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同義語とは?

同義語

 同義語とは、同一の言語内において単語Aと単語Bが異なる語形を持ちつつも、その2語の意味領域が完全に重なり合うペアのことです。同じ文脈でAとBを交替させても意味が変わらないような場合、その単語Aと単語Bは同義語と呼ばれます。「投手」と「ピッチャー」は(1)の文脈において交替させても意味が変わりませんし、(2)の「パソコン」と「PC」もそうです。交替させて意味が変わらないようであれば2語の意味は完全に重なり合っていると判断できます。

 (1)a 世界一の投手になりたい。
    b 世界一のピッチャーになりたい。
 (2)a パソコンを初期状態に戻す。
    b PCを初期状態に戻す。

 もし2語があらゆる側面で完全に同じ意味を有しているとすれば、どのような文脈においても2語は自由に交替することができます。しかし、語の意味を厳密に捉え、語が持つ微妙なニュアンスや文体の違いなども問題にすれば完全な同義語は存在し得ないと言えます。

 (3) 野球     (いわゆる日本の戦い方)
 (4) ベースボール (メジャーリーグの戦い方)

 「野球」と「ベースボール」は同じスポーツを指すので、この2語が直接指示する概念は確かに同じです。ところが文脈によってはバントをしたり、盗塁をしたりと小技を絡めるような日本の戦い方を「野球」と呼ぶのに対し、長打中心のメジャーリーグの戦い方を「ベースボール」と呼ぶような区別がなされることもあります。このようなニュアンスなどまで考慮すれば「野球」と「ベースボール」は同義語とは呼べません。考慮する語の意味をどこまでに限定するかによって2語の意味領域が完全に重なり合うこともあれば、部分的に重なり合う関係(類義関係)にもなります。

参考文献

 村木新次郎(2018)「意味の体系」『朝倉日本語講座4 語彙・意味』58-59頁,朝倉書店
 国立国語研究所(1965)「類義語の研究」『国立国語研究所報告 28』秀英出版




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