令和6年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説

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令和6年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題4解説

問1 JSLとJFL

 日本国内で学習者が生活に使う手段として学ぶ日本語JSL(Japanese as a Second Language:第二言語としての日本語)と言います。これとは逆に、日本国内ではなく、海外の学校などで外国語として学ぶ日本語JFL(Japanese as a Foreign Language:外国語としての日本語)と言います。この2つは学習環境が違うので、教師の役割や教室の役割、自然なコミュニケーションをする機会などの面でいろいろ異なります。

 1 大人になってから学ぶ日本語はなんだろ? 幼児期から学歴に学ぶ日本語はなんだろ?
 2 海外で日系人がルーツとして学ぶ日本語はJHL、子どもが最初に学ぶのは母語
 3 これが答え
 4 特定の目的のために学ぶ日本語はJSP、一般的な日本語はJGP

 答えは3です。

問2 媒介語の使用

 例えば日本語の授業で日本語以外の言語を使うとき、その言語を媒介語と言います。媒介語は日本語に触れる機会を減らしますが、いろいろメリットもあります。

選択肢1

 例えば初級の学習者が「先生、あなたの趣味は何ですか?」みたいに先生に対して「あなた」を使ってしまう誤用をした場合、日本語だけで訂正するなら、「『あなた』はダメです」などと言うだけにとどまる可能性が高いです。なぜダメかを説明しようとすれば「『あなた』は目上の人には使うと失礼になるからです」のように説明しなければいけません。「目上」とか「失礼」が理解していないとこんな説明はできません。でも媒介語を使えば、その学習者にとって最も負担のない言語で多くの説明を聞くことができ、効率的に納得させられます。上級になればなるほど媒介語の使用は減っていくものですが、特に初級であれば媒介語の効果は大きいです。
 この選択肢は適当。

選択肢2

 目標言語である日本語の授業で英語などの媒介語を使うと、その瞬間だけ日本語に触れる機会を失います。この選択肢は逆。

選択肢3

 目標言語である日本語の授業で日本語だけを使うと、学習者は常に「日本語が理解できるだろうか」という圧力にさらされ、不安を感じたりします。しかし媒介語を使えば、その瞬間だけは必ず理解できる状況を作れるので不安感を減らせます。この選択肢は全く逆。

選択肢4

 初級の学習者が授業で何か疑問に思ったとき、それを日本語で質問する術を持たないことがほとんど。そんなときは媒介語の出番。媒介語があれば質問したいことを質問しやすくなります。この選択肢は逆。

 答えは1です。

問3 座席配置

 こんな感じの出題形式は平成23年から見てますけど初めて。なんだか実践的な問題でいいですね。

 1 教師も学習者と一緒に並んで輪になってるので、同等の役割で活動に参加できそうです。適当。
 2 この座席配置は確かに学習者が少なければ顔がちゃんと見えるし、双方向の会話ができそう。適当です。
 3 2人ずつで区切られているからペアワークはしやすい。適当です。
 4 この座席配置は学習者対学習者だから、教師主導の授業はしにくいです。不適当。

 答えは4です。

問4 オンライン授業

 同期型というのは、いわゆるリアルタイムで繋がる形のオンライン授業です。先生も学生も同じ時間に部屋に入って授業をします。非同期型はリアルタイムじゃなくて、あらかじめ先生が録画しておいたものを学生が見て勉強するタイプのオンライン授業です。この2つのメリット・デメリットを比較する問題ですね。

選択肢1

 同期型はリアルタイムなので、そのときのネット環境の状況が悪かったら参加できなくなります。でも非同期型はネット環境が悪くてもリアルタイムで受ける必要はないので、時間をおいて回線状況が良いときに授業を受けられます。この選択肢は正しいです。

選択肢2

 同期型はリアルタイムだから時間的な制約がきついです。みんな同じ時間にパソコンつけて参加しないといけないから、全員の都合をあわせないといけません。でも非同期型はリアルタイムじゃないのでみんなの都合をあわせる必要はなくて、みんなが都合がいいときに授業を受けられます。この選択肢は逆。

選択肢3

 同期型はリアルタイムだから双方向のコミュニケーションができます。非同期型は双方向のコミュニケーションが全くできないか、あるいはめちゃくちゃ不便。この選択肢は逆。

選択肢4

 同期型はリアルタイムだから先生もすぐフィードバックを与えられます。非同期型はできないか、めっちゃむずい。この選択肢は逆です。

 答えは1です。

問5 合理的配慮

 『障害者の権利に関する条約』の「第二条 定義」には「合理的配慮」の定義が書かれています。

 「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。

 障害者に対して、そうでない者との平等を確保するための配慮のことだそうです。

選択肢1

 誰がお金持ちで誰が貧乏だとか、性的少数者の話をしたり、誰が優秀で誰がそうでないかみたいな話はできるだけ控えたほうがいいですね。でも障害者の話はしてませんのでこの選択肢は間違いです。

選択肢2

 社会構造の不均衡を考慮して平等に接するのは良いことだと思います。でも障害者の話はしてませんのでこの選択肢は間違いです。

選択肢3

 これも良さそうですが、どこを否定するんだろ? でも選択肢4のほうがもっといいですね。

選択肢4

 例えば歩行に障害がある学習者がいるならいちいち立たせたり、黒板まで来させて書かせたりするようなことは避けたほうがいいか。そんな感じで申し出に応じて対応するのは合理的配慮にあたります。また「提供者の負担が重すぎない範囲で行う」という部分が上述の「均衡を失した又は過度の負担を課さない」と合致します。この選択肢が最も適当です。

 答えは4です。




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