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構造シラバスにもとづく受身の教案雛型(受身文の文型一覧)

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構造シラバスにもとづく受身の教案雛型(受身文の文型一覧)

 構造シラバスに基づいて日本語の受身を教えるとき、能動文との文型の対応関係や導入する動詞選択などいろいろ注意しなくちゃいけないことがあります。このあたりが結構複雑なので、ここに受身の文型を(知ってる限り)網羅して、各文型ごとの大枠とポイントをまとめておきます。教案を作る際にご活用ください。ちなみにみんなの日本語*では をやります。

① 受身形の導入

 受身文を作るには動詞の受身形が必須なので、動詞を辞書形から受身形にする練習をまずします。

動詞の受身形
五段動詞
(Group I berbs)
動詞語幹 – areru 書かれる
kak – areru
一段動詞
(Group II verbs)
動詞語幹 – rareru 食べられる
tabe – rareru
サ変動詞
(する)
sareru される
sareru
カ変動詞
(来る)
korareru 来られる
korareru

 受身形を導入するときはいくつかの動詞を用意して、辞書形から受身形に変換する練習をさせることになります。その時に用意する動詞は、のどの文型をその後に教えるかによります。例えば を教える場合は「殴る」「叱る」「汚す」「褒める」「慰める」などが適しています。どの文型にどんな動詞が適しているかは、各文型説明のところに例文があるのでそこを参考にしてください。

②〔AがBを〕型動詞の直接受身文*

 受身の授業で一番はじめに扱うのがこのタイプの受身(直接受身)です。

能動文 受身文
Aが Bを ~する
(彼が 私を 殴る)
Bが Aに ~される
Bが Aから ~される
Bが Aによって ~される
(私が 彼に/から/によって 殴られる)

 〔AがBを〕型をとる動詞の能動文、たとえば「AがBを殴る」「AがBを叱る」「AがBを褒める」などは、動詞を受身形にしてB視点にすることで「BがAに動詞受身形」の形にすることができます。これは最も典型的で、AとBを逆にして格助詞を変えるだけの比較的単純な操作で作れる受身です。この文型の受身文を教えるには、選ぶ動詞は〔AがBを〕型をとる動詞(他動詞)じゃないといけません。

 (1) 彼が 私を 殴った。     ↔ 私が 彼に 殴られた。
 (2) 先生が 生徒を 叱った。   ↔ 生徒が 先生に 叱られた。
 (3) 佐藤さんが 壁を 汚した。  ↔ 壁が 佐藤さんに 汚された。
 (4) お母さんが 息子を 褒めた。 ↔ 息子が お母さんに 褒められた。
 (5) 先輩が 私を 慰めた。    ↔ 私が 先輩に 慰められた。
 (6) お父さんが 娘を 助けた。  ↔ 娘が お父さんに 助けられた。

ポイント

 ◆受身文の「に」は、場合によっては「から」「によって」に言い換えられます。上の例文は全部「から」「によって」に言い換えられるのを載せておきました。でも基本は全部「に」を使えば事足りるから「に」がメイン。「から」と「によって」は理解できればよくて、たくさん練習させる必要はないです。なんなら教えない選択肢もあり。

 ◆「から」を教える場合は、「から」が使いにくい動詞があることに注意してください。例えば「食べる」「癒す」などの動詞で作った例文(7)(8)は「から」に置き換えると変になっちゃいます。〔AがBを〕型の動詞であっても「から」に置き換えると変になる動詞は教案に入れるときに確認したほうがいい。

 (7) 猫が 私を 癒した。     ↔ *私が 猫から 癒された。
 (8) 私が ご飯を 食べた。    ↔ *ご飯が 私から 食べられた。

 ◆なお、「によって」を使うとちょっと文章が硬くなります。話し言葉ではあんまり現れないので教える優先度は低いです。(生産系の動詞を用いた「によって」受身文は で別に触れます。)

 ◆移動を表す動詞にも一部「彼が 橋を 渡る」「彼が 交差点を 曲がる」のように〔AがBを〕型をとるものがあります。これらは「箸が 彼に 渡られた」や「交差点が 彼に 曲がられた」のように受身文にすると変になります。これらの動詞は提示しないように。

③〔AがBをCに〕型動詞の直接受身文

 「誘う」などの〔AがBをCに〕型をとる動詞は〔BがAにCに~される〕という直接受身文にできます。このタイプの受身文は と一緒に教えても大きな問題になりません。なぜなら〔AがBを〕型と〔AがBをCに〕型はどっちもAとBを逆にして格助詞を変えればいいだけだからです。でも一応、ここでは と区別してまとめておきました。

