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パラ言語とは?

パラ言語(paralanguage)

 パラ言語(paralanguage)とは、非言語メッセージの一種で、「一連の発話において、単語それ自身を除く、口頭によるすべての手がかりを含むもの」(V.P.リッチモンド・J.C. マクロスキー 2006: 103)のことです。簡単に言うと、人の発した音から言語的内容を取り去った残りの部分、すなわち話した内容ではなく話し方そのもののことを指します。

 声の大きさ、高さ、速さ、声色、リズム、テンポ、調音の制御などの声質、笑い声、泣き声、ため息、あくび、飲み込み、息の音、咳、しゃっくり、うめき、うなり、ささやき、くしゃみ、いびきの音、伸びをするときの音、フィラー、沈黙など…

 例えば、高い声は話し手が女性だと判断させるメッセージとなり、弱々しい声は健康状態が悪いのではないかというメッセージになります。声が大きければ自信が感じられ、鼻をすする音が混じれば泣いているのだと判断されることもあります。人間の発声にはその人の感情や健康状態、年齢、性別、地位、経済状況などの多くの情報が含まれていて、人は誰かの音声を聞くことでそれらの情報を瞬時に判断します。こうした情報を聞き手に提供する非言語メッセージはパラ言語、あるいは周辺言語、準言語、近言語と呼ばれ、多くの場合、言語メッセージに随伴して言語メッセージの認識に影響を与えます。音調学(vocalics)の研究対象です。

 沈黙は話さないことであり何も伝えないことのように思われますが、実際は状況によって話し手の感情や態度などの情報を提供できます。喧嘩中の沈黙、無視するための沈黙などがそうで、人間のコミュニケーションにおいて心理的距離を作り出すことができます。このような感情や態度を示す沈黙もパラ言語に含まれます。

参考文献

 マーク・L.ナップ(1979)『人間関係における非言語情報伝達』東海大学出版会,8-9頁
 V.P.リッチモンド・J.C. マクロスキー(2006)『非言語行動の心理学: 対人関係とコミュニケーション理解のために』103-123頁.北大路書房
 藤本忠明・東正訓(2004)『ワークショップ 人間関係の心理学』45,56頁.ナカニシヤ出版




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