アクセントの機能
アクセントには機能(存在意義)があります。一つは同音語の区別する機能、もう一つは語のまとまりを表す機能です。それぞれ弁別機能、統語機能と呼ばれています。
アクセントの弁別機能
(1) はし (箸)
(2) はし (橋)
(3) かえる (帰る)
(4) かえる (変える)
同じ表記でも異なるアクセントで読むと意味が変わることがあります。例えば、「はし」の「は」を高く、「し」を低く発音すると「箸」を表し、「は」を低く、「し」を高く発音すると「橋」を表します。アクセントの最も重要な機能は意味を区別することです。この機能は弁別機能と呼ばれます。他にも「神:紙」「赤:垢」「牡蠣:柿」など同音語を区別する例はたくさんあります。
アクセントの統語機能
(5) ひろいもの (拾い物)
(6) ひろいもの (広い物)
アクセントは弁別機能に加え、もう一つ重要な機能があります。それは語のまとまりを表す機能です。例えば、「ひろいもの」を「低高高高高」と発音したら「拾い物」になりますが、「低高低低高」と発音すれば「広い物」になります。音の頂点が1つしかない(5)は「ひろいもの」で一語であることを表し、音の頂点が2か所ある(6)は「ひろい」と「もの」に分かれていることを表します。このようにアクセントは語と語の境界線を示す役割を担っており、これをアクセントの統語機能と呼んでいます。
(7) ここで はきものを ぬいでください
(8) ここでは きものを ぬいでください
(9) にほんらんきんぐ いちいに なった
(10) にほん らんきんぐ いちいに なった
他にも例を挙げると… 「ここではきものをぬいでください」はアクセントによって異なる解釈が可能です。(7)のように読めば「ここで履き物を脱いでください」となり、(8)のように読めば「ここでは着物を脱いでください」となります。また、「にほんらんきんぐいちいになった」もアクセントによって異なる解釈が可能です。(9)のアクセントで読むと日本国内のランキングで1位になったことを意味し、(10)のアクセントで読むと世界で日本が1位になったことを意味します。日本語においてはアクセントを表記することができないので、表記だけではどちらの意味かは分かりません。しかし、口頭で伝えられるときはアクセントによって意味が一つに定まります。
参考文献
森山卓郎,渋谷勝己(2020)『明解日本語学辞典』2-4頁.三省堂
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