屈折（inflection）
屈折（inflection）とは、文法的な要請によって（文法カテゴリーに対応して）付与が義務的な接辞が付与され、自由形態素が文中でその要請に沿った語形に変化することです。例えば日本語では、非過去（non-past）、過去（past）の対立にしたがって「食べる（tabe-ru）」、「食べた（tabe-ta）」と活用し、語形を変えます。英語でも現在形、過去形、現在分詞、過去分詞などの統語的な環境にしたがって walks, walked, walking, walked、あるいは go, went, going, gone などのように活用し、語形を変えます。数（number）でも屈折します。例えば１匹の犬であれば dog だが、複数の犬は dogs と語形を変えます。単数と複数で形が変わります。日本語でも単数なら「田中」、複数なら「田中たち」になります。
（１） 食べる （tabe-ru）
（２） 食べた （tabe-ta）
（３） 田中たち （tanaka-tati）
屈折において付与される接辞は文法的な要請によって義務的です。例えば「食べる（tabe-ru）」の -ru、「食べた（tabe-ta）」の -ta は時制を表すために必須です。「田中たち」の -tati も複数を表すために必須です。このように屈折に用いられる接辞を屈折接辞（inflectional affix）と言います。
また、屈折接辞は自由形態素の品詞を変えることはありません。
※接辞の付与に関して、派生は非義務的、屈折は文法的な要請によって義務的
※派生は全く別の語を作り、屈折は１つの語の語形変化を指す
参考文献
漆原朗子（2016）『朝倉日英対照言語学シリーズ４ 形態論』朝倉書店
斎藤純男（2010）『言語学入門』61-63頁.三省堂
斎藤純男,田口善久,西村義樹編（2015）『明解言語学辞典』133-134頁.三省堂
リンゼイ J.ウェイリー,大堀壽夫ら訳（2006）『言語類型論入門－言語の普遍性と多様性』117-124頁.岩波書店
コメント