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サ変動詞とは?

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サ変動詞

 サ変動詞とは、五段動詞一段動詞と同じ活用をしない現代日本語の不規則動詞の一つで、動詞「する」のことです。軽動詞(light verb)、または形式動詞などとも呼ばれます。

 辞書形(基本形) する
 マス形      します
 ナイ形(否定形) しない
 テ形       して
 タ形       した
 タラ形      したら
 タリ形      したり
 バ形       すれば
 命令形      しろ/せよ
 意向形(意志形) しよう
 受身形      される
 使役形      させる
 可能形      できる*

 「する」に形態的に対応する可能形は存在しませんが、統語的・意味的に対応するものとして「できる」があります。ここでは「する」の可能形を「できる」としてまとめています。

サ変動詞の中にはさらに不規則な活用をする動詞がある

 サ変動詞は国文法においてサ行変格活用の動詞と呼ばれます。活用は以下です。

動詞 活用語尾
未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形
サ変動詞 する しない
しよう
します
して
する する すれば しろ
せよ
運動する 運動しない
運動しよう
運動します
運動して
運動する 運動する 運動すれば 運動しろ
運動せよ
ザ変動詞 論ずる 論じない
論じよう
論じます
論じて
論ずる 論ずる 論ずれば 論じろ
論ぜよ

 サ変動詞「する」を含む形式の中には、上記と同じ活用をしない例外も見られます。例えば、典型的なサ変動詞「する」や「運動する」などを活用させると「し・し・する・する・すれ・しろ」と上表のようになりますが、「愛する」は「さ・し・する・する・せ・せ」となり、未然形と仮定形、命令形が五段動詞の活用と同じ形になります。このような例外の活用をとるのは他にも「辞する」「介する」などがあり、これらは五段動詞「愛す」「辞す」「介す」などの形態的に対応する動詞を持ちます。

動詞 活用語尾
未然形 連用形 終止形 連体形 仮定形 命令形
サ変例外 愛する 愛さない
愛そう
愛します
愛して
愛する 愛する 愛せば 愛せ

「する」は他動詞のときもあれば自動詞のときもある

 サ変動詞「する」は対象をヲ格でとる他動詞用法もありますし、対象をとらず主体をガ格でとる自動詞用法もあります。

 他動詞用法では特定の名詞をヲ格でとった「名詞+をする」の形と、ヲ格なしで「名詞+する」の形になる場合とが見られ、この形をとることができる名詞はとれない名詞と区別してサ変動詞語幹、あるいは動作名詞(動名詞)と呼ばれます。(3)(4)のように「をする」「する」が後接できない名詞はサ変動詞語幹ではなく、単に名詞です。

 (1) 運動をする。 (他動詞用法:サ変動詞語幹+を+サ変動詞)
 (2) 運動する。  (他動詞用法:サ変動詞語幹+サ変動詞)
 (3) *毛虫をする
 (4) *毛虫する

 自動詞用法は、におい、味、音、感覚などの名詞についてそれらを知覚するときの「する」、意志的な決定を表す「する」などがあります。

 (5) カレーのにおいがする。 (自動詞用法:におい)
 (6) 変な味がする。     (自動詞用法:味)
 (7) ギターの音がする。   (自動詞用法:音)
 (8) 冷たい感じがする。   (自動詞用法:感覚)
 (9) 人の気配がする。    (自動詞用法:感覚)
 (10) 今晩は外食にする。   (自動詞用法:意志的な決定)

参考文献

 日本語記述文法研究会(2010)『現代日本語文法1 第1部総論 第2部形態論』126頁.くろしお出版




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