使役受身
動詞語幹に使役と受身を表す接辞「-(s)ase-rare-」を付加し、述語の事態を引き起こす使役者をニ格で、その被使役者をガ格で表す使役受身態(causative passive voice)の文を使役受身文と言います。
(1) 先輩に お酒を 飲ませられた。
(2) 映画の結末に 驚かされた。
(3) 親に 彼氏と 別れさせられた。
(4) 私が 上司に 週末に 出勤させられた。
使役受身文を作る動詞の形態的特徴
述語に動詞の使役受身形が置かれていると、その文は使役受身文と呼びます。その使役受身形の作り方は以下です。
| 動詞の使役受身形 | 例 | |
|---|---|---|
| 五段動詞(子音語幹動詞) | 動詞語幹 – ase – rare – (ru)動詞語幹 – as – are – ru | 走らせられるhasir- ase – rare – ru走らされるhasir – as – are – (ru) |
| 一段動詞(母音語幹動詞) | 動詞語幹 – sase – rare – (ru) | 食べさせられるtabe – sase – rare – ru |
| サ変動詞 | sase – rare – (ru) | させられる |
| カ変動詞 | ko – sase – rare – (ru) | 来させられる |
五段動詞の場合は動詞語幹に -ase-rare- をつけて「走らせられる(hasir-ase-rare-ru)」とするのが普通ですが、-as-are- をつけて「走らされる(hasir-as-are-ru)」とする短縮形もあります。一方、一段動詞は動詞語幹に -sase-rare- を付けて作ります。一段動詞、サ変動詞、カ変動詞に短縮形はありません。なお、使役受身形になると一段動詞化します。
使役受身文の特徴
使役受身文は、能動文の述語を使役受身形にし、ガ格補語はそのままで、能動文が表す事態を引き起こす人物を新たにニ格でとって作ります。つまり使役受身文では使役者はニ格で、被使役者はガ格で表されます。
(5)a 私が ピーマンを 食べる。 <能動文>
b 私が 母に ピーマンを 食べさせられる。 <使役受身文>
(6)a 私が 驚く。 <能動文>
b 私が 彼に 驚かされる。 <使役受身文>
(7)a 私が 彼女と 結婚する。 <能動文>
b 私が 母に 彼女と 結婚させられる。 <使役受身文>
(8)a 私が 走る。 <能動文>
b 私が 監督に 走らされる。 <使役受身文>
(5b)(7b)(8b)のように意志動詞が使役受身形になって文を作るとき、ガ格で示された被使役者が自分の意志に反して、ニ格で示された使役者によって述語の事態を強制的に実現されたことを表します。(5b)では、「私」はピーマンを食べたくなかったが、母がそれを強制したために「食べる」という事態が実現しているわけです。使役受身文は使役を含むため、被使役者の意志に関係なく強制的に、といった意味がはっきり現れます。
(6b)のように、述語に感情や思考を表す動詞の使役受身形が置かれている場合、ニ格名詞が原因となって述語の感情や思考が引き起こされたことを表します。この場合のニ格名詞は抽象的な使役者として捉えられます。
参考文献
日本語記述文法研究会(2009)『現代日本語文法2 第3部格と構文 第4部ヴォイス』248-251.くろしお出版

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