6月8日(土)から音声学の短期講座がはじまります。

平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説

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平成30年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅰ 問題3A解説

(1)弁別機能と統語機能

 アクセントには2つの機能があると言われています。
 まず一つは、「橋」と「箸」に見られるように、アクセントが異なることで意味を弁別する機能。これはアクセントの弁別機能と言います。
 もう一つは「庭には二羽にわとりがいる」に見られるように、1語1語の切れ目を認識させる統語機能があります。

 よって答えは2です。

(2)超分節的特徴

 超分節的特徴とは、複数の音にまたがって付加されている音声的特徴のことです。例えば「かえる([kɑeɾɯ])」は、その音が実際発音されるとき、その音にアクセント、イントネーション、リズム、トーン、テンポ、ポーズ、声質などの要素(プロソディ)が付加されて発音されます。アクセントが付加されて「高低低」となれば「帰る」の意になり、「低高高」となれば「蛙」になります。また、語末に上昇調のイントネーションを加えると「かえる⤴」と疑問調になったり、ポーズを入れて「か え る」と話せば子どもに向けた話し方になったりします。

選択肢1

 音声の周波数がどうなってるか分析して視覚化したスペクトログラムには周波数が帯のような形で現れます。それをフォルマントと言います。これは超分節的特徴の例ではありません。

選択肢2

 話すときの声の上がり下がりのこと。抑揚とも言います。超分節的特徴の一つです。

選択肢3

 強勢や音節、モーラなどが時間的に等間隔で繰り返されることによって生じる律動のことです。日本語はモーラ(拍)リズムをとる言語。超分節的特徴の一つです。

選択肢4

 発話中に出現する、実際には発話されない一呼吸置かれた時間のこと。分かりやすく伝えたり、相手に考えさせる時間を与えたりする機能を持ちます。超分節的特徴の一つです。

 よって答えは1です。

(3)強弱アクセント

 言語のアクセントは高低アクセントと強弱アクセントに大別されます。
 高低アクセント(ピッチアクセント)は音の相対的な高低で定められたアクセントのことで、日本語がこれです。「橋(はし)」は「は」が低くて「し」が高いように、この高低で意味が弁別されます。ちなみに中国語は高低アクセントの中の声調アクセント言語。高低ではなく4種類の声調で意味を弁別します。

 強弱アクセント(あるいは強勢アクセント、ストレスアクセント)は音の相対的な強弱で定められたものです。英語は高低ではなく、語の一部を強調するかしないかで意味が弁別されます。

 各言語の分類を見てみましょう。

 1 タイ語 高低アクセント
 2 中国語 高低アクセント(声調アクセント)
 3 ベトナム語 高低アクセント
 4 ポルトガル語 強弱アクセント

 したがって答えは4です。

(4)標準語のアクセント

選択肢1

 ざっと思い浮かんだ漢語名詞のアクセントを見てみると、「掃除が(うじ)」のように語末から3拍目の「そ」にアクセント核があるものもありますが、「説明(つめい)」「建設(んせつ)」「開花(いか)」など平板式もかなり多いです。この選択肢は間違い。

選択肢2

 正しいです!
 これについてはある程度規則性はあるものの複雑なので省略します。以下のページを参考にしてください。
 「東外大言語モジュール|日本語|発音|実践編| 2 円滑なコミュニケーションのために 2.7.1 アクセント(複合名詞)

選択肢3

 「蚊が()」は平板型ですが、「絵が()」は頭高型です。1拍名詞のアクセントは2種類あります。この選択肢は間違い。

選択肢4

 名詞なら助詞「が」を付けてアクセント型を見るので平板、頭高、中高、尾高の4種類ありますが、動詞は助詞「が」を付けられません。そのままの形でアクセント型を見てみると、3拍動詞なら平板型(かぶ)、中高型()、頭高型(える)の3種類あります。この選択肢は間違い。

 答えは2です。

(5)日本語の方言

 地域方言の問題は知識がないので難しい…

選択肢1

 ???
 あるらしいけど例は分かりません。

選択肢2

 ???
 あるらしいけど例は分かりません。

選択肢3

 ???
 後回し。

選択肢4

 無アクセント言語は東北なら福島、関東なら茨城、九州なら宮崎に見られます。
 この選択肢が答え。

 答えは4です。

 




コメント

コメント一覧 (6件)

  • 2の3のリズムの図ですが、図ではスペイン語が強勢リズムに入っていますが、表では音節リズムに入っています。(他の箇所にも同じ図があったと記憶しています)。ご参考まで。

  • >石川さん
    スペイン語は音節リズムですので表に間違いはありませんが、画像に間違いがありました。
    既に修正しました。ありがとうございました。

    • >王さん
      「超分節的特徴」です! 修正いたしました。
      ご指摘ありがとうございました。

  • いつも大変お世話になっております!

    おそらく書き間違えだと思われますが、(3)での解説で、橋という単語のアクセントに誤りが見られます。
    ご参考までに。

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