複合格助詞
複合格助詞(複合助詞)(compound case particles)とは、「格助詞+動テ形」「格助詞+連用形」「格助詞+名詞+格助詞」などの形をとり、格助詞と同じく名詞類の格を表す複合形式のことです。格助詞に比べてより複雑な意味を表すことができ、改まった場面で用いられる傾向があります。
(1)a 将来を考える。 (格助詞)
b 将来について考える。 (複合格助詞)
(2)a 政府に抗議文を送った。 (格助詞)
b 政府に対し抗議文を送った。(複合格助詞)
(3)a 妻と歩んでいく。 (格助詞)
b 妻とともに歩んでいく。 (複合格助詞)
(1)の「について」は「を」に置き換えても「将来」が述語「考える」の対象であることに変わりないので、ヲ格とほぼ同等の意味を担っていると考えられます。違うところと言えば、「について」を用いると思考の対象としての「将来」という意味合いが強まる点です。(2)も「に対し」を用いることで授受の受け手としての「政府」を強調しています。複合格助詞は格助詞にはないこうした意味を表せます。複合格助詞を使うと文体がやや硬くなります。
参考文献
日本語記述文法研究会(2009)「現代日本語文法2 第3部格と構文 第4部ヴォイス」11-12頁.くろしお出版
森山卓郎,渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』30頁.三省堂
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