破擦音（affricate）
日本語標準語で現れる破擦音は [ts][dz][tɕ][dʑ] です。
●調音動作
①２つの調音器官で完全な閉鎖を作る。
②肺からの呼気を閉鎖で止め、呼気を圧縮する。
③上がった口腔内の気圧にしたがって閉鎖を緩やかに開放し、呼気を放出する。
④閉鎖の開放後、２つの調音器官で気流がギリギリ通るくらいの隙間を作る。
⑤その隙間から気流を押し出そうとする。
⑥気流が乱流になり、摩擦音が出る。
※口蓋帆を持ち上げて鼻腔への通路を塞ぎ調音します。
破裂音は閉鎖を開放後に２つの調音器官の離れるスピードが速く、狭めの状態がほとんど維持されません。しかし、その離れるスピードがゆっくりだと開放後に狭窄が作られ、破裂のすぐ後に摩擦音が伴って聞こえます。このような現象を破擦化と言います。破裂音の調音動作の後に摩擦音の調音動作が行われるから破擦音という覚え方が一般的ですが、音声学的には破裂音と摩擦音が並んだものとしては考えず、破擦音という一つの調音法として考えます。
IPA
| 日本語の例 | IPA表記 | 声帯振動の有無 | 調音点 | 調音法 |
|---|---|---|---|---|
| つ | [ts] | 無声 | 歯茎 | 破擦音 |
| ざずづぜぞ | [dz] | 有声 | 歯茎 | 破擦音 |
| ち | [tɕ] | 無声 | 歯茎硬口蓋 | 破擦音 |
| じぢ | [dʑ] | 有声 | 歯茎硬口蓋 | 破擦音 |
参考文献
斎藤純男（2019）『日本語音声学入門 改訂版』三省堂,21-24頁
服部義弘（2012）『朝倉日英対照言語学シリーズ 2 音声学』朝倉書店,46-63頁
THE INTERNATIONAL PHONETIC ALPHABET (revised to 2020)
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