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平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題3解説

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平成24年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題3解説

問1 「美しい」と「きれい」の使い分け

 「美しい」と「きれい」の使い分けがはっきりしない例を探せばいいので、各選択肢の「美しい」の部分を「きれい」に、「きれい」の部分を「美しい」にしてみて、自由に交替できるかどうか見てみましょう。

 1 「二人の友情は実にきれい」と言えないからこの例文は使い分けがはっきりしています。
 2 「この写真は本当にきれい」と言えるから使い分けがはっきりしていません。
 3 「油で汚れた手を美しく洗った」と言えないから使い分けがはっきりしています。
 4 「料理は美しくなくなった」と言えないから使い分けがはっきりしています。

 答えは2です。

問2 類義表現の違い

 問題文にしたがい、選択肢に現れている4つの動詞「慌てる」「急ぐ」「変わる」「変える」を命令形と意向形にしてみましょう。

基本形 命令形 意向形
慌てる *慌てろ *慌てよう
急ぐ 急げ 急ごう
変わる 変われ 変わろう
変える 変えろ 変えよう

 すると「慌てる」だけが命令形「慌てろ」、意向形「慌てよう」にできません。命令形と意向形にできないのは無意志動詞の特徴です。無意志動詞はその動詞が表す動作が主体の意志によって行われていないので、その動作を意志的に行わせる命令形にはできませんし、意図的に行おうとする意向形にもできません。

 答えは2です。

問3 使い分けのポイント

 「サボる」と「怠る」を使って、各選択肢の操作をやってみましょう。

選択肢1

 (1)a 授業をサボる。
    b *授業を怠る。
 (2)a 家事をサボる。
    b 家事を怠る。

 「サボる」も「怠る」も他動詞なので対象のヲ格をとります。そのヲ格名詞として「授業」と「火事」を用意しました。「授業」の場合は「サボる」だけが使えて、「家事」も場合は「サボる」も「怠る」も大丈夫そうです。こうしてヲ格名詞だけを変えてみた結果、「サボる」と「怠る」の違いが見えてきました。これが答え。

選択肢2

 (3)a がサボった。
    b が怠った。
 (4)a 彼女がサボった。
    b 彼女が怠った。

 ガ格名詞「彼」と「彼女」を用意して入れ替えてみたんですが、どれも正しい文です。ガ格名詞を入れ替えるだけでは「サボる」と「怠る」の違いがよく見えてきません。この選択肢は間違い。

選択肢3

 (5)a サボる
    b サボった
 (6)a 怠る
    b 怠った

 辞書形から過去形にしてみても何にも分からないです。この選択肢は間違い。

選択肢4

 (7)a サボる
    b サボるか?
 (8)a 怠る
    b 怠るか?

 疑問形にしてもやっぱり分からないです。この選択肢は間違い。

 答えは1です。

問4 「自分で言ったため、最後まで頑張るつもりです」

 *自分で言ったため、最後まで頑張るつもりです

 上記の例文を各選択肢の方法で修正してみて、正しくなったらそれが答えです。

選択肢1

 *自分で言ったため、最後頑張るつもりです
 *自分で言ったため、最後頑張るつもりです
 *自分で言ったため、最後頑張るつもりです
 *自分で言ったため、最後頑張るつもりです

 「まで」を「が」「を」「に」「で」などの他の格助詞に変えてみても全部非文になります。「まで」が間違いの原因じゃないからこの選択肢は間違い。

選択肢2

 *自分で言ったため、この仕事を最後まで頑張るつもりです

 「頑張る」の目的語「この仕事を」を加えてみたんですがやっぱり非文です。誤用の原因はそこではない。

選択肢3

 自分で言ったので、最後まで頑張るつもりです

 理由節「自分で言ったため」から同じく理由節の「自分で言ったので」に変えてみたところ非文でなくなりました。誤用の原因はこの部分にあったようですね。

選択肢4

 *自分で言ったため、最後まで努力するつもりです
 *自分で言ったため、最後までやるつもりです

 「頑張る」とほぼ同じ意味の「努力する」「やる」に変えてみたんですけどやっぱり非文のままです。問題はそこじゃない。

 答えは3です。

問5 教師に必要な力

選択肢1

 正しいです。「授業をサボる」と「*授業を怠る」、「*注意をサボる」と「注意を怠る」のように一方の表現しか使えないような例文を見つけると、その使い分けが見えてきます。

選択肢2

 学習者にわざわざ非文を提示する必要はありませんが、言葉の使い分けを見つけるため、わざと非文を作ることも必要です。たとえば「*授業を怠る、とは言いませんよ」みたいなこと。

選択肢3

 コーパスとは、自然言語処理の研究に用いるための基礎資料として、書き言葉や話し言葉の自然言語の文章を構造化し、品詞や統語構造などの言語的な情報を付与して集積した大規模なデータベースのことです。コーパスには話し言葉をまとめたものや書き言葉をまとめたものなどの種類があります。これをコーパスの代表性と呼びます。話し言葉の用例を調べたいのであれば、話し言葉に関するコーパスを参照すべきです。代表性は尊重すべきです。この選択肢は間違い。

選択肢4

 正しいです。特にいうことなし。

 答えは3です。




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