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潜在的カリキュラムとは?

潜在的カリキュラム(hidden curriculum)

 潜在的カリキュラム(hidden curriculum)とは、「学校生活のなかで子どもたちが潜在的に学びとっている価値、態度、および社会規範など、主として実際行動面での知識内容」(平沢 2014: 57)のことです。ヒドゥン・カリキュラム、隠れたカリキュラムとも呼ばれます。学校では、教師によって意図的・明示的に与えられる教育課程である顕在的カリキュラム以外にも、学校での人間関係、学校や教室の雰囲気、教師の言動などの潜在的カリキュラムが子どもたちの人間形成に強く影響を与えています。顕在的カリキュラムは学ぶことになっている教育内容であるのに対し、潜在的カリキュラムは子どもたちは知らず知らずのうちに学びとっている教育内容です。例えば、授業の始まりの出席確認のときに名前を呼ばれたら挙手して「はい」と言う、授業では挙手して指名されたら発言できる、その日の授業の終わりには教室を掃除する、先生に会ったら挨拶をするなど、毎日繰り返される学校生活の中で、その集団の一員として望ましい態度を学びとっています。

 潜在的カリキュラムは1968年に教育学者のフィリップ・ジャクソン(Jackson,P. W.)によってはじめて提唱されました。ジャクソンは子どもたちの学校生活を観察した結果、規則(Rules)、規制(Regulations)、慣例(Routines)の3つのRが潜在的カリキュラムを構成しているとしました。これは3R’S(スリー・アールズ)と呼ばれます。

規則
(Rules)
何らかの行動をとる際の決まり。
規制
(Regulations)
教師から子どもに与えられる「~すべき」「~しろ」「~するな」などの指示。
慣例
(Routines)
慣習になっているやり方。

 潜在的カリキュラムは子どもたちに将来の社会生活で必要なことを獲得させる一方、子どもの創造する力や権力に抵抗する力を奪う機能もあります(臼井ら 2012:179-180)。例えば、教師の言動が「男らしさ」や「女らしさ」といったジェンダーをめぐる考え方を無意識に発信してしまうことによって、子ども自身が描く将来像を不自由にしたり、ジェンダーに基づく特定の役割を強要する可能性があります。

参考文献

 臼井嘉一・金井 香里(2012)『学生と教師のための現代教育課程論とカリキュラム研究』164-181頁.成文堂
 佐藤学(1996)『教育方法学』121-127,195頁.岩波書店
 平沢茂(2014)『改訂版 教育の方法と技術』57-60頁.図書文化社




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