ユニット形成のストラテジー
ユニット形成のストラテジーとは、「ある言語項目が前(または後)の語と1つのユニットとして分析しないで固まりのように処理されること」(迫田 2002: 116)のことです。迫田(2001)は日本語学習者の誤用を分析した結果、学習者独自の文法(中間言語の文法体系)を構成する言語処理の方略として付加のストラテジーとユニット形成のストラテジーという2つのストラテジーが見られたことを明らかにしました。
ユニット形成のストラテジーの例として、ソ系指示詞とア系指示詞、場所を表す「に」と「で」などに関する日本語学習者の誤用例を挙げています。
(1) 母語話者:結婚適齢期って何歳ぐらい?
学習者:もし大学へ入れない、あんな人は多分ちょっと早いと思います。
(2) 門の前に話をしました。
(3) 東京で住んでいます。 (迫田 2001: 17,30)
(1)のように日本語学習者の指示詞を含む発話には、「ソ系指示詞+抽象名詞(「こと」「感じ」など)」と「ア系指示詞+具体名詞(「人」「先生」など)」の形で現れる誤用が見られたそうです。これがそのままユニットを形成し、「こと」「感じ」などの抽象名詞が来る場合はソ系を選択し、「人」「先生」などの具体名詞が来る場合はア系を選択するような言語処理を行っていると分析しています。(2)(3)は場所を表す「に」と「で」に関するもので、学習者の誤用には「位置を示す名詞(中・前など)+に」と「地名や建物を示す名詞(東京・食堂など)+で」というユニットが見られました。これらのユニットは学習者が無意識に形成し、言語処理の際に使用されているストラテジーと考えられます。
(これらは学習者の母語の違いにかかわらず見られる傾向として挙げられています。)
参考文献
迫田久美子(2001)「第1章 学習者独自の文法」「第2章 学習者の文法処理方法」『日本語学習者の文法習得』3-43頁.大修館書店
迫田久美子(2002)『日本語教育に生かす第二言語習得研究』112-118頁.アルク
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