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令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題7解説

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令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題7解説

問1 自己研修型教師

 日本語教師を養成することについて、時代とともに考え方が変わってきています。1980年代までは主に教授法の改善、授業でのテクニックなどの技術習得が重要だと考えられていましたが、1990年代後半になって教師自身の実践、知識、理論などの専門性向上を目指す「教師の成長」という考え方が出てきました。「教師の成長」は「指導者によって教授能力を獲得し、教師としての専門性の獲得・向上を担うことによって教師の専門性を自ら高めていくこと」と定義され、日本語教師は自己研修型教師(self-directed teacher)内省的実践家(reflective practioner)であるべきだとされています。

自己研修型教師 他の人が作成したシラバスや教授法を鵜呑みにしそのまま適用していくような受身的な存在ではなく、自分自身で自分の学習者に合った教材や教室活動を創造していく能動的な存在。
内省的実践家 自分(や他の教師)のクラスで繰り広げられる教授・学習過程を十分に理解するために、自分(や他の教師の)教授過程を観察し、振り返る中で教授・学習過程の重要な諸点を発見していく教師。

 この2つのあるべき姿になるため、教師は教師自身によるアクション・リサーチを行うことが推奨されています。

 ここまで読まれると、答えは「内省」だということが分かると思います。
 答えは2です。

 参考:教師教育と教師の成長
 参考:日本語教師の自己成長とInformal学習
 参考:『日本語教育』から見る. 日本語教師養成・研修に関する言説の変遷. ―政策・施策に照らして―

問2 アクション・リサーチ(AR:action research)

 上の問題の続きです。
 自己研修型教師や内省的実践家を目指すためにはアクション・リサーチするのが良いよ、ということ。これは教師が自分の教育活動をもっとよくするために行う小規模なリサーチ活動、及び内省活動のことです。現状を改善するような計画を立て、それにしたがって行動し、集めたデータをもとに内省をします。計画、行動、観察、内省のサイクルで何度も何度も繰り返します。

選択肢1

 この選択肢がARの記述です。

選択肢2

 ARは他の教師に多少なりとも影響を与えるものですが、ARはそもそも自分自身の教育活動改善のために行うものです。「他の教育機関の教師の参考になるように」行うのは間違っています。

選択肢3

 アクション・リサーチでは現場での取り組みによって得られた様々なデータを分析、研究して内省に役立てます。実際の教授活動で得られたデータでなければ真の内省には繋がりません。この選択肢は間違い。

選択肢4

 自己研修型教師を目指すためにARを行うので、実際のARを行うのは教師本人でなければいけません。他の教師のフィードバックをもとに改善するだけだと受身的です。自分でもリサーチ、他の教師にもリサーチしてもらって、そのデータを分析し内省に生かすのは本人です。この選択肢は間違い。(ただ他人の協力を得ること自体は悪いことではありませんが…)

 
答えは1です。

問3 ビリーフ

 自分が信じていることをビリーフと言います。
 例えば、先生はたくさん単語を覚えることが上達の近道だと信じて疑わない場合、それは教師のビリーフです。しかし学生のほうはそう思っていないかもしれません。日本人と話す機会があれば上達する、とにかく聞いてとにかくリピートすることが近道だと思っている人もいます。ビリーフは人によって違いますので、授業では先生と学生のビリーフがぶつかるという現象が起きます。学生が自分のビリーフにそぐわない授業をされるとイライラするかも。

選択肢1

 授業の記録はビリーフと関係なし。

選択肢2

 これがビリーフの記述。ビリーフはその人の経験から生まれるものです。先生がたくさん単語を覚えて第二言語を習得したという成功体験があった場合、それがビリーフになっていずれ学生にもそうアドバイスするかもしれません。ただビリーフはその人が信じていることであって、必ずしも正しいとは限りません。そう思い込んでいるだけということもありえます。