能動文 受身文
Aが Bを Cに ~する
(彼が 私を 映画に 誘う)
Bが Aに Cに ~される
(私が 彼に 映画に 誘われる)

 (9) 彼が 私を 映画に 誘った。      ↔ 私が 彼に 映画に 誘われた。
 (10) 部長が みんなを 自宅に 招待した。  ↔ みんなが 部長に 自宅に 招待された。
 (11) 先生が 彼女を 生徒会長に 推薦した。 ↔ 彼女が 先生に 生徒会長に 推薦された。
 (12) お母さんが 子供を 保育園に 送った。 ↔ 子供が お母さんに 保育園に 送られた。

④〔AがBに〕型動詞の直接受身文

 〔AがBに〕型をとる動詞の能動文も受身文にできて、そうして作った受身文は と同じ文型になります。だから が終わった後にこれを教えると学習者にとっては分かりやすいと思います。

能動文 受身文
Aが Bに ~する
(犬が 彼に 噛みつく)
Bが Aに ~される
Bが Aから ~される
Bが Aによって ~される
(彼が 犬に/から/によって 噛みつかれる)

 〔AがBに〕型をとる動詞で授業で使えそうな動詞はあんまり多くないです。「噛みつく」「話しかける」「反対する」などの動詞はイラストにもしやすいと思うのでそのあたりの動詞がメインで使えそう。

 (13) 犬が 私に 噛みついた。      ↔ 私が 犬に 噛みつかれた。
 (14) 子供が 親に 逆らった。      ↔ 親が 子供に 逆らわれた。
 (15) 彼が 前の人に 追いついた。    ↔ 前の人が 彼に 追いつかれた。
 (16) 彼女が 私に 甘えた。       ↔ 私が 彼女に 甘えられた。
 (17) 知らない人が 私に 話しかけた。  ↔ 私が 知らない人に 話しかけられた。
 (18) みんなが 結婚に 反対した。    ↔ 結婚が みんなに 反対された。

ポイント

 ◆ と同じく、受身文には「に」「から」「によって」の3種類が使えます。「に」が最も普通なのでこれをメインで教えれば大丈夫。「から」と「によっては使えるようになる必要はあまりなくて、意味が分かれば十分です。混乱を避けるために「から」と「によって」に触れない作戦もあり。「によって」は文章が硬くなります。

 ◆それから、〔AがBを〕型の動詞(殴る…)も 〔AがBに〕型の動詞(噛みつく…)も同じ文型の受身文になるので一緒に教えちゃおう! というのはできなくないですけど気を付けることがあります。 を勉強した人は「BがAに殴られる」は「AがBを殴る」と言い換えることができることを知っているので、この規則を利用して、「BがAに噛みつかれる」を「*AがB噛みつく」と言ってしまうことがあります。〔AがBを〕型の動詞と〔AがBに〕型の動詞を混ぜて教えるとき、能動文から受身文を作るなら特に問題はないですが、受身文から能動文を作るときは「を」なのか「に」なのか混乱させてしまいます。

⑤〔AがBにCを〕型動詞の直接受身文*

 与え手(A)が受け手(B)に物など(C)を与えるような人から人への物の移動を表す動詞は能動文で〔AがBにCを〕型をとります。これを受身文にすると、受け手(B)が「が」、与え手(A)が「に」で表されて、与える物(C)はそのまま「を」で変わりません。「を」の存在を無視すれば と同じ受身文の文型だから、もしこのタイプの受身文を教えるなら の後に教えたほうがいいと思います。

能動文 受身文
Aが Bに Cを ~する
(部長が みんなに お菓子を 渡す)
Bが Aに Cを ~される
(みんなが 部長に お菓子を 渡される)

 (19) 部長が みんなに お菓子を 渡した。 ↔ みんなが 部長に お菓子を 渡された。
 (18) 親が 私に 買い物を 頼んだ。    ↔ 私が 親に 買い物を 頼まれた。
 (20) 学生が 先生に 花を 送った。    ↔ 先生が 学生に 花を 送られた。
 (22) 山本さんが 彼に ボールを 投げた。 ↔ 彼が 山本さんに ボールを 投げられた。
 (23) 留学生が 私に 英語を 教えた。   ↔ 私が 留学生に 英語を 教えられた。

