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付加のストラテジーとは?

付加のストラテジー

 付加のストラテジーとは、「ある語句の一部や表現を独立した単位とみなし、特定の文法機能を持たせて、必要と考える個所に付加する学習者の言語処理方法」(迫田 2002: 113)のことです。迫田(2001)は日本語学習者の誤用を分析した結果、学習者独自の文法(中間言語の文法体系)を構成する言語処理の方略として付加のストラテジーとユニット形成のストラテジーという2つのストラテジーが見られたことを明らかにしました。

 付加のストラテジーの例として次のような日本語学習者の発話を挙げています。

 (1) 先生、韓国のキムチ、食べる、できますか
 (2) ここ、名前、書きます、ください
 (3) 寂しいですじゃないです         (迫田 2001: 37-38)

 (1)(2)は「食べられる」「書いてください」に含まれる動詞可能形やテ形を既に学習した学習者が産出した発話です。学習したものの、それが実際に運用できるほどの習得には至っておらず、可能や依頼の意味を表すために「できます」「ください」といった言語形式を付加してその機能を果たそうとしています。また、(3)は「寂しくない」と言うべきところ、すでに知っている否定の形式「~じゃない」を「寂しいです」に付加しています。「じゃない」を分析できない一つのユニットとして捉え、これを否定の機能を表す独立した単位とみなし、否定したい場合には名詞、イ形容詞、ナ形容詞など品詞を問わずに用いていると考えられます。このような言語処理のストラテジーが付加のストラテジーです。

参考文献

 迫田久美子(2001)「第1章 学習者独自の文法」「第2章 学習者の文法処理方法」『日本語学習者の文法習得』3-43頁.大修館書店
 迫田久美子(2002)『日本語教育に生かす第二言語習得研究』112-118頁.アルク




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