6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題6解説

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令和3年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題6解説

問1 CEFR

 CEFRはヨーロッパ言語共通参照枠(Common European Framework of Reference for Languages)の略で、言語教育の枠組みのことです。言語能力を測定する指標も示していて、そのレベルは6段階に分かれ、一番下からA1、A2、B1、B2、C1、C2となっています。ご覧になりたい方は「こちら」の25ページ。


 ※クリックすると拡大します。

 各選択肢はそのまま転記したものではなく大幅に文言が変えられています。公式の答えは4とのことなので選択肢4はB1レベルの記述らしい。その他の選択肢は何のレベルの記述なのかはもう分かりません。これは難しい。せめて引用してよ…

 参考:CEFRとは|JF日本語教育スタンダード

問2 社会言語能力

 「社会言語能力」という言葉からカナルとスウェインが提唱したコミュニケーション能力を思い出したい。コミュニケーション能力は次の4つからなると言ってます。

文法能力 音声、発音、単語、文法、綴り、語構成など、単一の文レベルで正確に使用できる能力。
正しさ、正確さの能力。
談話能力 文全体の意味や形式などを一致させ、前後の文脈を結びつけた分かりやすい談話を複数の文にまたがって作り出す能力。
分かりやすさ(明晰さ)の能力。
社会言語能力
社会言語学的能力
その場の場面や状況にあったふさわしい表現を使用できる能力。
社会的に「適切」な言語を使う能力。
ふさわしさ(適切さ)の能力。 語用論的能力ともいう。
方略能力
ストラテジー能力
言語知識が不十分でコミュニケーション上の問題が起こった時にそれを乗り越えるための能力。
コミュニケーション・ストラテジー(communication strategy)を使う能力。

 この4つに照らし合わせて選択肢を見てみます。

 1 「場面に適した」が社会言語能力
 2 コミュニケーション上の困難を乗り越えようとするストラテジー能力
 3 「順序立てて」が談話能力
 4 「正確な表現」が文法能力

 答えは1です。

問3 ウォーミングアップ

 ウォーミングアップというと準備体操のイメージかと思います。それはだいたいあってて、ちょっと頭を使わせてこれからの本作業の弾みにする活動にあたります。その日のニュースとかで雑談してもいいし、今日の授業で何やるか説明してもいいし、そんな感じ。

 1 授業の最初なので授業の目的なんか伝えるのはいいですね!
 2 授業の冒頭から急に新出文型の意味? ウォーミングアップどこいった?
 3 授業と関係するような内容で雑談したりして、頭を慣れさせるみたいなこと。これも良い!
 4 これもいいですね。本作業に入る前に関連する語彙を少しずつ入れるのは。

 ウォーミングアップとしてよくないのは2。
 答えは2です。

問4 シャドーイング

 シャドーイングは、まずテキストを見ないで音声を聞き、そのあと聞こえてくる音声の後にあまり間を空けないで同じ言葉を繰り返す活動のことです。シャドーイングは聞こえてくる音声をそのまま真似するような練習法なので、表現をいちいち考えないで口にできるようになったり、アクセントやリズム、イントネーションのそのまんま真似して話せるようになれます。(プロソディの習得に有効)

 1 高いレベルの発話を正確に理解させる? シャドーイングって繰り返すだけなので、発話を正確に理解させる効果はあまり期待できないです。
 2 そうです。語句をそのままコピー、記憶できます。
 3 上述した通り、合ってます。
 4 合ってます。そのまま真似するから。

 答えは1です。

問5 ロールプレイ

 ロールプレイは、こういうロールカードと呼ばれるものをそれぞれロールプレイの参加者に配ります。自分に配られたカードしか見れません。お互い何をするか、何が目的かが書かれていて、その目的を達成するために日本語を使って頑張ります。

 選択肢に「情報差」や「表現の選択権」という言葉が出てきていますが、まずはここから説明します。

 ロールプレイは参加者の間に持っている情報差(インフォメーションギャップ)が必要です。お互い何が目的なのか分かっていると、ただ暗記した表現を言って形式的に演じればいいだけになってしまいます。相手の目的が何かが分からないと、そこに情報差が生まれ、実際のコミュニケーションに近くなります。情報差は活発なコミュニケーションを生み出すのにも役立ちますし、授業の盛り上がりも支えるものです。

 表現の選択権(チョイス)もロールプレイを支える要素の一つです。
 例えば他人に正しくアドバイスするロールプレイを考えてみます。あらかじめ「~したらどうですか」という文型を使えばいいことを知っていれば、これを使ってすぐロールプレイは終わりです。でも何を使えばいいのか分からない状況だと「~してください」「~しましょう」「~しませんか?」みたいないろんな表現が学習者の頭の中に渦巻いて、どの表現が一番ふさわしいか考えながら活動できます。そのロールプレイの中で自分がどのように振る舞うか、どのような表現を使うか、参加者にその選択権があれば活動は自由になり、盛り上がります。学習者にとっても考える機会となるので有意義です。

 情報差と選択権が分かりましたので、問題を見てみます。

 ロールカードXのほうは質問に答える役割がありますが、その質問の内容は当然分かりません。ロールカードYの人は質問をする役割がありますが、質問に対してXが何をするかは分かりません。ここだけ見ても情報差があります
 しかし、それぞれのカードに「有名な」「~といいですよ」「すみません」「~ていただけませんか」みたいな語彙・文法が書いちゃってます。質問する側、答える側がどのように答えればいいのかはカードを見れば分かるので選択権はなさそう

 したがって答えは2です。




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