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逆受動態とは?

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逆受動態(antipassive voice)

 (1)a 彼女が を ビンタした。  (能動態:他動詞構文)
    b が 彼女に ビンタされた。 (受動態:自動詞構文)
 (2)a She slapped him.       (能動態:他動詞構文)
    b He was slapped by her.    (受動態:自動詞構文)

 (動作主)と(被動者)をもつ他動詞能動文を受動態に換えると自動詞構文になり、その際、他動詞能動文におけるPが自動詞構文のに、Aが斜格(S、A、P以外)になっています。例をあげると、例文(1a)の「(P)」は受動態(1b)でガ格が据えられてSとなり、(1a)の「彼女(A)」は受動態(1b)で斜格になっています。(2a)の him(P)は(2b)でSに、(2a)の She(A)は(2b)で by が据えられた周辺付加詞)の扱いになっています。このように、P(被動者)を主格で示して主語に、A(動作主)を斜格で示すような意味役割と統語関係を受動態(passive voice)と言います。

 (3) Waguda-ŋgu gudaga-Φ wawaː-l     (能動態:他動詞構文)
     男-格標識  犬-格標識 見る-過去
     (男が 犬を 見た。)
 (4) Waguda-Φ gudaga-nda wawaː-di-ɲu   (逆受動態:自動詞構文)
     男-格標識  犬-格標識  見る-逆受動-過去
     (男に 犬が 見られた。)

 しかしジルバル語では、他動詞能動文のPは(1)(2)と同じように受動態でSにはならず、Aは斜格になりません(斎藤ら 2015: 18)。具体的に見ると、(3)のP(gudaga:犬)は(4)で斜格 -nda が与えられ、(3)のA(Waguda:男)は(4)でゼロ格をとるSになっています。(ジルバル語ではAを -ŋgu で表し、PとSはゼロ格で標示されるので能格型。)このように、他動詞構文の無標の態(能動態)のPがSになる受動態に対して、AがSになるような態を逆受動態(antipassive voice)と言います。

受動態と逆受動態の違いを視覚的に

 日本語や英語のような対格言語の受動文は、おおむね他動詞能動文の主格名詞(A)が降格(demotion)して斜格で現れるか、もしくは全く表現されなくなり、一方で対格名詞(P)は昇格(promotion)して主格名詞として現れる傾向があります。上図でいうと、能動文の主格名詞「彼女(A)」は受動文で斜格であるニ格で据えられて降格していますが、能動文の対格名詞「彼(P)」は受動文でガ格が据えられて主格に昇格しています。このように能動文のPをSして焦点を当てる態が受動態です。

 受動態に対し、上述したジルバル語のような能格言語の受動文は、おおむね他動詞能動文の絶対格名詞(P)が降格して斜格で現れるか、もしくは全く表現されなくなり、一方で能格名詞(A)が昇格して絶対格名詞として現れる傾向があります。能動文の絶対格名詞 gudaga(P)は受動文で斜格に降格していますが、能動文の能格名詞 Waguda(A)は受動文で絶対格に昇格しています。このように能動文のAをSにして焦点を当てる態逆受動態です。

参考文献

 亀井孝(著)・河野六郎(著)・千野栄一(著)(1996)『言語学大辞典 第6巻』281-282頁.三省堂
 斎藤純男・田口善久・西村義樹編(2015)『明解言語学辞典』17-18,178頁.三省堂
 バーナード・コムリー(著)・松本克己(訳)・山本秀樹(訳)(2001)『言語普遍性と言語類型論: 統語論と形態論』119-125頁.ひつじ書房




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