合して用いられる拘束形式を被覆形、それ自体単純語として独立して用いられる独立形式を露出形と呼びます。母音交替は被覆形と露出形で交替した母音によって次の4種類に分けられます。

/a/ ↔ /e/ 雨水、手綱、酒屋、風上、船酔い、胸毛、上履き、目の当たり、声色、爪先、金網、目映い、稲妻…
/o/ ↔ /i/ 木枯らし、木の葉、火影…
/u/ ↔ /i/ 神無月、月夜…
/a/ ↔ /o/ 白雪、白神…

前舌化する母音

 現代の感覚では「あめ」などの露出形がベースとなって「あま」などの被覆形が生じたと考えてしまいますが、研究では古い時代の日本語に被覆形「あま」などの語がすでにあり、/a/ ↔ /e/、/o/ ↔ /i/、/u/ ↔ /i/ の母音交替における露出形は被覆形に接辞 -i を付加してできたと推測されています。

被覆形(a,o,u) 露出形(e,i,i)
ama ame(= ama + i)
ko ki(= ko + i)
kamu kami(= kamu + i)

 露出形の /e,i,i/ は前舌母音で、被覆形の /a,o,u/ は後舌母音という共通点が見られ、ここから、被覆形 /a,o,u/ に前舌母音 /i/ が後接することによって /a,o,u/ が影響を受け、音が /i/ に近づき前舌化するという現象が起きたと推測できます。このときの /i/ を単語として独立化させる接辞と想定することで、母音交替に規則性を見出すことが可能となりました。つまり、もともと被覆形「雨(あま)」「木(こ)」「神(かむ)」が先に存在し、被覆形に /i/ が融合して露出形「雨(あめ)」「木(き)」「神(かみ)」ができたと考えられています。

参考文献

 大木一夫(2013)『ガイドブック日本語史』212-215頁.ひつじ書房
 小林泰秀(2006)「日本語複合名詞の母音交替」『広島女学院大学論集 56』1-18頁.広島女学院大学
 中道尚子(1999)「日本語の名詞における母音交替」『東北大学言語学論集(8)』53-65頁.東北大学言語学研究会




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