ポイント

 ◆〔AがBにCを〕型の動詞だったらなんでも受身にできるっていうわけじゃないです。例えば「運ぶ」は〔AがBにCを〕型の動詞ですが、受身文(24)にすると変になっちゃいます。「運ぶ」は物の移動を表す動詞ですが、人から人への物の移動を表しているのではなく、人ががどこかに物を移動させることを表します。つまりAが動作主、Bが物の到着点、Cが物です。このタイプの受身文にできるのはAが与え手、Bが受け手、Cが物の〔AがBにCを〕型の動詞だから、「運ぶ」のような動詞には注意してください。

 (24) 私が 部屋に 荷物を 運んだ。 ↔ *部屋が 私に 荷物を 運ばれた。

 ◆それから、「送る」は「あげる」に言い換えられますが、「あげる」の受身形「あげられる」は存在しません。受身形「教えられる」は「教わる」に言い換えられますが、「教わる」は辞書形であって受身形ではありません。こんなふうに一部変なところがあります。

⑥「で」が現れる珍しい直接受身文

 動作主が受身文で「で」で表される、結構珍しいけど一応存在するタイプの受身文です。レベルが高い読解問題になると部分的に出てくる可能性があります。教える優先度は一番低いので気にしなくてもいいです。

能動文 受身文
Aが Bを ~する
(紅葉が 山を 覆う)
Bが Aで ~される
Bが Aに ~される
(山が 紅葉で 覆われる)

 この受身文の特徴は、「で」で表される動作主が典型的な動作主っぽくなく無意志的です。それから、この受身になれる動詞は「覆う」「埋め尽くす」「満たす」など、何かが表面や空間を全体的に占めることを表す動詞がきやすいようです。ちなみに、「で」の代わりに「に」でも大丈夫。「から」はダメ、「によって」は不自然。

 (25) 紅葉が 山を 覆っている。   ↔ 山が 紅葉で 覆われている。
 (26) 虫が 街を 埋め尽くしている。 ↔ 街が 虫で 埋め尽くされている。
 (27) 愛情が 心を 満たした。    ↔ 心が 愛情で 満たされた。
 (28) クラゲが 海を 埋め尽くした。 ↔ 海が クラゲで 埋め尽くされた。

⑦ 生産を表す動詞を用いた「によって」受身文*

 〔AがBを〕型の動詞が何かを作ったり発見したりすることを表す生産系の動詞(作る、建てる…)だった場合、それで受身文を作ると動作主は「によって」で表されます。このタイプの受身文は硬めの文章で使われるので、話し言葉ではほとんど現れないです。だから意味を理解しておくことが重要で、使えるようになることは二の次。

能動文 受身文
Aが Bを ~する
(職人が このお皿を 作る)
Bが Aによって ~される
(このお皿が 職人によって 作られる)

 典型的な受身文は被害を受けたことを表すんですが、このタイプの受身文はとても被害を表しにくいです。ただ、誰かが何かを作ったという客観的な事実を述べるときに使います。次の例文の「によって」は「に」や「から」に置き換えられません。

 (29) 職人が このお皿を 作った。    ↔ このお皿が 職人によって 作られた。
 (30) 画家が この絵を 描いた。     ↔ この絵が 画家によって 描かれた。
 (31) 足利義満が 金閣寺を 建てた。   ↔ 金閣寺が 足利義満によって 建てられた。
 (32) 警察が 犯人を 見つけた。     ↔ 犯人が 警察によって 見つけられた。
 (33) 大学が 新種の虫を 発見した。   ↔ 新種の虫が 大学によって 発見された。
 (34) ライト兄弟が 飛行機を 発明した。 ↔ 飛行機が ライト兄弟によって 発明された。
 (35) 商店街の人々が 祭りを 行った。  ↔ 祭りが 商店街の人々によって 行われた。

ポイント

 ◆生産を表してないけど、「行う」もこのタイプの受身文に使えます。

 ◆「によって」が使われる受身文は大きく分けて2種類あります。一つは生産系の動詞を使った受身文で、まさにここに書かれているものたち。もう一つは生産系以外の動詞を使った受身文で、それは にまとめています。この2つの受身文の違いは、前者は必ず生産系の動詞を用いてその動作主を「によって」で表しますが、後者は生産とは関係なく、「に」「から」「によって」のいずれでも大丈夫です。

 ◆「によって」は手段の意味もあって、その意味のときは能動文を作ると(36)のように変になります。このタイプの受身文「Bが Aによって ~される」を作るには、Bは生産物、Aは生産者でないといけません。でも(36)はBが生産者ではなく手段です。このような例文には注意。