選択肢3

 ビリーフと関係なし。

選択肢4

 間違えるならこの選択肢だと思います。
 教師のビリーフは確かに教師がやる授業に大きな影響を与えます。上述したように単語を覚えて第二言語を習得したという成功体験を持つ教師は、学生にも授業でそうさせる可能性があるからです。
 ただし、ビリーフは恒久的な考え方(ずっと変わらない考え方)ではありません。学生に単語を覚えさせ続けた結果、学生たちは自分のビリーフとは違うことをさせられているので気が滅入ってきます。モチベーションが上がらないと成績だって上がりにくくなっちゃいます。このやり方では思ったように伸びないなあと教師自身が気づいたら、このやり方、ビリーフは間違っているのかもしれないと考え、ビリーフが形を変える可能性だってあります。恒久的な考えではなく、ある程度可変性を持ったものです。

 したがって答えは2です。

問4 教科書分析

 授業で使おうとしている教科書がどういう流れなのか、どんな単語、文型がどんな順番で提出されているのかを調べることを授業前にしておきます。これが教科書分析です。

選択肢1

 実際ここまでする人はホントにいるのかなって思う。私はそんなページ気にも留めませんでした。でも理想を語ればやったほうがいいと思う。
 現実的な課題に対応できる学習者を育てようという考えを持った著者と、しっかり基礎から積み上げていこうとする著者だったら教科書の構成は変わってきます。前者はコミュニカティブな、後者は文型中心の教科書になります。言語学習観や言語教育観を見て、自分がやりたいと思っている内容に近い教科書を選べれば一番いいと思います。

選択肢2

 正しい。
 付属の資料なんかがある教科書も珍しくはないので、利用できるものがあればその存在も確認しておくと良いです。

選択肢3

 その教科書ではどんな文型を導入するか把握しておくのは重要です。導入する文型を確認して、それに沿って教案を考える必要があるから。

選択肢4

 提出文型を確認するのは良いんですけど、登場人物の関係を確認することは意味ない。
 例えば「あげる」のように2人の人が関係する文型では、登場人物としてAさん、Bさんが出てきます。彼らの関係を事前に把握しておくことは正直どうでもいい。

 不適切なのは4。答えは4です。

問5 授業や教え方の改善

 1 いい感じ
 2 いい感じ
 3 肯定証拠の事例を集め????
 4 いい感じ

 選択肢3は訳分かんないことを言っています。
 肯定証拠というのは学習者に与えられるインプットのうち、何が文法的に正しく、ふさわしい表現なのかという情報のことです。

 授業の問題点に関する肯定証拠の事例を集め? ちょっと何を言ってるか…
 「肯定証拠」という字面のイメージから騙そうとしてるんだと思います。この作問者発想がすごい。

 答えは3です。




コメント

コメント一覧 (4件)

  • 高橋先生、いつもお世話になりありがとうございます。

    問3に関して、「理想的な教師像」に限定したものではありませんが、「学習者は教師の言うことを何でも聞かなければならない」「授業では一度たりとも失敗してはいけない」のような固定観念や非合理的な思い込みのことを、イラショナルビリーフというと聞いたことがあるように思います。

  • いつもありがとうございます。

    問5選択肢3の説明で、【正しい言い方である「行ってきました」を肯定証拠として学習者にインプットしている】と説明されていますが、

    『行いてきました』は間違いだと指摘されること自体は否定証拠で、『行ってきました』が正しいと教えられることが肯定証拠という解釈でいいのでしょうか。

    いまいち、否定証拠の意味がよくわからないです。

    • >ぽてさん
      肯定証拠は、その表現が文法的に正しいことを示す情報のことです。
      否定証拠は、その表現が文法的に間違いであることを示す情報のことです。

      「行いてきました」と学習者が言って、先生がそれに「『行ってきました』ですよ」とフィードバックしたとします。
      その先生のフィードバックによって学習者は自分が言った「行いてきました」は間違いであるということが分かりますから、先生の言った「『行ってきました』ですよ」は否定証拠になります。また「『行ってきました』ですよ」と言えば「行ってきました」が正しい言い方だということも分かりますから、これは同時に肯定証拠にもなります。

      それは間違いだと教えられるフィードバックが否定証拠で、それは正しいと教えたり、あるいは正しい表現を直接教えたりするフィードバックが肯定証拠です。

      • ありがとうございます!細かいところが一つ一つ納得できるので助かります!

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