言語学習ストラテジー(language learning strategies)
言語学習ストラテジー(language learning strategies)とは、「学習をより易しく、より早く、より楽しく、より自主的に、より効果的にし、かつ新しい状況に素早く対処するために学習者がとる具体的な行動」(※1: 9)のことで、積極的で自発的な自律学習ができる優れた言語学習者になるために欠かせない資質や方略を指します。学習者の自発性を引き出し、コミュニケーション能力を伸ばすためにも教師側からの言語学習ストラテジーの指導は重要です。単に学習ストラテジーと呼ばれることもあります。
従来の教育観では教師が一方的に学習項目を提供し、学習者はそれを進んで学ぶことが求められていました。言語学習は場合によっては何年も継続するものですが、言語学習で学ぶことはあまりにも多く、この教育観では何年学習を続けたとしても全てを指導しきれません。そこで教えられるのではなく学習者が自主的に学んでいく力を養うことに注目が集まり、現在では学習は学習者自身が自主的に行うものと考えられるようになりました。そうした力をつけるために言語学習ストラテジーが役立ちます。
言語学習ストラテジーは言語処理を要する直接ストラテジーと、目標言語には直接関係せずに言語学習を支える間接ストラテジーに分けられます。直接ストラテジーはさらに記憶ストラテジー、認知ストラテジー、補償ストラテジーに分けられ、間接ストラテジーはメタ認知ストラテジー、情意ストラテジー、社会的ストラテジーに分けられます。
(研究者によりその分類は異なりますが、ここではRebecca L. Oxford の分類を扱います。)
直接ストラテジー
記憶ストラテジー
知識の連鎖を作ったり、イメージや音を結び付けたり、繰り返し復習したり、身体動作を使うなどの記憶するために用いる記憶術。
認知ストラテジー
覚えた表現を使ったり、既知の要素を組み合わせて長い連鎖を作ったり、情報を分析、推論したり、またはより理解を深めるためにメモ、要約、線引き、色分けなどをして知識を操作、変換するストラテジー。
補償ストラテジー
目標言語を理解したり発話したりする時に、足りない知識を補うために行う(コミュニケーション・ストラテジーなどの)ストラテジー。
間接ストラテジー
メタ認知ストラテジー
自分の認知を自分でコントロールし、自ら学習の司令塔となって学習過程を調整したり、自分自身をモニターするなどして、学習者が自らの学習を管理するために用いるストラテジー。
情意ストラテジー
自分を勇気づけたり、音楽を聴いてリラックスしたりするなどして、学習者が自身の感情、態度、動機などの情意的側面をコントロールし、否定的な感情を克服するためのストラテジー。
社会的ストラテジー
学習に他者が関わることによって学習を促進させるストラテジー。質問したり、協力したり、それらを通して他の人々の感情や文化を理解しようとすることが挙げられます。
参考文献
※1
レベッカL.オックスフォード(著)・宍戸通庸(訳)・伴紀子(訳)(1994)『言語学習ストラテジー―外国語教師が知っておかなければならないこと』凡人社
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