 (36) *PCR検査が 診断を 行った。 ↔ 診断が PCR検査によって 行われた。

⑧〔AがBを〕型動詞の間接受身文

 〔AがBを〕型の能動文が表す事態が、その事態とは関係ない別の人に間接的に影響を与えることを表す場合、その別の人を「が」、Aを「に」、Bを「を」で表して間接受身文にすることができます。

能動文 受身文
Aが Bを ~する
(母が カーテンを 開ける)
Zが Aに Bを ~する
(私が 母に カーテンを 開けられる)

 このタイプの受身文にできる動詞はかなり多いです。でも実際使う場面はと言われるとあまり多くなくて、授業で教える必要性はそんなに高くありません。

 (37) 母が カーテンを 開けた。   ↔ 私が 母に カーテンを 開けられた。
 (38) 木村さんが データを 消した。 ↔ 私が 木村さんに データを 消された。
 (39) 警備員が ドアを 閉めた。   ↔ 私が 警備員に ドアを 閉められた。
 (40) 電力会社が 電気を 止めた。  ↔ 私が 電力会社に 電気を 止められた。
 (41) 父が 鍵を かけた。      ↔ 私が 父に 鍵を かけられた。

ポイント

 ◆「母が カーテンを 開けた」を「カーテンが 母に 開けられた」とすると、これは の直接受身文です。でも「私が 母に カーテンを 開けられた」とすると、ここに書いている間接受身文になります。間接受身は能動文にいない存在を主語にします。

⑨〔AがBをCに〕型動詞の間接受身文

 このタイプの受身文を使うことは本当にないと言ってもいいくらい。もはや教えなくてもいいレベル。

能動文 受身文
Aが Bを Cに ~する
(竹内君が あいつを 映画に 誘う)
Zが Aに Bを Cに ~される
(私が 竹内君に あいつを 映画に 誘われる)

 (42) 竹内君が あいつを 映画に 誘った。   ↔ 私が 竹内君に あいつを 映画に 誘われた。
 (43) 部長が みんなを 出張に 連れていった。 ↔ 私が 部長に みんなを 出張に 連れていかれた。
 (44) 先生が 彼女を 生徒会長に 推薦した。  ↔ 私が 先生に 彼女を 生徒会長に 推薦された。
 (45) 妻が 子供を 保育園に 送った。     ↔ 私が 妻に 子供を 保育園に 送られた。

ポイント

 ◆例文を見てもらったら分かると思いますが、結構分かりにくくなってます。構文が複雑なので教えにくいし、このような文を使う場面はほとんどありません。例えば、竹内君があいつを映画に誘ったことに不満があって、それで自分が被害を受けたことを描写する場合には(42)の受身文のような言い方ができますが、他の言い方がないわけではありません。実際には「竹内君があいつを映画に誘ったのが腹立つ」とか、「竹内君はどうしてあいつを映画に誘ったの」などと言えば似たような意味を表すことができます。この構文を学習者に導入して使わせる必要はありません。別の言い方で表現できるようになることのほうが運用面で重要です。

⑩〔AがBに〕型動詞の間接受身文

 このタイプの受身文もほとんど現れない。教えなくても大丈夫。

能動文 受身文
Aが Bに ~する
(知らない人が 息子に 話しかける)
Zが Aに Bに ~する
(私が 知らない人に 息子に 話しかけられる)

 (46) 知らない人が 息子に 話しかけた。 ↔ 私が 知らない人に 息子に 話しかけられた。
 (47) 犬が 娘に 噛みついた。      ↔ 私が 犬に 娘に 噛みつかれた。
 (48) 彼が 前の人に 追いついた。    ↔ 私が 彼に 前の人に 追いつかれた。
 (49) 猫が 彼女に 甘えた。       ↔ 私が 猫に 彼女に 甘えられた。
 (50) 両親が 結婚に 反対した。     ↔ 私が 両親に 結婚に 反対された。

⑪〔AがBにCを〕型動詞の間接受身文

 このタイプの受身文もほとんど現れない。教えなくてもあまり影響しません。

能動文 受身文
Aが Bに Cを ~する
(部長が みんなに お菓子を 渡す)
Zが Aに Bに Cを ~される
(みんなが 部長に お菓子を 渡される)

 (50) 台風が 屋根に 穴を 開けた。    ↔ 私が 台風に 屋根に 穴を 開けられた。
 (51) 部長が みんなに お菓子を 渡した。 ↔ 私が 部長に みんなに お菓子を 渡された。
 (52) 鈴木さんが 先生に 花を 送った。  ↔ 私が 鈴木さんに 先生に 花を 送られた。
 (53) 留学生が 彼に 英語を 教えた。   ↔ 私が 留学生に 彼に 英語を 教えられた。

