6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題5解説

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令和元年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題5解説

問1 技能シラバス

 技能シラバスはスキルシラバスとも言って、言語の四技能(読む、書く、話す、聞く)の中から学習者に必要な技能に焦点を当てて構成されたシラバスのことです。例えば学習者がこれから日本に短期旅行に行くから、せめて看板とかメニューとかは読めるようになりたいというニーズを持っていたとします。そしたら教師は「読む」という技能に焦点を当てて、「お店の看板」「飲食店のメニュー」などを扱う授業計画を練り上げます。
 このように特定の技能に焦点を当てたシラバスを探しましょう。

 1 「書く」に焦点を当てている、これが技能シラバス
 2 特定の場面に焦点を当てた場面シラバス
 3 言語の機能に焦点を当てた機能シラバス
 4 話題に焦点を当てた話題シラバス

 したがって答えは1です。

問2 時世の影響を受けにくい要素

 時間の経過とともに使いにくくなる教材というのがあるみたい。
 確かに言われてみると… 今では圧倒的に「スマホ」っていうことが多くなったせいで「携帯」「携帯電話」みたいな言い方は減ってます。でも教科書にはいまだに「スマホ」が採用されてなかったり。あとは、昔はアメリカの9.11の事件の話をすると学生も知ってる知ってる!って言ってくれてたんですが、最近の学生はその話題をしても共感できなくて歴史の話になっちゃったり。時代が変わると教案も変えないといけないんですね。

選択肢1

 ニュースの記事などならこの中で最も時世の影響を受けやすいです。特に政治・経済に関するトピックはたった1日でも変わり得ます。

選択肢2

 昔はお店の支払いは現金やカードだけだったのに、今ではQR決済とかも増えました。時間の経過で現金を払う場面が減って、代わりに「paypayで」などの言い方を教える必要が出てきています。選択肢1ほどではないですが、10年20年くらい経てば会話の場面も時世の影響を受けます。

選択肢3

 ら抜き言葉さ入れ言葉を代表として、何十年もかけて正用へと向かう文法の変化があります。この中では最も時世の影響を受けにくいです。

選択肢4

 毎年多くの新語、流行語が生まれたりしますので、この中では選択肢1に次いで2番目に時世の影響を受けやすいです。

 よって答えは3

問3 初級のモデル会話

 初級のモデル会話のイメージ。

 A:Bさん、こんにちは
 B:Aさん、こんにちは
 A:今日はいい天気ですね。
 B:そうですね。
 …

 初級のモデル会話は学習項目を用いた簡便な会話なので、母語話者にとって語用論的に適切かと言われたら不適切に感じることがあります。より自然にするためには学習項目以外の項目を使わなければいけませんが初級だからそれはできません。それでも文法的には適格だから許容されます。

選択肢1

 初級なので初級レベルを意識すべき。母語話者が使う表現は初級で扱いにくいものがあります。初級にあわせて加工しなければ。

選択肢2

 これが正しい。
 「◯◯が欲しいです」のような文型は「〇〇」の一部言い換えるだけで使えます。こういう言い換えでいろんなことを表現できる文型は初級で重宝されます。

選択肢3

 母語話者が使う表現は初級にそぐわないことが多いので、レベルが合わない部分や冗長な部分はレベルに合わせて加工すべきです。でなければモデル会話として機能しません。

選択肢4

 モデル会話における話の内容や展開は不自然であってはいけません。また、モデル会話では当該授業で扱う未習の言語形式を含むのが普通なので、既習文型だけで作成するわけではありません。

 したがって答えは2です。

問4 中級の聴解教材

選択肢1

 これは適当。教師が自分で教案を作るときって、語彙、例文、テーマは教師自身の趣味趣向がすごく影響してきます。私なんか例文作ってと言われたら、まずマラソンとか将棋とかしか思いつかなくて困ってます…。こういう偏りはよくない。できるだけ客観的に、広い範囲から語彙、テーマを選ぶようにしたほうがいい。

選択肢2

 適当。未習の語や表現を少し入れたりし、前後の文脈からその意味を推測させるような作りにすると聞き取りのスキルを高められます。

選択肢3

 適当です。長めの聴解教材だとしてもその論理構造がはっきりとしていれば、一部を聞くだけで他の部分も予測できたり、全体の組み立てが把握できたりします。聴解問題はそのように作るべきです。

選択肢4

 モダリティとは、簡単にいうと話し手の主観を表す表現のこと。たとえば「たぶん」「かもしれない」「はずだ」「だろう」などは主観的な判断が含まれている表現なのでモダリティ表現です。終助詞の「~ね」「~よ」「~な」などもそう。気持ちが含まれる表現は難しい。でも中級くらいから扱えるようにならないといけない。中級だからこそモダリティ表現は避けずに扱ったほうがいいです。この選択肢は間違い。

 答えは4です。

問5 真正性

 ここでいう生教材の真正性とは、その生教材の実際の使い方で教室でも使われているかどうかの度合いのことです。
 例えば、先生が実際にレストランで使われているメニューを持ち込んで、料理の名前に使われる表現を勉強させるような授業をしたとします。しかしメニューは実際何が食べたいのかを見るためのものです。この授業例はメニューの実際の使い方とは乖離しているので真正性が低いです。せっかくメニューを持ち込んだのなら、そのメニューを用いてレストランのロールプレイをさせるなどすると真正性を高められます。

選択肢1

 スーパーのちらしは現実場面では「今日何か安いものないかな」「値段いくらかな」「特売いつ?」みたいなことが気になって読むものです。ここでは文字種の使い分けに着目させてるので、実際の使い方とは別の使い方をしていて真正性は低いです。

選択肢2

 菓子類の食品表示は、カロリー、賞味期限、消費期限、アレルギー、栄養、注意などを見るためのものです。教室でもそれを確認させるのは生教材の真正性が保たれてます!

選択肢3

 駅のアナウンスは乗客に対する案内のためなので、それを聞いて敬語表現に着目させるってのは現実場面とリンクしてません。真正性が低いです。

選択肢4

 折り紙の本は紙の折り方を教えるためのものだから、手順を読ませてその表現や文型に着目させるのは真正性が低いです。

 したがって答えは2です。

 




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