6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題7解説

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令和5年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題7解説

問1 教師以外の母語話者と接触する活動

 教師と接触するのと教師以外の母語話者と接触するのではちょっとだけ日本語が違うよという話。これに関連するのはティーチャートークとフォリナートークです。教師の学習者に対する話し方はティーチャートーク、母語話者が学習者に対する話し方はフォリナートークと言います。どっちの話し方も学習者が分かりやすいようにゆっくり、そしてはっきり、簡単な表現を使ったりするんですが、ティーチャートークは教師なので非文法的な言い方を含みません。でもフォリナートークは教師ではないので非文法的な言い方を含みます。ここでいう非文法的な言い方とは、例えば「エグい」とか「エモい」とかそういう言葉だと理解していいです。先生はあんまり言わないけど母語話者は言う可能性があります。これが大きな違い。

選択肢1

 学習者のレベルに合わせて日本語をゆっくり、はっきり、簡単にするなど調整するのは教師にも教師以外の母語話者にもみられます。
 この選択肢は間違い。

選択肢2

 教師以外の母語話者だったら、母語話者が話したいことと学習者が聞きたいことが一致しやすい?
 ちょっと非論理的に見えます。この選択肢は間違い。

選択肢3

 文法構造や使用上のルールなどに詳しいのはやっぱり教師のほうなので、それらの解説をより受けることができるのが母語話者ではなく教師です。
 この選択肢は間違い。

選択肢4

 この選択肢が答えです。母語話者と接触すると多様な背景や日本語使用に触れることができるとあります。多様な背景とは、教師以外の母語話者に触れて教師以外の日本人を知れるみたいな意味でしょうか。多様な日本語使用というのは非文法的な言い方などのことです。教師が言わないような表現に触れることができるので大変有意義です。「社会文化能力」っていうのはあんまり聞かない言い方なんだけど… 社会言語能力とかではなくて? 何を指してるのかはよくわかってませんが、まあだいたいそういう能力は高められるかもね。

 答えは4です。

問2 インタビューの際の留意点

選択肢1

 オープン・クエスチョンは「はい」「いいえ」のような選択肢を用いて答える必要がなく、自由回答ができる質問のこと。
 クローズド・クエスチョンは「はい」「いいえ」など答え方に縛りがある質問のことです。
 インタビューのときは聞きたいことによって適切な問い方を使い分ければ良いと思います。最初だからオープン、後だからクローズドみたいなことはないです。
 この選択肢は間違い。

選択肢2

 インタビューをする相手に合わせて、くだけた感じが良いのか改まった感じがいいのか決めればいいと思います。
 この選択肢は間違い。

選択肢3

 これが正しい記述。
 インタビューはだらだらやってもしょうがない。聞きたいことを用意しておいて、質問して話させてとスムーズに行えるように準備しとくといいです。

選択肢4

 インタビューはカウンセリングじゃないので、聞きたいことを中心に聞くべき。
 関係ない話題にいったら戻した方が良いと思う。この選択肢は間違い。

 答えは3です。

問3 語用論的な誤り

 語用論的誤りとは、第二言語で発話行為をするときに、母語の語用論的知識を転移させたことで生じる誤りのことです。例えば日本語母語話者は何か依頼するときに「申し訳ありませんが」「すみませんが」など謝る表現を多用する傾向があります。私はこの話し方を中国人に中国語でやってたことがあるんですが、直接指摘はされなかったんですけど絶対不自然だと感じてるはずです。なぜなら中国語では依頼をするときに謝ることは普通しなくて感謝の言葉を述べるほうが圧倒的に多いからです。こういう場面ではこのように言うみたいな語用論的な知識を転移させたことで起きる誤りを語用論的誤りと呼ぶわけです。

選択肢1

 こういうときは「たら」じゃなくて「ば」を使ったほうがいいのでは? と思いました。「答えてくだされば」ですね。
 文法的な誤り(条件節に関する誤り)で、語用論的誤りではありません。

選択肢2

 「に対する」と「についての」を混同しているみたい。
 文法的な誤り(複合格助詞に関する誤り)で、語用論的誤りではありません。

選択肢3

 「やらさせて」はさ入れ言葉になってるのがまず気になるところ。
 それから「やる」じゃなくて「する」を使い、「させていただけませんか」と言ったほうがより自然じゃないかと思う。
 いずれも文法的な誤りで、語用論的誤りではありません。

選択肢4

 これが語用論的誤り。なんだか中国語からの転移っぽいんですよね。
 中国語で依頼をするときはいくつか特徴があります。その一つとして依頼を引き受けるかどうかの選択肢を相手に委ねる。それで都合がいい日を相手に託す傾向があります。(合ってますか?この感覚。中国語母語話者の方がいたら教えてください
 もしかしたら中国語じゃなくて他の言語からの語用論的転移かもしれないですが。

 答えは4です。

問4 配布資料

 1 見やすくしたいならフォントは統一! この選択肢は間違い。
 2 数値データはグラフにすると見やすい。 これが答えです。
 3 配布資料と発表で用語は統一したほうがいい。この選択肢は間違い。
 4 配布資料と発表の順序は統一したほうがいい。この選択肢は間違い。

 答えは2です。

問5 振り返りシート

 自分の発表とかこれまでの成果を振り返って自己評価するためのものをここでは振り返りシートと呼んでるみたいです。

選択肢1

 振り返りシートは学習者による反省が書かれてるものだから数値化するのは難しいです。数値化できないということは順序化しにくいからその優劣も分かりにくいです。この選択肢は間違い。

選択肢2

 最近自律学習とかをの話の延長で学習者自身に自己評価をさせる授業が流行ってる?というか話題になってますけど、自己評価は無経験だとどうやればいいか分からないと思います。「すぐに対応できるようになる」にはちょっと疑問がある。
 この選択肢は間違いです。

選択肢3

 学習者の自己評価の結果を信じて最終的な評価とする、みたいな書き方をしてますけどそれは間違い。
 自己評価はあくまで学習者個人のためのもの。学習者を最終的に評価するのは教師の役割です。最終的な評価に自己評価の内容を含むのは構いませんがそれが全てじゃない。

選択肢4

 これが正しい記述。自己評価の主目的は学習者のその後の学びのために行うものです。

 答えは4です。




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