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れ足す言葉
れ足す言葉とは、五段動詞の可能形に現れる可能接辞「-e-」に「-re-」が挿入され、「-ere-」になる歴史的な言語変化、またはその語形のことです。例えば、五段動詞「読む(yom-u)」の語幹 yom- に可能を表す接辞 -e- をつけた「読める(yom-e-ru)」は現代において使役形の規範的な語形と認識されていますが、-re- を挿入して「読めれる(yom-ere-ru)」という語形も使用実態として確認されています。これがれ足す言葉です。
従来の規範的な語形 | れ足す言葉 | |
読む(yom-u) | 読める(yom-e-ru) | 読めれる(yom-ere-ru) |
書く(kak-u) | 書ける(kak-e-ru) | 書けれる(kak-ere-ru) |
泳ぐ(oyog-u) | 泳げる(oyog-e-ru) | 泳げれる(oyog-ere-ru) |
行く(ik-u) | 行ける(ik-e-ru) | 行けれる(ik-ere-ru) |
ら抜き言葉からの類推
五段動詞の可能接辞を「-ere-」に変化するれ足す言葉は、一段動詞語幹に「-re-」をつけて作るら抜き言葉に形態的に似ています。つまりれ足す言葉に現れる可能接辞「-ere-」は、一段動詞のら抜き言葉に現れる可能接辞「-re-」からの類推であり、全体として動詞の可能の形を揃えようとする言語変化と考えられています。
(1) 書けれる(kak-ere-ru) 可能接辞「-ere-」
(2) 寝れる(ne-re-ru) 可能接辞「-re-」
そもそもら抜き言葉は五段動詞の可能形からの類推だったんですが、ら抜き言葉からさらに類推が進んだものとしてれ足す言葉が生じました。
参考文献
森山卓郎・渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』159頁.三省堂
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