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平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題4解説

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平成23年度 日本語教育能力検定試験 試験Ⅲ 問題4解説

問1 前提

 「前提」というのは語用論の用語なんですが、ここでは親切にも文章中に定義が書かれています。それによると、「当該発話がその文脈において適切となるための必須条件であり、発話の中で話し手・聞き手双方が共通に了解していること」だそうです。この定義を用いて各選択肢を見てみましょう。

選択肢1

 「新宿駅はどこですか?」という発話は新宿駅がどこにあるかを聞いています。それを受けて「たぶんこの道をまっすぐでよかったと思いますけど…」と答えました。この発話は新宿駅までの道順を説明したものです。話し手と聞き手の間にある前提に依存して解釈されているわけではなく、話していることばの意味(字義的な意味)だけで解釈できます。この選択肢は間違い。

選択肢2

 「営業会議3時からだっけ?」で営業会議が3時であるかどうか聞き、それに対して「ううん、4時から」と営業会議が4時開始であることを述べています。この文も前提に依存せず、話していることばの意味(字義的な意味)だけで解釈できます。この選択肢は間違い。

選択肢3

 「留学生ですか」で留学生かどうかを聞き、「そうです」で留学生であることを肯定しています。これも話していることばの意味(字義的な意味)だけで解釈可能なので前提に依存していません。この選択肢は間違い。

選択肢4

 「関西のご出身ですか」という発話は出身が関西かどうかを聞いていますが、答えは関西かどうかではなく「大阪です」と答えています。もしこの発話を日本人以外の人が聞いたら、「大阪です」と答えた人は「いいえ、関西の出身ではなく、大阪の出身です」と言っているのだろうと考えてしまうかもしれません。しかし我々日本人は「大阪は関西に含まれる」ということを知っているので、「出身地は関西のうちの大阪である」と解釈します。この解釈は「大阪は関西に含まれる」という前提があってなされるものです。これが答え。

 答えは4です。

問2 焦点

 「焦点」も親切に文章中に定義が書かれています。「話し手が発話することによって聞き手の関心を引こうと意図している『当該文の中の特定の構成要素』」だそうです。問2には、焦点は文法的に明示できると書かれています。その例として不適当なものは…

選択肢1

 元々の文は「外国に行きたかったから日本語教師になった」です。このうち「外国語に行きたかった」という理由をより強調するため分裂文にしたのが選択肢1。これによって後件「外国に行きたかったから」に焦点が当たり、強調されています。この選択肢は適当。

選択肢2

 「わけではありません」を使っているからか、理由「外国に行きたくて」に焦点が当てられています。この選択肢は適当。

選択肢3

 理由「外国に行きたくて」に焦点は当てられていません。ごく普通の文に見えます。もし理由「外国に行きたくて」に焦点を当てたいなら「外国に行きたくて、3年間働いた後で日本語教師になりました」みたいに語順を変えたりすればいいのでは。

選択肢4

 文頭に「外国に行きたかった」という理由を持ってくることで文法的に焦点を当てて強調しています。 この選択肢は適当。

 答えは3です。

問3 新情報と旧情報

 新情報と旧情報と言えば、「は」と「が」の違いが思い浮かびます。「昔、◯◯という友達いたんだけど、彼とても面白い人だったよ。」のように、まず友達の存在を新情報として提示するのが「が」です。それまでの話の流れで一度も現れなかった要素をこれで取り上げます。「が」によって友達の存在を提示したので、友達は既に旧情報になりました。なので後件では「彼は」となっています。つまり新情報は「が」、旧情報は「は」で表す性質があります。

 よって答えは2です。

問4 文化による前提の違い

 日本人にとって、遠足に水筒を持って行くということは、飲み水として持って行くんだという共通認識(前提)があります。しかし、外国人児童の親にはそのような前提がなかったために、水筒だけを持っていってしまいました。これと類似しているエピソードは選択肢3です。「授業態度を重視する」と言われたら、日本人は真面目に先生の話を聞くことだと思います。しかし、外国人教師の文化では「自発的な発話があること」でした。この前提の違いによって評価を落しています。

 よって答えは3です。




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