⑫〔Aが〕型動詞の間接受身文(自動詞の受身)

 日本語には自動詞を受身文にできる文法規則があります。自動詞文が表す事態が誰かに影響を与えるとき、自動詞を受身形にして、影響を受けた人を「が」、自動詞が表す動作の主体を「に」でとると自動詞の受身文になります。自動詞の受身文は存在こそしますが、直接受身に比べるとそこまで使用頻度はないので教えなくてもいい部類です。

能動文 受身文
Aが ~する
(隣人が 騒ぐ)
Zが Aに ~される
(私が 隣人に 騒がれる)

 (54) 隣人が 騒いだ。   ↔ 私が 隣人に 騒がれた。
 (55) 雨が 降った。    ↔ 私が 雨に 降られた。
 (56) 赤ちゃんが 泣いた。 ↔ 私が 赤ちゃんに 泣かれた。
 (57) 彼が 帰った。    ↔ 私が 彼に 帰られた。
 (58) 父が 死んだ。    ↔ 私が 父に 死なれた。

ポイント

 自動詞の受身といっても、全ての自動詞が受身形にできるわけではありません。例えば「ある」「できる」「(ドアが)あく」「落ちる」などは「あられる」「できられる」「あかれる」「落ちられる」みたいな受身形がありません。

⑬〔AがBのCを〕型動詞の間接受身文(持ち主の受身Ⅰ)*

 このタイプの受身文は通称、持ち主の受身所有の受身と呼ばれるものです。自分の所有物が被害を受けたことを述べるときに使います。みんなの日本語でも出てきます。
 持ち主の受身は2つの文型があります。一つは「踏む」「叩く」などの〔~が~を〕型動詞を用いた時、もう一つは「ふれる」「噛みつく」などの〔~が~に〕型動詞を用いた時です。前者はここ()で説明し、後者は で触れます。

能動文 受身文
Aが BのCを ~する
(男が 私の足を 踏む)
Bが Aに Cを ~される
(私が 男に 足を 踏まれる)

 (59) 男が 私の足を 踏んだ。    ↔ 私が 男に 足を 踏まれた。
 (60) 彼女が 私の秘密を 知った。  ↔ 私が 彼女に 秘密を 知られた。
 (61) 先生が 私の頭を 叩いた。   ↔ 私が 先生に 頭を 叩かれた。
 (62) 隣人が 私の庭を 汚した。   ↔ 私が 隣人に 庭を 汚された。
 (63) 強盗が お店のお金を 盗んだ。 ↔ お店が 強盗に お金を 盗まれた。
 (64) 彼女が 私の日記を 見た。   ↔ 私が 彼女に 日記を 見られた。
 (65) 母が 私の宝物を 捨てた。   ↔ 私が 母に 宝物を 捨てられた。
 (66) 痴漢が 私のお尻を さわった。 ↔ 私が 痴漢に お尻を さわられた。

ポイント

 ◆日本語母語話者にとっては、持ち主の受身で(67)のように言うことが多いと思いますが、これとは別に(68)の言い方もあります。

 (67) 私が 男に 足を 踏まれた。 (【能動文】男が 私の足を 踏んだ。) ※持ち主の受身
 (68) 私の足が 男に 踏まれた。 (【能動文】男が 私の足を 踏んだ。) ※ の直接受身文

 このようなとき、日本語教育では(68)は間違いで(67)が正しいですよと教えることがあります。しかし、(68)は使用頻度が低いだけで文法的な誤りを犯していないので誤用とは言い切れません。(68)の言い方はちょうど の直接受身文にあたります。この2つをどのように扱うかはおまかせ。

⑭〔AがBのCに〕型動詞の間接受身文(持ち主の受身Ⅱ)

 持ち主の受身の2つ目のパターン。「触れる(ふれる)」「噛みつく」などの〔~が~に〕型動詞を用いるとこの文型の受身文になります。このタイプの持ち主の受身を作れる動詞は限られているので、動詞をたくさん用意することが難しいです。そのせいかみんなの日本語でも教えません。

能動文 受身文
Aが BのCに ~する
(男が 私の胸に ふれる)
Bが Aに Cに ~される
(私が 男に 胸に ふれられる)

 (69) 男が 私の胸に ふれた。      ↔ 私が 男に 胸に ふれられた。
 (70) 犬が 私の腕に 噛みついた。    ↔ 私が 犬に 腕に 噛みつかれた。
 (71) 犯人が 私の子供に 襲いかかった。 ↔ 私が 犯人に 子供に 襲いかかられた。




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