コミュニケーション・ストラテジー(Communication Strategy)
コミュニケーション・ストラテジー(Communication Strategy、以下CS)についてTarone(1981: 294)は次のように定義しています。
a mutual attempt of two interlocutors to agree on a meaning in situations where requisite meaning structures do not seem to be shared. (Meaning structures include both linguistic and sociolinguistic structures.)
2人の対話者が、意味が伝わっていない状況で伝えたい意味を共有しようとする相互の試み。(ここでいう意味とは、言語的および社会言語的なものを含む。)
CSは第二言語学習者がネイティブスピーカーとコミュニケーションを取る場面で言語上の問題に直面したとき、当該コミュニケーションの問題を切り抜けようとして用いる対処法のことです。言語上の問題とは、例えば単語が分からず言いたいことが言えない、言いたい内容が能力不足で表現できない、もしくは思い出せないなどを指します。
(CSはTaroneによって提唱された概念であり、その後 Faerch & Kasper などの研究へと続きます。研究者によってその分類は異なりますが、ここでは提唱者であるTaroneの分類にしたがってまとめます。)
コミュニケーション・ストラテジーの分類
Tarone(1981: 286-287)はCSを「Paraphrase(言い換え)」「Borrowing(借用)」「Appeal for Assistance(援助要請)」「Mime(身振り)」「Avoidance(回避)」の5つに分類しました。
Paraphrase(言い換え) | ⅰ Approximation(近似的表現) | 学習者が正しい表現ではないことを知りつつ、似ている意味を持つ語を使用する。 |
---|---|---|
ⅱ Word Coinage(造語) | 学習者が意味を伝えるために新しい言葉を作り出す。 | |
ⅲ Circumlocution(遠回しな表現) | 伝えたいことの特徴や要素を説明する。 | |
Borrowing(借用) | ⅰ Literal translation(直訳) | 母語の言い方を翻訳する。 |
ⅱ Language switch(言語切り替え) | 母語を使用する。 | |
Appeal for Assistance(援助要請) | 聞き手に正しい表現を尋ねる。 | |
Mime(身振り) | 言語情報の代わりに身振り手振りを使用する。 | |
Avoidance(回避) | ⅰ Topic avoidance(話題転換) | 意味が分からないことについて話さないようにする。 |
ⅱ Message abandonment(メッセージの放棄) | 話し続けることができずに発話の途中でやめる。 |
参考文献
Tarone, E. (1981) Some Thoughts on the Notion of Communication Strategy. TESOL Quarterly, No.15. pp.285-295.
コメント