6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題5解説

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令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題5解説

問1 生教材

 生教材とレアリアは広義では同じ意味なんですが、狭義だと別物を指します。どちらも教育用に加工されていない教材を指すんですが、生教材は特にその社会で実際に使われている、雑誌、新聞、映画、メニューなどそのものを指します。一方、レアリアは「りんご」を教えるために使うりんごそのものを指します。茶道や書道、華道みたいな体験授業などもレアリアと呼ばれます。わりとはっきりしない些細な違いですが、今回はこの違いを出題しています。

 1 外国語教育用というのがダメ。生教材は教育用に加工されていない教材のことです。
 2 学習者向けがダメ! 生教材は加工されてないものを指します。
 3 母語話者向けに作られているのは生教材、レアリアに欠かせない要素です。そのうえでの映画やアニメなのでこれは生教材。
 4 演劇や落語などがどんなものか説明するために目の前に実物を用意してます。これはレアリア。

 答えは3です。

問2 主旨を聞き取る

 全体的な主旨を聞き取るとありますが、これはスキミングを指します。スキミングは大意を把握する読み方のことです。

スキャニング 大量の文章から特定の情報を探し出すための読み方のこと。名簿から特定の名前を見つけたり、辞書で言葉の意味を調べるときなどに用いる読み方。
スキミング 文章の要点や全体の大意を理解するための読み方のこと。

選択肢1

 クラスメートがプレゼンテーションで何を伝えたいのかを考えながら聞くことは、主旨を聞き取る練習になりそうです。
 これはスキミング。

選択肢2

 天気予報が雨なら傘が必要、雨じゃないなら不要。雨かどうか、そこだけ聞き取ればいいわけですからスキャニングが必要です。全体の主旨を聞き取るってほどの大それたことはしていません。

選択肢3

 遅延情報でどこがどう遅れているのかを聞き取ればいいのでスキャニングです。

選択肢4

 日程に注目して聞くのはスキャニングです。

 よって答えは1です。

問3 イラスト

 授業で使うイラストの話。

選択肢1

 「思う」「考える」などの思考動詞、「~だろう」「~と思う」などの推量表現、それらの違いをイラストでちゃんと示すことができるかな?
 抽象的な概念で分かりやすい動作を伴うわけでもないから絵にしにくいです。明示的に示すことはできません。この選択肢は間違い。

選択肢2

 イラストは学習者の理解を補足し、理解を深めさせることができます。
 これが正しい記述。

選択肢3

 イラストによって新たな知識を得ることもできますし、それまでの知識の上書き、再確認もできます。そうすれば記憶に結びつけることもできます。この選択肢は間違い。

選択肢4

 イラストは状況を提示することが大大大得意です。周囲の状況まで書けば一目で何が起きているのか分かります。「嬉しい」「悲しい」などの心理状態を提示することも容易にできます。この選択肢は間違い。

 答えは2です。

問4 対面聴解の練習

 対面聴解と非対面聴解という言葉があります。
 対面聴解は話し手と直接対面して話し合いながら行う聴解です。
 非対面聴解は話し手と対面していないので、直接やり取りができません。主に録音や録画などを使った一方的な聴解を指します。

選択肢1

 ディクトグロスの記述。ディクトグロスは長めの文章を聞き、キーワードをメモします。そのあとグループになり、お互いのメモを持ち合ってもともとの文章を協力して再現する活動です。この活動は「聞く」だけでなく、「書く」「話す」「読む」全部の技能を使う活動なので対面聴解の練習としてはちょっと…

選択肢2

 ストーリーを聞く段階は対面聴解の練習になりますが、その後話し合うので会話の練習も含まれています。
 この選択肢は不適当。

選択肢3

 これが答えです。
 対面聴解は目の前に話し手がいるので、聞き手の推測の正誤を話し手に直接質問することができます。

選択肢4

 読み上げる人は話す練習をしてるので聴解の練習とは言えません。聞いてるほうは読解の練習にもなるけど、同時に穴埋めさせるので書く練習も兼ねてます。この選択肢は不適当。

 したがって答えは3です。

問5 定着させる練習

 1 モデル音声の後にリピートさせると、リピートした内容は定着しやすくなります。
 2 考えさせて正解と照合させる。定着にはいいと思います!
 3 日本語で聞かせてその内容を母語で言わせても、日本語を再生するわけではないので日本語の語や表現の定着は期待できません。
 4 ロールプレイをさせると学習者に使わせることになりますので、語や表現の定着が期待できます。

 答えは3です。




コメント

コメント一覧 (4件)

  • 高橋先生、いつもお世話になりありがとうございます。

    問1について、自信はありませんが、これはもしかしたらひっかけ問題かもしれないと思います。

    私は選択肢1と2はすぐに消しまして、選択肢3と4で迷いました。選択肢3の「アニメ」「母語話者向け」というワードを見て、選択肢4を選ぼうとしたのですが、最終的には選択肢3を選びました。

    解説本などを見ると、「生教材とは教育用に加工されていない教材を指す。実際に存在する物体に加えて、テレビ番組、ラジオ音声、駅のアナウンスといった映像・音声資料、新聞などの文字資料など多岐にわたる。いずれも日本語母語話者が日常場面で接するものであり、語彙・文型などについてはコントロールされていないため、学習者の日本語のレベルに合わせた扱い方に配慮が必要」というような説明になっています。

    それで、「母語話者向け」=「日本語母語話者が日常場面で接するもの」と考えて、選択肢3を選びました。もし3が正解なら、「新聞や各市町村が配布している防災時の注意事項と避難経路といった、日本語母語話者が日常生活において用いているもの」のような内容にせず、「アニメ」にしたあたり、作成者はかなりいろいろ考えて、ひっかけ要素を入れまくって問題を作られたのだろうなと思いました。。。。

    • タルロさん、こんにちは。
      選択肢4の演劇、落語の内容がもし学習者向けに作られたものであれば?と考え
      私も「母語話者向け」で選択肢3としました。

      • 三郎さん、こんにちは。

        この問題以外にも、選択肢4つのうち、2つは消去できても、残りの2つで迷わせる問題がとても多かったように思います(涙)

  • 今更ですが、リアルタイムで参加したのは今回初めてです。サイト運営の方のご苦労がよくわかりました。
    問1の選択肢3か4かの点ですが、私も3を選んでしまいました。皆さんのおっしゃる通りなんですが、落語
    など・・・が気になって、聴解授業で?と思いとどまりました。毎回利用できる便利さにも関心が向きました。
    追伸、私も中国で教えたことがありますが、のんびり先生も渡航が再開されたら、またご活躍ください。拝。

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